じじぃの「科学・地球_272_366日風景画をめぐる旅・オールド・アルプス」

セガンティーニ 「アルプスの真昼」

アルプスの画家 セガンティーニ ー光と山ー

ジョヴァンニ・セガンティーニ(1858年-99年)は、アルプスの山々に魅せられその風景を描いた画家として知られています。
故郷イタリアで活動した初期には、フランスの画家ミレー譲りのスタイルで農民生活などを題材としました。その後、スイスアルプスに魅せられ、澄んだ光の、より高い山地に転居しながら、雄大なアルプスを舞台にした作品に取り組みます。次代の前衛美術に影響をあたえた新印象派風の明るく細かいタッチの色彩技法もこのころ確立しました。
https://www.museum.or.jp/event/73980

『366日風景画をめぐる旅』

海野弘/解説・監修 パイインターナショナル 2021年発行

画家たちが愛した風景 11 オールド・アルプス(The Old Alps) より

画家がアルプスを描きはじめるのは18世紀後半になってからであった。アルプスにそびえる山々は、はじめは危険でおそろしい、そして醜いものであったが、その怪奇でグロテスクな姿が<風景>として発見されたのである。おそろしく、超人間的ではあるが、神々しく、崇高なものへのあこがれが、ロマン主義的な想像力として登場してくる。
アルプスの多くの部分を占めるスイスという国の成立もアルプス風景の発見に大きな役割を果たした。スイスの連邦国家として成立したのは1848年である。国民意識の目覚めが、アルプスへのあこがれをもたらしたのである。
地質学などの科学的研究も山岳への関心を高めた。アルプスは経済と科学によって19世紀、特にその後半に、その姿を見せるようになったのである。
19世紀末から20世紀初頭のアルプス山岳風景画の中心はセガンティーニ、フェルディナント・ホドラー、ジョヴァンニ・ジャコメッティであった。ここでざっとアルプスの地図を説明しておくと、中央にユングフラウ、アイガーなどがそびえるベルナー・オーバーラント地方がある。ふもとにトゥーン湖とブリエンツ湖がある。
このトゥーン湖からの眺めが<ホドラー・カントリー>である。その東南、イタリアとの国境にマッジョーレ湖があり、精神世界や神秘主義のコロニーがあったアスコナが湖畔にある。
東端の、オーストリアとの国境に近い、オーバーエンガディン地方は、セガンティーニジャコメッティの<カントリー>である。北にダヴォス、南にサン・モリッツ、マローヤの町がある。
セガンティーニは1900年のパリ万国博覧会のために、エンガディンの山々のパノラマを描く計画を立てたが、実現できなかった。このような風景のパノラマ図は、モネが睡蓮の池で実現させるが、万国博覧会がきっかけになっているのかもしれない。
セガンティーニホドラージャコメッティなどは、アルプスを原始的な山岳風景として描いた。そこで山々は永遠の時を刻んでいる。

                  • -