じじぃの「科学・地球_229_不思議で美しいミクロの世界・ネコの舌」

Secrets of the feline tongue

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Nu3a6rn2HZM

Cat tongue surface, SEM

『不思議で美しいミクロの世界』

ジュリー・コカール/著、林良博/監修 世界文化社 2016年発行

おろし金のような構造 ネコの舌(Surface of a Cat's Tongue) より

●これは1枚の舌だろうか。それとも、たくさんの舌だろうか。ご覧の写真ではわかりづらいかもしれないが、小さな舌に見えるそれぞれが実はネコの味蕾(みらい)なのだ。嗅覚面と衛生面において、これはネコにとって必要不可欠の器官である。
味蕾の先端は、のどの奥に向かって後ろ向きに並んでいる。おろし金の歯のように骨から肉の小片をはがしたり喉が渇いているときに多くの水をすくいあげたりするのに適した構造だ。また、味蕾は優れた洗面道具でもある。被毛から抜け毛や寄生虫を取り除くための櫛(くし)の役割も果たすからだ。1日6~12回も体を手入れするネコにとっては、最適のツールだろう。
ネコの味蕾は主に舌の裏側についているので、事実上、食べ物を味わうための器官と異なる。しかし「味を楽しめない」という点に限れば、それは大きな問題ではないようだ。理由はネコが持つ秘密兵器、すなわち味覚が取って代わる第六感が握っている。ネコがしかめ面をするように歯を外に突き出すと、ヤコブソン器官とも言われる 鋤鼻(じょび)器官が働き、においを文字通り「味わう」ことができるのだ。そうすれば、獲物を噛み殺して食べる前から、その味を楽しめるわけだ。味蕾はイヌには1,700個、人間には1万個備わっているという。「味わう」ことができるのだ。そうすれば、獲物を噛み殺して食べる前から、その味を楽しめるわけだ。味蕾はイヌには1,700個、人間には1万個備わっているという。「味わう」行動にあまり活かされていないものの、どんな小さなネコにも最低473この味蕾がある。それは「おろし金」以外にも重宝されているからだろう。ところが、おろし金の働きをすることで名高いネコの舌にもライバルが存在する。ヤギの舌である。表面の粗いヤギの舌は、中世ヨーロッパでは拷問器具として用いられていたという。具体的には、罪人の足に塩を塗りたくり、ヤギに舐めさせる。くすぐりに耐えかねて笑い続けた末、罪人は精神的な消耗がピークに達し、しまいには白状してしまう、という方法だったようだ。