じじぃの「科学・地球_261_生態学大図鑑・種子の多様性」

【予告篇】ヴァンダナ・シヴァの いのちの種を抱きしめて

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NjO9if9kF6Q

ヴァンダナ・シヴァのいのちの種を抱きしめて

製作年2014年 cinemo
「すべては人間のため」という人間主義から、地球中心主義へと移行する時です。
私たちにすべてを与えてくれているのは地球なのだから。
https://www.cinemo.info/75m

生態学大図鑑』

ジュリア・シュローダー/著、鷲谷いづみ/訳 三省堂 2021年発行

単一栽培と市場独占が種子の収穫を破壊する 種子の多様性 より

【主要人物】ヴァンダナ・シヴァ(1952年~)

1987年にインドの環境活動家ヴァンダナ・シヴァは、当時の農業と食糧生産の変化に対応し、在来種の種子の多様性を守る運動を始めた。シヴァは、遺伝子工学と特許が複合して生じた脅威から農業における生物多様性を守るために、非政府組織「ナヴダーニヤ」を立ち上げた。

農業生物多様性

農業生物多様性は、何千年にもわたる野生の植物や動物の選択的な育種によって作られたものである。その実践により、作物や家畜の品種には顕著な遺伝的多様性が見られる。たとえば、イネ(Oryza)属のある野生種が8200~1万3500年前にアジアで栽培されるようになったが、現在では4万以上のイネの品種がある。農業生物多様性の本来の特徴ともいえるのは、生産を支える作物ではない多くの種である。それらは、土壌中の微生物、害虫を餌とする種、ポリネ―タ(送紛者)などである。長い時間をかけて、数えきれないほど多くの農民の技術と知識がこの生物多様性を作り上げてきた。1960年代後期から多くの開発途上国への、穀物の多収性品種とあわせて、化学肥料、殺虫剤、除草剤、機械化、近代的灌漑など科学技術の導入が始まった。
緑の革命」として知られるこの転換は、開発途上国の農業を、生物多様性から収穫量の増大に増大に焦点をあてるものに変えた。緑の革命が生んだ「奇跡の米(IR8)」など新しい作物は生産高を飛躍的に向上させたが、不都合な面もある。多収性のごくわずかな品種が重視されたため、穀物、ジャガイモ、果物、野菜、綿花など伝統的品種の種子の多様性の遺伝的基盤が失われた。
国連食糧農業機関」は、世界の畑からは作物の生物多様性の75%が失われたと推定する。この問題に関心を持つ環境保護主義者は、多収性の新品種よりも伝統的品種のほうが地域の農業条件に適合し、農家に経済的な負担がかからず、環境的な持続可能性も高いと訴えてきた。さらに、新品種の多くは、それを作った企業が特許を持つ。取引協定が、誰が何を使用できるかを規制する。それは小規模農家には不利に、種子を生産する大規模農業企業には有利に働く。

種子主権

シヴァは、地方の農家がもはや適切な種子を入手できなくなる脅威にさらされていると訴える。伝統的に、ほとんどの小規模農家は収穫時に一部の種子をとっておき、次のシーズンに使った。今では農家が種子を買う時代になり、とくに遺伝子組換え作物の場合には、収穫した種子を手許に残さないよう同意が要求されることが多い。企業から毎年を購入しなければならないことの経済的な不利益は大きい。
シヴァは、企業が種子の品種に特許を持つことを「バイオパイラシー(生物資源盗賊行為)」として批判し、「種子の主権」を支援するための「ナヴダーニヤ」を創設した。「ナヴダーニヤ」は種子保管組織と有機生産者のネットワークを介した農業生物多様性を守るキャンペーンを展開し、作物および稀少植物の種子を将来の利用に向けて残すために保存する種子バンク(事実上の遺伝子バンク)を100以上のコミュニティが設立するのを援助した。