じじぃの「インドガン・ヒマラヤ越えの真実!ペンギン物理のはなし」

Mallory the Bar-Headed Goose | Buzzly's Buddies | Everest VBS

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FEDTX1oJEZI

Bar-Headed Geese Slow Their Metabolism to Soar over Everest

Sep 4, 2019 The Scientist Magazine
The bar-headed goose (Anser indicus) flies over the tallest peaks of the Himalayas as it migrates from India to Mongolia each year.
When oxygen levels in the thin air dip as low as 7 percent, the bird’s metabolism likewise dips to accommodate, yet its wings beat just as fast as before, researchers reported August 3 in eLife.
https://www.the-scientist.com/news-opinion/bar-headed-geese-slow-their-metabolism-to-soar-over-everest-66386

『ペンギンが教えてくれた 物理のはなし』

渡辺佑基/著 河出文庫 2020年発行

第5章 飛ぶ――アホウドリが語る飛翔の真実 より

ヒマラヤ越えのスパルタ飛行――インドガン

グンカンドリが高度2500メートルまで舞い上がれるのは、上昇気流という自然の力をうまく利用するからである。
でも鳥の世界は広し、上昇気流なんか使わずに、純粋に己の筋力だけでグンカンドリよりも高く上昇する鳥がいる。それがインドガンだ。
インドガンは夏の暑い時期をモンゴルやロシアなどの避暑地で過ごし、冬の寒い時期をインドで暖かく過ごす渡り鳥である。これだけを聞けば優雅なセレブ生活かもしれないが、インドからモンゴルにかけての北上飛行はとんでもなくスパルタな体育会系的大移動である。インドの北、ネパールとの国境近くに世界一の峻峰、ヒマラヤ山脈が巨大な壁のようにそびえたっているからだ。
インドガンにとってのヒマラヤ越えは、三重の意味で究極の高負荷運動である。
第1に、高度が上がれば上がるほど空気が薄くなるので、有酸素運動がどんどん困難になっていく。普通の人なら酸素ボンベの助けを借りなければヒマラヤの山々は登頂できない。
第2に、高度が上がるにつれて空気の密度が低下し、揚力が発生しにくくなる。前述の「(空気の密度) X (翼の面積) X (速度)の二乗」の式からわかるように、鳥が羽ばたきによって得られる揚力は、空気の密度に比例する。空気が薄くなってどんどん息が苦しくなるのに、羽ばたきの頻度はより一層速めなければならない。これを体育会系列と言わずになんといおう。
さらに第3に、インドガンは体重2.5キロほどもある大きな鳥である。一般的に大きな動物ほど、重力に逆らう縦方向の移動を苦手とする。小さなリスは苦もなく樹の幹を垂直に駆け上がるが、大きなゾウはほんの少しの上り坂さえ避けようとする。人間の場合も、上り坂を得意とするランナーや自転車選手はたいてい小柄である。だからインドガンの大きな体はヒマラヤ越えの障害になる。

苦しいときこそ冷静に

さて、問題を整理すると、インドガンのヒマラヤ越えは3つの意味で究極の高負荷運動である。1つは、高度が上がるほど空気が薄くなり、有酸素運動が大変になること。2つ目は、高度が上がるほど空気の密度が小さくなり、揚力が発生しにくくなること。3つ目は、インドガンは大きな鳥であり、重力に逆らう縦の移動が宿命的に苦手であること。
では彼らはどうやってそれを成し遂げるのだろう。
イギリスの研究チームによる最新のバイオロギング調査が、ヒマラヤ越えのインドガンの三次元的な移動軌跡を明らかにした。私とは面識のない研究チームだが、ダイナミックなデータが見事に記録できたときはさぞや嬉しかっただろうと想像せずにはおれない。きっとデータの機密性なんかそっちのけで、いろんな人にしゃべって歩いたに違いない。
そのデータによれば、ヒマラヤ越えの当日、まるでオリンピック本番のスポーツ選手のようにえいやっと気合をいれて飛び立ったインドガンは、バサバサと羽ばたいてぐんぐんと高度を上げ、8時間で5000~6000メートルの最高高度に達していた。
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なぜこんなことができるのだろう。
1つには生理的な適応がある。インドガンは大きな肺をもち、薄い空気を補うようにたっぷりの量の空気を吸い込むことができる。また筋肉にはびっしりと血管が張り巡らされ、さらに血液には酸素を運搬するヘモグロビンが他の鳥よりも多く含まれている。ようするにインドガンツールドフランスのサイクリストかオリンピックのマラソン選手のような、有酸素運動に特化した体つきをしている。
でもそれだけではない。バイオロギングのデータからは、インドガンが行動的な適応をしていることも明らかになった。

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どうでもいい、じじぃの日記。
ときどき、人間は三次元空間に生きているのか疑問に感じることがある。
足を、べったり地面または床にくっつけて生活しているからだ。

インドガンにとってのヒマラヤ越えは、三重の意味で究極の高負荷運動である。

インドガンは体重2.5キロほどもある大きな鳥である。

よくやるなあ。

そのデータによれば、ヒマラヤ越えの当日、まるでオリンピック本番のスポーツ選手のようにえいやっと気合をいれて飛び立ったインドガンは、バサバサと羽ばたいてぐんぐんと高度を上げ、8時間で5000~6000メートルの最高高度に達していた。

インドガンは、何とも強大な筋力の持ち主なのである。