The Keeling Curve Hits 415 PPM
2021年ノーベル物理学賞 ~気候や複雑な現象に隠されたルールの発見~
2021年10月6日 Gelate(ジェレイト)
2021年のノーベル物理学賞は、「複雑系の理解への画期的な貢献」に対して授与されました。
受賞したのはアメリカの真鍋淑郎氏(Shukuro Manabe)、ドイツのクラウス・ハッセルマン氏、イタリアのジョルジョ・パリシ氏の三名です。
1950年代、ドイツのハンブルグで物理学を専攻していた博士課程の学生だったハッセルマンは、流体力学を研究した後、海洋の波や海流の観測と理論モデルの開発を行います。
その後、渡米してカリフォルニアに移ったハッセルマンは、チャールズ・デビッド・キーリングと出会います。キーリングは1958年にマウナロア観測所で、現在では最長の大気中の二酸化炭素の測定を始めたことで知られています。
https://note.com/geltech/n/nea49acc47120
わたしたちは急激に変化し始めた地球を目のあたりにしている キーリング曲線 より
【主要人物】チャールズ・キーリング(1928~2005年)
アメリカの科学者チャールズ・キーリングの名にちなんだ「キーリング曲線」は、1958年から大気中の二酸化炭素(CO2)濃度をppmv(100万分の1体積率)単位で測定し、毎日の記録をグラフ化したものだ。そこから大気中のCO2の2つの変動を読み取れる。地球の季節的なCO2排出量の変動と、年を追う上昇である。大気中CO2濃度が重要なのは、CO2が最も重要な温室効果ガスであり、地球大気に熱をとどめるからである。温室効果ガスが増えればより多くの熱が捕捉され、概して地球全体の気温が上昇し、気候変動が促進される。
CO2の測定
1700年代後半に産業革命が始まって以降、人間活動はCO2排出量を増加させ続けてきた。主な原因は化石燃料の燃焼であるが、農業や開発のための森林伐採は、植生が光合成により吸収するCO2を減少させている。かつては多くの科学者が過剰なCO2は海洋に吸収されるものと信じていた。同意しない科学者もいたが、いずれもが強い根拠に欠けた。
チャールズ・キーリングは、気温上昇とCO2排出の相関性について最初に論じた科学者ではない。他の科学者もCO2濃度を測定したものの、長期間のデータセットではなく「スナップショット」ともいえる一瞬のデータに過ぎなかった。キーリングは、関係を明らかにするには長期研究が必要と考えた。
1956年にカリフォルニア州サンディエゴにあるスクリップス海洋研究所にポストを得て研究資金を獲得し、ハワイ島マウナロア山の人里慣れた標高3000m地点と南極の2ヵ所に、CO2濃度観測点を設置した。そして1960年までには、年を追う増加を検出するに十分な一連の長期記録を得ることができるとの確信に至った。
季節による変化
南極観測所での研究資金は1964年に尽きたが、マウナロア観測所は1958年以来データを蓄積し続けた。そのデータをグラフ化すると「キーリング曲線」が得られる。それはCO2の季節変動を反映した一連の年変動を示す。
北半球では、春と夏に新葉が大気からCO2をより多く取り込むため、地球規模でCO2濃度が下がり、9月に最低値となる。北半球が秋になり、落葉で光合成が低下すると、CO2濃度は再び上昇する。年の後半には、南半球の植物が成長するが、それが北半球の光合成低下を相殺するほどではない。地球上の植生は、大部分が北半球に偏って分布しているからだ。
極地の氷床から採取したコア(柱状資料)に捕捉されている古い時代のCO2のの測定によれば、1万1000年前の平均濃度は275~285ppmvであったが、19世紀半ばからは急増していた。
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2018年春には411ppmvとなったが、その値は産業革命以前の濃度のほぼ1.5倍にあたる。
キーリング曲線
キーリング曲線は、ハワイのマウナロアにおける大気中CO2の連続測定の結果をグラフ化したもので、CO2濃度が年々上昇し続けていることがはっきりと示されている。