Afghanistan: Japanese doctor Tetsu Nakamura shot dead in gun attack
Tetsu Nakamura is seen in a photo taken in February 2010 in Afghanistan's Nangarhar province after the completion of an irrigation canal.
Japanese doctor remembered one year after killing in Afghanistan
Dec 4, 2020 The Japan Times
JALALABAD, AFGHANISTAN - Dr. Tetsu Nakamura was remembered Friday by some 100 local staff members of a group founded by him, one year after he was gunned down in Afghanistan.
The 73-year-old local representative of the Peshawar-kai aid group, who dedicated himself to helping the conflict-ravaged Asian country, was killed along with five locals in an ambush as they made their way to an irrigation site in Jalalabad in the eastern province of Nangarhar on Dec. 4, 2019.
None of those involved in the killings has been caught.
Prior to the first anniversary of his death, Peace (Japan) Medical Services, the local unit of the aid organization, pledged to continue Nakamura’s work, which sees several thousand local patients treated every month and provided with free medication.
https://www.japantimes.co.jp/news/2020/12/04/national/tetsu-nakamura-one-year/
『AI支配でヒトは死ぬ。』
養老孟司/著 ビジネス社 2021年発行
第2章 システムを超える「もの」「自然」「身体」「国語」の手触りについて より
中村哲さんの死――「内発性」を抹殺するシステム
―― お話を伺っていると、養老先生が今の日本社会に相当にお詳しいことに驚いてしまうんですが……。下手をすると、僕のほうが老けているかもしれない(笑)。
養老
いや、年取って虫ばかりいじくっているから、逆に、そういうことも関心をもたなきゃいけないのかなと思ってね。それから、やはりもともとの性格として、訳の分からないことが嫌なんですよ。だから政治の話も経済の話も訳が分からないぶん、知りたくなる。
でもね、「元気な人」でいうと、今年(2019年)、1番ショックだったのは、あの中村哲さんがアフガニスタンで殺されたことですね。彼は、ここ(養老山荘)にも来たことがあるんだよ。もともとチョウが好きでね。キャベツのような作物は中近東から来ているから、それを食べるモンシロチョウも中東からついてきたはずだといって、その原種を探しに中東へ行ったんですよ。そしたら、医療状況がヒドイというので診療所を始めてね。でも、診療所じゃラチがあかないんで、川を掘り始めたんです。100万のアフガン難民というのは、干ばつが原因なんで川を掘るのが1番手っ取り早い。それで、10万人単位で人が戻り始めたでしょう。でも、それで目をつけられて、殺されてしまった。
彼は「絶対大丈夫」と言ってたんだけれど、新聞を見たら護衛付きなんだよね。日本政府も忠告したっていうし、そろそろ危ないと分かっていたんだと思う。つまり、彼がどういうことをしたか、していないかということじゃなくと、そこまで政治的な重みがついてくると、殺すこと自体に意味が出てきちゃう、それが政治の嫌なところなんですが、どんなに社会的マイナスがあってもいいんですよ。邪魔なイメージを消すことさえできれば、中村さんは、それが引っかかっちゃったんだなと思ってね。彼自身は、何の関係もないのにね。
それから、いろいろ考えるよね。中村さんの存在自体が、たとえば外務省の人にとっては不愉快だったはずだよなとか、「個人であれだけのことをしているのに、お前は給料をもらって何をしてるのか」って話になるからね。だから、その存在が、日常的な政治批判になっちゃうんですよ。それはアメリカだった同じでね。現に、川を掘ることで、パキスタンから農民が戻ってきているのに、なぜそれをやらないのかということになる。アメリカ軍は、爆弾を落としたり、軍事訓練したりしているけれど、川は掘らないからね。
―― 中村哲さんのお話は大切ですね。チョウが好きで中東に行って、医療が酷いから診療所を始めて、それじゃラチがあかないから川を堀ると。理念で動いているわけじゃなくて、全て、目の前の自分の「必要」に応じて内発的に動いていった結果なんですね。しかし、そんな中村さんが殺されてしまったということは、自分の「必要」に応じて動くこと自体が、この社会では目障りになってきてしまっているんですね。
養老
そう、徹底的にそうなんですよ。それがシステム化ってことだから。
その意味じゃ、最近で1番悲劇的な事件だなと。はっきりいって、システムにつぶされたんですよ。既成の政府組織と、テロ組織があって、そのシステムのなかで個人が抹殺されてしまった。でも、それに対抗するためにシステムを作ると、同じことになっちゃう。だから、中村さんは、それをしなかったわけでしょ。だから悲劇なんですよ。
―― これは個人と社会の永遠のジレンマですね。だからこそ「平衡感覚」が必要になってくるんですが、しかし、それさえ、このシステム社会では通用しなくなりつつありますね。