じじぃの「科学・芸術_881_スイスの企業・ロシュ・ホールディング(医療品メーカー)」

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ

F. Hoffmann-La Roche, Ltd.
   

『世界の覇権企業 最新地図』

現代ビジネス研究班/編 KAWADE夢文庫 2019年発行

ロシュ・ホールディング(Roche Holding) 莫大な研究開発費によって、世界一を争うスイスのメガ・ファーマ より

2017年の時点で世界一の売上高を誇るメガ・ファーマの地位にあるのは、スイスのロシュである。正確にはエフ・ホフマン・ラ・ロシュ(F. Hoffmann-La Roche)といい、持ち株会社ロシュ・ホールディングがグループ企業を統括している。日本の中外製薬は、ロシュの子会社となっている。
メガ・ファーマ首位の座を巡る覇権争いは、熾烈である。2000年代を通じて、最強のメガ・ファーマであったのは、アメリカのファイザーである。ファイザーの2000年の売上高は200億ドル(約2兆2000億円)台であったが、2010年には700億ドル(約7兆7000億円)に迫っていた。
だが、ファイザーも以後、業績を落とし、代わってスイスのノバルティスが覇者となる。そのノバルティスの覇権もファイザーに抜き返される。そして、ロシュの時代となったのだ。
ロシュの2017年の売上高は543億ドル(約5兆9700億円)。2016年の首位だったファイザーの売上高525億ドル(約5兆7800億円)をしのいでいる。2019年3月の時点で、ロシュの株式時価総額は2453億ドル(約26兆9800億円)で、世界21位にある。
ロシュは抗ガン剤を主力としているが、インフルエンザ治療薬「タミフル」の販売でも知られる。もともと、「タミフル」の原型を開発したのは、アメリカのギリアド・サイエンシスである。ロシュは、ギリアド・サイエンシスからライセンスを取得し、主力商品のひとつとしたのだ。
ロシュの強みは、研究開発費をおしまないところにある。2017年の時点で、ロシュの投じた年間研究開発費は115億ドル(約1兆2700億円)である。これは、製薬会社のなかでトップの数字であり、製薬会社のなかで、唯一、100億ドルを超えているのだ。ロシュの研究開発費は、売上高の21%にもなっているのだ。
これに対して、アメリカのファイザーの研究開発費は77億ドル(約8500億円)であり、売上高の15%しか研究開発費に投じていない。ファイザーの研究開発費は、製薬会社全体で第5位でしかない。
たしかに、ロシュも合併戦略をもっているが、その一方で、研究開発という地道な路線を重視しているのだ。このあたりが、買収戦術を駆使するファイザーとは対照的である。