じじぃの「歴史・思想_555_嘘の世界史・商売における嘘」

World's Oldest Complaint Letter (Ancient Sumeria) // 2nd Millennium BC // Ancient Primary Source

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gkoaHFMjYJg

世界最古の顧客クレーム (シュメル語のくさび文字)

ウル遺跡から発掘された粘土板から明らかになった4000年前のクレーム事件

2020年8月30日 大紀元 エポックタイムズ
英ロンドンにある大英博物館。そこに展示されている古バビロニア時代の粘土板が、世界最古のクレームであったことが判明しました。
紀元前1750年頃に書かれた粘土板のくさび形文字を解読したところ、質の悪い銅を売りつけられ返金に応じてもらえず、使者を送ったが門前払いを受けたことに激怒したバビロニアの銅商人・ナンニが、取引相手のエア・ナシル宛に出した苦情の手紙だったことがわかったのです。
https://www.epochtimes.jp/p/2020/08/61565.html

『とてつもない嘘の世界史』

トム・フィリップス/著、禰宜田亜希/訳 河出書房新社 2020年発行

第7章 商売における嘘 より

この章では、歴史上、人々が金儲けをするために、うまくいっているふりをして、少なくともかりそめにでもうまくやってのけた種々の方法を見ていく。
このことで、後知恵が大きな役割を果たすという事実は記しておく意義がある。ビジネスでは、「うまくいくまでは、うまくいっているふりをせよ」という心がまえは暗黙の了解事項であるばかりか、起業家として最重要の教訓としてつねに叩きこまれる。これには肝の据わった起業家がどれほど厚かましかったという武勇伝がともない、お気に入りのソーシャル・ネットワークはビジネスに特化したLinkedIn(リンクトイン)だというような人々の間で共有(シェア)される。たとえば、マイクロソフトはこのように始まった。ビル・ゲイツは会社の共同創業者のポール・アレンのふりをして、時代を先駆けたパーソナルコンピューター、アルテアの政策会社の社長に電話して、アルテア向けのソフトウェアを製作したと告げた。これに感銘を受けた社長のエド・ロバーツは、会社に来て実演してみせるように言った。それはまたとないすばらしい機会だった……が、ゲイツの言ったことは嘘っぱちで、ソフトウェアを製作し終えていなかったばかりか、まだ製作し始めてもいなかった。実際には電話をしてから実演するまでの2ヵ月間で、死にものぐるいで製作した。アルテアのパソコンする持っていなかったのでテストはできず、実演当日まで自分たちのソフトウェアが作動するかどうかさえわからなかった。
「うまくいくまでは、うまくいっているふりをせよ」の成功譚は、「世界有数のアメリカのテック会社」だけにかぎっても枚挙にいとまがない。スティーブ・ジョブズiPhone(アイフォーン)を2007年に発表した。それは将来有望な「魔法の革命機器」であり、既存の携帯電話を再開発するものだったが、そのとき1つ、ちょっとした問題があった。アップルはまだ正常に作動するiPhoneを製作を終えていなかった。デモ用の試作品はクラッシュしたり、フリーズしたり、通話が途切れたりし続けていた。サンフランシスコの展示施設、モスコーニ・センターに集い、期待に胸をふくらませる観衆の前で、ジョブズiPhoneの実演を行った。アプリからアプリへと楽々切り替えて、業界を大改革するiPhoneの力と使いやすさを絶妙に披露し、きっちりと順序が定められた「黄金の道」にしたがってやり遂げた。この一連の正しい操作の手順は会社の技術者が割りだした努力のたまもので、その場だけでもどうにか通話を途切れさせない唯一の方法だった。
ゲイツジョブズの例が世界じゅうのビジネススクールの授業に組みこまれている理由はわかりやすい。それはもちろん、うまくいっているふりをして、結果がうまくいったからである。両者がくだした判断は、約束を果たせるという完璧に正確な読み(とあとでわかったこと)にもとづいていた。こうして誕生したマイクロソフト社は本当にコード化ができると実証し、家庭用コンピューターの市場で最大シェアを持てるよう備えた。アップル社はiPhoneのメモリにあった問題を特注のチップで修正し、電車のなかで私たちがまわりの乗客を無視する手段を永遠に変えた。本書を読んでいただいている弁護士の皆さんへの重要なメモ:私はなにもビル・ゲイツスティーブ・ジョブズが嘘つきだとか、ぺてん師だとか言っているのではない。お2人の仕事はすばらしい! おかげで本書はマックブック・プロのワードで書かれているのだから!
要は、すべて過去を振り返ってなされた結果論だということである。歴史がその人物を「詐欺師」とするか「成功者」とするかは、あとになってみないとわからない。
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だが、(狡猾なビジネスの手法が最近になってからと)これまでそう考えていたのなら、エア=ナシルを知ってほしい。
エア=ナシルは3500年前を生きたウィテカー・ライトような人物だった。紀元前1750年ごろの商人であり、古代メソポタミアの大きな都市国家の1つ、ウルという都市に住んでいた(今日で言えばイラク南部にあたる)。したたかな商売のやり手で、不動産から中古衣料まで、儲けになるなら何でもあつかっていた。だが、商売の大半はそこからペルシャ湾沿いにいくらか距離がある商業の中心地、東アラビアのディルムンから銅を仕入れることだったようである。
人生の汚点は誰しもあるだろうが、もし自分が歴史に残るようなことがあるなら、自分がなしたよい業績で残りたいものである。エア=ナシルはそんな望みをくじかれた者の代表格である。彼が生きた時代から約4000年の時が経ち、エア=ナシルは私たちが知りうる人物がほとんどいない時代を生きたひとりの人物の名前である。だが、私たちがエア=ナシルについて知りうるおもなことは、この男はとてつもないでたらめな野郎で、とんでもない銅の商人だったことである。
なぜ知っているかというと、考古学者たちがエア=ナシルの家を掘り起こしたからだ。そこにはご丁寧にもすべてのやりとりが取ってあった。それは客からの伝言を記した粘土板で、仲だちの職業とする者が送ったものである。エア=ナシルは初めのうちは商売がうまくいっていたようで、王の代理人としてかなりの取引をしていたこともあった。
ところが、時が経つと、人々がエア=ナシルに送った伝言から、ある主題が浮かび上がるようになる。ざっくり言うと、その主題は「私の金はどうなった? この恥知らず」である。
こうした粘土板は、人類史上、初めて書かれた言語であるシュメル語のくさび文字で書かれていた。
これは世界最古の顧客クレームである。