じじぃの「歴史・思想_486_大分断・教育が格差をもたらした」

Harvard - The Richest University in the World

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=XzVqlB-8rqI

Harvard Received $1.4 Billion In Donations Last Year [Infographic]

Feb 11, 2019 Forbes
Harvard's success came at the end of a five-year capital campaign that shattered fund-raising records for higher education.
The university set a goal of $6.5 billion and by the end of the campaign, it had raised $9.6 billion. In fiscal year 2018, Stanford had the second highest total, $1.1 billion, while Columbia followed closely with $1.0 billion. The survey highlights the fact that several elite and wealthy colleges are attracting much of the country's financial resources, despite the fact that they only account for a small section of the overall student population.
https://www.forbes.com/sites/niallmccarthy/2019/02/11/harvard-received-1-4-billion-in-donations-last-year-infographic/?sh=17b1d1f53631

『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』

エマニュエル・トッド/著、大野舞/訳 PHP新書 2020年発行

第1章 教育が格差をもたらした より

マルクスの階級社会の再来か

今や高等教育は学ぶ場というよりも、支配階級が自らの再生産を守るためのものになり、被支配階級の子供たちよりもどれだけ上の教育を受けられるか、ということが重要になっているのです。お金のある家庭は、子供たちがある分野で成功するための保証として家庭教師を雇います。こうした社会は、マルクスの言う階級社会の現代版と言えるでしょう。マルクス主義的な階級社会とは、もともとは資本の所有に基づくものでしたが、今日ではこの階級に「教育」という新たなツールが加わり、思想的、そして社会的な階級の存在を正当化しているのです。今や多くの人々が徐々にこの教育による分断に気づき始めています。これは非常に重要なことです。
階級闘争が高等教育の分野に入り込んだと言ってもいいかもしれません。自分たちの子供たちが高等教育で勝ち抜くために、階級同士で必死になる中、高等教育を「買う」ということすら可能になっています。

例えばアメリカではそれが顕著で、大金を払ってハーバード大学に入学することも可能な時代なのです。もちろん優秀な学生もとるわけですが、高額の寄付金を支払って入学することも可能なシステムです。

フランスには非常に高額なビジネススクールがたくさんありますが、それもこの一種です。富裕層の子供たちと教師の子供たちの間で、高等教育に関わる闘争が繰り広げられていると思います。教師の子供たちは教育システムを知り尽くしているという意味で有利ですが、裕福な子供たちは金銭的に有利なのです。例えば、ある学校へ入るための入学金が上がれば、富裕層が教師の層に勝つことになるでしょう。
このように、いわゆる高等教育を受けたエリートたちは、決して能力主義のおかげでそこにいるわけではなく、あくまで階級によってそこにいるのです。このような状況が、マルクスの階級社会を彷彿とさせます。

社会階級闘争から教育階級の闘争へ

今、われわれは決定的なフェーズにあります。教育の差を基盤とした、完全で完璧な新たな対立の出現です。これまでの民主主義国家は大衆の識字教育を基盤とした社会システムの上に成り立っていましたが、そこでは高等教育まで受ける人はわずかでした。つまり上層部の人々は庶民に語りかけることで社会的に存在していたのです。またそれは支配層も右派も同様でした。前述したように、高等教育の拡大は、社会が解放へ向かう一歩と考えられ、それが1968年の五月革命(パリの学生運動に端を発した、社会変革を目指す大衆運動)の精神でした。しかしながら、私たちが見落としていたのは社会全体が高等教育を受けるわけではないという点でした。高等教育を修了する人の割合はほぼ全ての国で停滞し、こうして社会は階層化された教育構造を生み出したのです。上層部には大衆エリートが君臨し(およそ人口の3分の1)、自分たちの殻に閉じこもりました。それは似た者同士だけで生きていける程度の人口に達したからです。一方で初等教育レベルで教育過程から離れた人々もまた、自分たちの殻に閉じこもりました。
前述したように、フランスでこの対立が最初に現れたのは92年のマーストリヒト条約(1992年に締結され、93年に発効した「ヨーロッパ連合条約」。これによってヨーロッパ統合が一段と進み、ECからEUへ転換した)でした。エリートは「知っていた」のに対し、大衆は何も理解していなかったため、「ノン」と投じたのです。そして今、この教育格差という現象は熟したと言えます。収入と教育には強い相互関連があるということを鑑(かんが)みても、社会階級闘争は教育階級の闘争に取って代わったと言ってよいでしょう。