じじぃの「人の生きざま_485_ジル・ボルト・テイラー(脳学者)」

「奇跡の脳」脳卒中体験を語る / ジル・ボルト・テイラー 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BsSWaYITW4g

脳科学ブッダの瞑想法―『奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー ニート☆ポップ教NEO
●奇跡の脳
作者: ジル・ボルトテイラー,Jill Bolte Taylor,竹内薫 出版社: 新潮社
http://d.hatena.ne.jp/massunnk/20090405/p1
Jill Bolte Taylor Wikipediaより
Jill Bolte Taylor (born May 4, 1959) is an American neuroanatomist, author, and inspirational public speaker. Her training is in the postmortem investigation of the human brain as it relates to schizophrenia and the severe mental illnesses. She founded the nonprofit Jill Bolte Taylor Brains, Inc., she is affiliated with the Indiana University School of Medicine, and she is the national spokesperson for the Harvard Brain Tissue Resource Center. She is the author of My Stroke of Insight which is published in 30 languages and her TED talk was the first TED talk to ever go viral on the internet.

                        • -

スーパープレゼンテーション 2012年4月23日 Eテレ NHKオンライン
【番組ナビゲーター】伊藤穰一 【プレゼンター】ジル・ボルト・テイラー
人間の脳は、右脳と左脳の二つに分かれている。右脳がイメージや感覚的な理解に優れている一方で、左脳は自意識や論理的思考、そして言語機能を司っている。
1996年のある朝、テイラー博士は脳卒中に襲われる。左脳の血管が破裂し、徐々にその機能が失われていくのを、博士は科学者ならではの視点で観察する。そして、左脳が機能不全になることにより、右脳が作り出す幸福感に満ちた世界を体験する。その体験から、人間は右脳の世界をもっと探求すべきだとメッセージする。
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/backnumber/120423.html
『「自分」の壁』 養老孟司/著 新潮社 2014年発行
「自分」は矢印に過ぎない (一部抜粋しています)
なぜ地図の話をしているか。生物学的な「自分」とは、この「現在位置の矢印」ではないか、と私は考えているからです。ほかの人がこういう言い方をしているのを読んだり聞いたりしたことはありませんが、そう考えるとわかりやすいのです。
「自分」「自己」「自我」「自意識」等々、言葉で言うとずいぶん大層な感じがになりますが、それは結局のところ「いま自分はどこにいるのかを示す矢印」くらいのもに過ぎないのではないか。
そのことは脳の研究からもわかっているのです。
脳の中には「自己の領域」を決めている部位があります。「空間定位の領野」と呼ばれています。
なぜそんなことがわかるか。その部位が壊れた患者さんの症例等をしらべた結果、わかってきたのです。
有名なのは、アメリカで脳神経解剖を研究している女性の学者ジル・ボルト・テイラーさんの例でしょう。彼女は37歳のときに、脳卒中を起こして左脳の機能を破損してしまいました。ふつうの人は、脳内で出血したら、何が何だかわからなくなって倒れるだけでしょう。
しかし、彼女は専門家なので、出血した際に「ああ、これは脳の出血かなにかを起こしたな」ということが、すぐにわかったそうです。そして、これから自分の身に何が起こるのかを覚えておこう、と意識したのです。
脳がふつうに働かなくなりながらも、次のように考えていたそうです。
「いいわよ、のうそっちゅうがおきるのを止められないのならそれでいいけど、1週間だけね! ついでに、どんなふうに脳がげんじつの知覚をつくり出すのか、知りたいことを学べばいいんだから」(『奇跡の脳――脳科学者の脳が壊れたとき』(竹内薫新潮文庫)より以下同)
そして鏡の中に見える自分に対して、「これから体験することを全部覚えておくように」と語りかけました。それはテイラーさんの職業意識の賜物でしょう。そして実際に回復してから、自分の経験を『奇跡の脳』という本にまとめられたのです。
そこには空間定位の領野が壊れたらどうなるかが、見事に描かれています。
まず何が起こったか。彼女は自分が液体になったようだったと書いています。
「からだは浴室の壁で支えられていましたが、どこで自分が始まって終わっているのか、というからだの境界すらはっきりわからない。なんとも奇妙な感覚。からだが、固体ではなくて流体であるかのような感じ。まわりの空間や空気の流れに溶け込んでしまい、もう、からだと他のものの区別がつかない」
私たちは自分のことを形ある固体だと思っていますが、空間定位の領野が壊れると それが液体になってしまう。
液体は決まった形をもっていません。ずるずると広がって流れていく。ずーっと広がっていくと、どうなるか。テイラーさんは自分が世界と一緒になってしまうような感じになったのだと言います。
これは理屈で考えるとよくわかる話です。先ほどの地図の話を思い返してみてください。地図の中にある現在位置を示す矢印。その矢印を消していくとどうなるか。自分と地図が一体化するのです。
たとえば目の前に山があったとします。頭の中に山の姿がある。そこで「自分」という枠を取ってしまったら、山と自分が一体化するのです。山の映像は脳の中にあります。それは自分の一部です。その山の外部にあるものだ、というのは「自分」という枠を意識できているからです。
自分と世界との区別がつくのは 脳が線引きをしているからであって、「矢印はここ」と決めているからです。その部位は壊れてしまえば、目に入るもの、考えていることも全部、脳の「中」にあるわけですから、自分の「中」にあるのと同じです。区別はつきません。世界と自分の境目がなくなっている状態です。