じじぃの「歴史・思想_536_日本の論点2022・コロナ禍を乗り切る」

【公式】東京ディズニーリゾートの健康と安全のための取り組み

東京ディズニーリゾート
政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」を踏まえて作成された「遊園地・テーマパークにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に沿った対策を講じることに加え、行政機関からの指導のもと、ゲストの皆さまとキャストの健康と安全の確保を最優先に運営します。
https://www.tokyodisneyresort.jp/topics/info/safety.html

『これからの日本の論点2022』

日本経済新聞社/編 日経BP 2021年発行

日本企業はこれからどうなる

論点15 変わる消費、コロナ後に戻るもの、戻らないもの より

【執筆者】田中陽(編集委員。流通経済部)

唯一無二の世界観がカギ

コロナ後に戻るものと戻らないもの。その差は何か。デジタルを活用して既存の非効率な慣習などを取り払い、受容を創造する力が大切だ。加えて、コロナ前と後での、価値観や生活スタイル、働き方の変化も見逃せない。そうしたなかで「唯一無二の世界観」を持っている商品やサービスは根強い。
東京ディズニーリゾートTDR)を運営するオリエンタルランド。7月に公表された2021年度の通期の見通しについては「現時点で合理的な業績予想の算定が困難」として記載を見送った。前期に比べると赤字幅は大幅に縮まったが、厳しい経営状況は変わらない。コロナ禍で目も当てられない決算だが、株価はブッキング・ホールディングスのように底堅い
全国の学校が休校になるなど混乱を極めた2020年3月、同社の株価は急落したが、3月12日に1万2070円の安値(終値)をつけてからは上昇に転じ、TDRが休園を余儀なくされた同年6月にはコロナ前の水準にほぼ戻している。2021年2月28日には1万8640円の高値をつけた。足元は調整局面にあるが、それでも1万5000円をはさむ値動きだ。
コロナが収束した暁には、コロナ前よりも多くの入場者がTDRに押し寄せ、業績が飛躍的に改善する。市場からはこんな期待が読み取れる。「夢の国」といわれるディズニーは、そこに行かなければ味わえないリアルで独特な雰囲気に包み込まれている。やはりここでも、唯一無二が強みとなる。
コロナ禍でTDRへ行けないため、「行きたい」という渇望のマグマはたまっている。コロナ禍で再認識したのは、「『人と人との触れ合い』がもたらす『幸福』の尊さ」(上西京一郎前社長)だ。TDRは「ハレ」消費の典型で、実際に米ディズニーランドには客が戻ってきた。
ラグジュアリーブランドの世界では、コロナ前の水準を上回るところも出はじめた。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループ(LVMH)の2021年1-6月期(上半期)の決算によると、売上高は286億6500万ユーロ(約3兆7278億円)で前年同期比56%増、コロナ前の2019年上半期に比べても14%増となった。
純利益に至っては52億8900万ユーロ(約6878億円)で、前年同期比で約10倍、2019年上半期と比べても62%増となった。

変わる消費者行動

飲食業界ではいま、「法人個人消費の消滅」という隠語がじわじわと広がりはじめている。
法人個人消費とは何か。法人と個人という、まったく別のものが組み合わさった造語だが、種明かしをすれば、交際費や接待費など、会社のカネで飲食するような消費だ。コロナ禍で会食が制限されると、接待は事実上、難しくなる。出張もそうだ。リモートでの打ち合わせで、多くの仕事がこなせてしまう。新型コロナの感染拡大が収束しても、接待や出張が以前のように戻るとは思われない。
高級フランス料理店や婚礼事業、日本料理店、ホテル事業などを手がける、ひらまつは、ゴルフ場などを運営するマルハングループの太平洋クラブマルハン太平洋クラブインベストメントを引受先とした第三者割当増資と新株予約権の発行により、74億4100万円を調達すると発表した。法人個人消費に頼ることなく、人気が戻りつつあるゴルフ場の飲食部門などへの出店を通して再生を図ると見られる。
コロナ禍は、日常の買い物行動も変えた。ネット通販の利用だ。経産省が2021年7月末に発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2020年の物販系分野の市場規模は12兆2333億円となった。前年比2兆1818億円(21.7%)増だ。物販全体に対する電子商取引の割合(EC比率)は8.08%。2020年の米国の物販部門のEC比率は14.0%(商務省調べ)で、日米ともにネット通販の伸びしろは大きい。
分野別に見てみよう。巣ごもり消費をとらえた食品や飲料、酒類は、2兆2086億円(前年比21.1%増)。これは、日本最大の流通グループ、イオンの中核企業で総合スーパーを運営するイオンリテールの2020年度売上高を約1200億円上回る規模だ。生活家電やAV機器、テレワーク向けのPC・周辺機器などは、2兆3489億円(同28.8%増)。これも、家電量販店大手、ヤマダ電機の売上高をはるかに凌駕する。家のなかで快適に過ごすための生活雑貨や家具、インテリアは、2兆1322億円(同22.4%増)。家具チェーン最大手、ニトリホールディングスの3倍近い規模だった。
ネット通販が注目され、リアル店舗の苦境が伝えられるなかで、意外な店が健闘している。それは地方の百貨店だ。特に関東圏にある地場百貨店の売上高が堅調だ。もともとコロナ前からインバウンド消費の恩恵をあまり受けておらず、インバウンド消費が蒸発しても影響が少なかった。加えて、地方にいる高齢な富裕層が、都心にあるメガ百貨店での買い物を敬遠し、地元の百貨店で高額品を購入しているという。
    ・
コロナ禍で浮かび上がった、さまざまな消費の実像。そこから何を学び取るか。ローソンの竹増貞信社長は「コロナ禍を乗り切れば、ローソンはもっと強くなれる。そうならなくてはいけない」と語る。資生堂の魚谷雅彦社長は「いろんな気づきがあった。それをどう生かすかだ」とコロナ後を見据える。より多くの消費者に戻ってもらうための価値創造の知恵比べが始まっている。