真田&鈴置が徹底分析 韓国経済の強さと弱点 中韓がデジタルで接近 【前編】
動画 fnn.jp
https://www.fnn.jp/articles/-/290028
1人あたりGDP、27年に日韓逆転 日経センター予測
2021年12月15日 日本経済新聞
アジア・太平洋地域の18ヵ国・地域を対象に35年までの経済成長見通しをまとめ、1人あたりGDPも分析した。
国際通貨基金(IMF)と国連によると、日本の1人あたり名目GDPは20年時点で3万9890ドル(約452万円)で、韓国(3万1954ドル)を25%、台湾(2万8054ドル)を42%それぞれ上回っていた。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM143F30U1A211C2000000/
プライムニュース 「真田&鈴置が徹底分析 韓国経済の強さと弱点 中韓がデジタルで接近」
2021年12月23日 BSフジ
【キャスター】長野美郷、反町理 【ゲスト】真田幸光(愛知淑徳大学教授)、鈴置高史(ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員)
普通なら経済活動が活発になる筈の年末に、新型コロナのオミクロン株が世界各地で猛威を振るい始め、国際社会と経済に暗い影を落としている。日本も水際対策に力をいれているものの、今後への不透明感もあってか、株価が落ち着かない状況だ。
こうした中、15日に米国のFRB(連邦準備制度理事会)は、量的緩和政策縮小の終了時期を来年6月から3月に前倒しする方針を発表。米国の“ゼロ金利政策”終了が明確になり、世界経済への影響が懸念される。
また、世界が物価上昇に悲鳴を上げる中、日本では原材料などの価格動向を示す企業物価指数が上昇しているものの、消費者が製品などを購入する価格動向を示す消費者物価指数は殆ど上がっていないという、いわば「いびつな構図」を抱えた状態だ。
長引くコロナ禍に加え、世界を覆う経済的懸念は、アジア経済を牽引してきた日本や中国、そして韓国に何を引き起こし、米中対立にはどう作用するのか?
真田幸光&鈴置高史 徹底検証 コロナ禍の韓国経済の強さと弱点とは
新型コロナのオミクロン株が世界各地で猛威を振るっている。
そんな中、追い打ちをかけるように需要が急増した半導体が不足しているほか、原油価格、物流コストなどが高騰。
そうした影響もあり日本経済の成長が足踏みを続ける中、韓国における1人当たりの国内総生産(GDP)が2027年には日本を追い抜くという衝撃的な予測が発表された。
これまで何度も危機が囁かれてきた韓国経済はなぜ成長を続けることができるのか。
深刻化する米中対立は韓国の成長にどんな危うさをもたらしつつあるのか。
●韓国の生産年齢人口減少と経済
ADB(アジア開発銀行)は14日、韓国の今年の経済成長率を4.0%、来年は3.1%の見通しと発表。
真田幸光、「信頼性があると前提に置いている。高すぎるのではないかと思うが、定量分析でこれまでのデータを回して数字を出してきている。ADBもOECD(経済協力開発機構)、IMFも示している来年の見通しは前提条件が甘い。来年の3.1%という数字はADBだけじゃなく韓国政府がこういう見通しを立てた。韓国の民間では高すぎるんじゃないかという見方がある。今の文在寅政権はホラを吹くところがある。コロナ対策もうまくやっていると言いながらコケてきたのであまり信用されないところがある。輸出で今まで逃げてきたが、中国の輸入が減っている。輸入代替で国産化が進んでいる。中国も少子高齢化で経済の規模が縮み始めたのではないか。韓国の輸出は中国頼みが多かった」
日本経済研究センターの1人当たり名目GDPの推移と予測によると、2027年に韓国が日本を抜くとしている。
鈴置高史、「中央日報のコラムニストが人口論に関して『日本の20年後を追っているんだ』『韓国は恐ろしいことになる』と書いている」
韓国が「超少子化」に揺れている
2020年、1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率が0.34を記録した。
1を割り込むのは3年連続で、経済協力開発機構(OECD)加盟37ヵ国では韓国だけ。日本の1.36(2019年)よりはるかに低い。
真田幸光、「日本人の労働生産性が低いと言われるのは違和感を感じる。生み出しているものに対して海外からはたくさんもらってくるような産業にしないといけない。海外に対しては付加価値のあるものを高く売っていく。ドル建てでどれだけ稼いでくるのか。日本の労働生産性の低いところはそこに大きな原因があるのではないか」
鈴置高史、「今のパナソニック、松下電工の海外営業をやった人と話すとテレビのアンテナのない、電力のない山中でテレビを売る方法を考えていたと」
真田幸光、「若い人たちを中心に将来に対するアドベンチャーをしていくような感じがない。新しいものに対する好奇心が弱くなった。国内で安定的に食べていける環境が続いているので」
●コロナ禍でも韓国「成長」の訳
2021年、1年の韓国の株価の推移について。
夏頃には最高値を更新するなど盛り返したかのように見えたが、年末にかけて感染者数が伸びるのとリンクするように下降し足踏みしている状況。
資料「KOSPI(韓国総合株価指数)の推移)」。
鈴置高史、「韓国もコロナに翻弄されたが、去年のGDPは1.0%のマイナスで済んだ。日本は-4.0%。今年、韓国は+4.0%、日本は+2.6%。日本より製造業の比率が高い。韓国以外の先進国のGDPにはサービス産業の比率が高い。ここがコロナでやられてしまったので、日本や欧米は成長率が落ちた。韓国は製造業の比率が高いのでそんなに影響を受けなかった」
真田幸光、「製造業の中でも輸出部分が強かった。自動車、半導体の部分がプラスに貢献した。外貨を稼ぐ形で落ち込みを支えることができたのではないか。日本はGDPに占める個人消費の比率は約6割。韓国は先進国だけでなく、あまり人が売りに行かないところも頑張ってマーケティングしてきた。中東地域への輸出を頑張ってきた成果が今年はプラスに見えるようになってきたのではないか」
●日韓の明暗分けた「物価認識」
真田幸光、「日本は1985年にプラザ合意があった。急激な円高が起きた。メイドインジャパンがドル建てでは高くなって売れなくなった。日本企業はすぐに為替レートの上昇部分をかわすために当時のアジアの香港、台湾、韓国、シンガポールへ出て行く形で対応した。これがすごく安易だったと思う」
鈴置高史、「円高になった時に海外に出るべきかどうか議論があった。一番ベストなのは外にも出て、今までのものを安いコストで作る。会社を維持しながら日本国内でもっとすごいものを作る」
●韓国経済の強さと弱点とは
鈴置高史、「米国で1970年に改定された大気汚染防止を目的としたマスキー法(大気浄化法改正法)だが、ホンダは1972年にCVCCエンジン単体でマスキー法の適合審査に合格した。米国で日本車は圧倒的に優位になった。遅れて韓国がやってきた。日本同様、文化摩擦を恐れて、中国の延辺朝鮮族自治州の韓国系中国人の移入に努めている。それで全てうまくいくのか分からない」
真田幸光、「最近、韓国の特に民間企業の動きが変わってきている。人口の数は潜在的な労働者の数、潜在的な消費者の数。人口が多いということは潜在的な経済成長力を意味する。韓国の場合は人口が約5000万人。生産人口も減ってきているので内需が非常に厳しいので、外へ向かって売っていくのは今後も続けていくと思う。たとえば、イカゲーム。労働者が足りない問題については、人が人しかできないことはやって、あとは機械にやらせる形でデジタル化やIoT化に生かしていこうという動きが韓国では少しずつ見られ始めている」
真田幸光、「米国は世界の中心的な国としてグローバルルールを作って従わせることが力技でできる。典型的なのがローカルコンテンツ。米国国内で作った部品を使わないと米国国内で売らせないと言って、日本企業を米国に来させたりする。日本と韓国の間ではできない。韓国も米国にやられると、違うところに売れないかという努力をしっかりしている。日本がやらなかったのは内需が大きくて国内で生き延びていくことができた。韓国人はリスクを取って高いリターンを取りに行く」
鈴置高史、「韓国だけじゃなく中国、台湾もアニマルスピリットの塊。オーナー経営かどうかがある。オーナー経営だと自分が会社を拡大しておかないと5年後、10年後に息子に継げなくなる恐怖感がある。日本はサラリーマン経営だから4年間適当にやっておけば退職金をもらっていいじゃないかという発想」
●韓国「デジタル化」 急進の背景
2021年世界デジタル競争力ランキング
1位 米国、2位 香港、3位 スウェーデン、4位 デンマーク、5位 シンガポール、・・・12位 韓国(去年は8位)、15位 中国、28位 日本(去年は27位)。
鈴置高史、「1997年の通貨危機が大きかった。大量に失業が出て三星電子でさえクビを切った。韓国のKT(日本でいうNTT)が高速回線を始めた。日本で言うADSL。韓国のほうが完璧ではないがADSLが早かった。ここで新たな産業が急速に生まれた。数年後に日本も光ファイバーをやったが、そのときは韓国に水をあけられていた。ハードは3年か4年の遅れだがそれにまつわる企業の育ち方が違った。大事なのは国民の多くがデジタルを使うことに慣れた。政府も民間もバックアップして使いこなせる人を増やした」
真田幸光、「世界デジタル競争力ランキングを見ていると大きく2つに分けて国のグルーピングが出来る。倫理観を持ってデジタルの利便性を理解していて発展している国と、国が統制国家的、特に情報統制的な感覚を持ってデジタル化を強烈に進めていって順位が上がっている国に分けられる気がする」
韓国内では情報を政府に管理されることに反発は国民からなかったのか。
真田幸光、「最初はそれより利便性のほうが勝ったのでどんどん使い始めた。特に若い人たちが一気に使い始めたのが韓国の場合大きな影響力を見せた。スウェーデンやデンマークは国民に対してもきちんとした信頼性が高かった。政治での隠し事が起こっているとこれはなかなか改善しない。日本の今の政治の状況からするとすぐには改善しないのではないか」
鈴置高史、「韓国はIDカードが最初からあるし電話は全部盗聴されている。韓国は個人情報取られっぱなしに慣れている」
●「半導体」 韓国の勝因とリスク
半導体をめぐる“攻防戦”について。
日本と米国の誘致会社、用途、投資規模の一覧(TSMC、サムスン、自動車、家電スマートフォン)。
TSMC・・・世界的な半導体メーカーの台湾積体電路製造。日本に初めての工場をソニーグループと一緒に熊本県菊陽町につくる。
真田幸光、「TSMCは非常に付加価値の高いものは国内でやっていた。大量生産で付加価値のあまり高くないものは中国や色々なところにあるがコアにあるものは台湾から離さなかった。サプライチェーンを意識した流れの中で米国が強引にTSMCを持ってこさせてリスクヘッジするような動きを取った。大量生産のものは手を打たなかったので同盟国の日本にもたせるという形で動いてきたように思える。熊本も日本もメリットがあるが瞬間的に見るとあまりメリットが見えてこない危険がある。これだけの企業が熊本に出てくると中小企業から人が引き抜きにあって地元企業から見ると短期的に見ると人という問題でデメリットも出てくる危険がある」
鈴置高史、「米国にとってもTSMCのほうが信頼できてサムスンは信頼できないと思う。しかし米国は力があるのでいざとなったらサムスンを米国の会社にしろと言える。韓国は経済政策を考えていないというか極めて下手」
●半導体「周回遅れ」 日本の挽回策は
真田幸光、「サムスングループ経営トップの李・在鎔(イ・ジェヨン)の基本的な考え方からするとグローバル意識が強いと思う。ファミリーが人質に取られれば別だがそれさえ担保できれば韓国に根を張るというより世界を見ながらの経営に向かっていくと思う。彼の思考回路からすると米国のスタンダードが続くと理解していると思うので、米国の方に行く気がする」
【提言】 「日本が生き抜くための方策」
真田幸光 「義と夢のある民間投資」
賃金を上げるのも大事だが、企業の内部留保を公共投資よりも民間投資に回す。
鈴置高史 「正念場」
日本は明治維新から日清・日露と突き進んだ。同じような轍を踏まない。今が正念場だ。
真田と鈴置に聞きたい事、言いたい事
視聴者、「韓国や中国を否定的に批判するのではなく日本は自分を高めるために何をすべきか考えるべき。今の日本に最も欠けている物はなにか」
真田幸光、「投資。技術開発を含めてキャッシュフローを生むような投資をもっとすべき」
鈴置高史、「情勢の判断力」
視聴者、「韓国の経済成長が大きく取り上げられていたが、それではなぜ韓国の雇用情勢、特に若年層の失業率が改善されないのか」
鈴置高史、「就職のミスマッチで説明されている。もう1つは韓国はそんなに成長率が高いわけではない。それだけたくさん雇用吸収は出来ない」
視聴者、「韓国がTPP加入申請をした事に対する考えは」
真田幸光、「中国の影響が大きいと思う。対中包囲網で作られていたTPPで米国が抜けた。中国が入る可能性があるなら韓国もそれに乗って対米包囲網を使いたい。米国の勢いが戻ってくれば米国側に乗れば良い。韓国のTPP加盟は日本にとっては総じてあまりメリットはないと思う」
https://www.fnn.jp/subcategory/BS%E3%83%95%E3%82%B8LIVE%20%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9