じじぃの「科学・地球_215_5000日後の世界・問いを考える」

スティーブ・ジョブズiPadプレゼンテーション (日本語字幕)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Y0aB7-ePupE
iPadをプレゼンテーションするスティーブ・ジョブズ

ジョブズが嫌ったあるMS社員 ―― そしてiPhoneは生まれた

Jun. 26, 2017 Business Insider Japan
iPhoneは、ユニークな視点や繊細な感受性から生まれたに違いない。
ある週末、決定的なことが起きた。彼が、MSのTablet PCは「コンピューティングの課題を解決した」とジョブズに言ったのだ。
現在のタブレットと同様にTablet PCは、Windowsで動作し、ノートPCより小型・軽量でタッチパネルを搭載していた。だがジョブズには気に入らない点があった。だから彼の言葉がジョブズを苛つかせたわけだが、Tablet PCはスタイラスペンでしか操作できなかったのだ。
「やつらはマヌケだ。スタイラスペンなんていらない。すぐなくなるし、直感的でない。指なら10本ある!」とジョブズは言ったという。
https://www.businessinsider.jp/post-34557

5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる

ケヴィン・ケリー(著)
『WIRED』誌創刊編集長として長年ハイテク業界を取材していたケヴィン・ケリー氏に言わせれば、今ほど新しいことを始めるチャンスにあふれている時代はない。
はじめに
第1章 百万人が協働する未来
第2章 進化するデジタル経済の現在地
第3章 すべての産業はテクノロジーで生まれ変わる
第4章 アジアの世紀とテック地政学
第5章 テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる
第6章 イノベーションと成功のジレンマ

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『5000日後の世界』

ケヴィン・ケリー/著、大野和基/インタビュー、服部桂/訳 NHK出版 2021年発行

第6章 イノベーションと成功のジレンマ より

成功すればするほど、人生の意義が見出せなくなりジレンマ

私は、『WIRED』の取材を通じて、シリコンバレーで成功した数多くの起業家に話を聞いてきました。その結論として、成功すればするほど、人は自分の存在の意義を見出せなると感じています。
成功に守られて現実から離れてしまうんですね。私は70年代にインドなどを旅していましたが、年配の旅行者に会うことがあり、彼らはお金もありガイドが付いてバスで移動していました。私は自由に過ごしていましたが、ツアー参加者は次の予定が決められているために時間が取れず、私のことを羨ましそうに見ていました。
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私はビル・ゲイツジェフ・ベゾスなどにも会ってきましたが、彼らはまだ成功の真っ最中で、この例には入りません。彼らは自分のことをよくわかっていて、そのせいで依然として成功しているのです。ビル・ゲイツはお金を稼ぐ人生から寄与する方向に転身しましたが、それは彼が自分自身や周りのことがよく見えているからです。業界のトップにいる時点で辞任しましたが、これは非常に難しい決断で、彼は例外と言っていいでしょうね。
スティーブ・ジョブズも、存命の頃は嫌われることが非常に得意で、いつでも嫌われていました。ジョブズのことを好きではない人は多く、彼はとても傲慢で失礼な人なんです。が、物事を押し進め、危険をものともせず、諦めずにやり続け、成功に囚われない。そのせいでいい人にはなれませんでしたが、ずっと成功し続けることができました。彼は自ら創業したアップルから、周囲に嫌われて追い出されましたが、その後またアップルに復帰しています。
私がイメージするのは、あまり有名ではない金持ちで、CEOになって成功していて、航空会社を経営しているような人たちです。誰とは言えませんが、成功者と思われているが、自分の人生や成功に非常に縛られている人で、サンフランシスコの不動産王みたいな、いくつもビルを所有しているような成功者です。
彼らを批判しようというつもりはありません。しかし、彼らは成功を捨てて何かまったく違うことはできないんです。自分を本当に知るには失敗しなくてはならないし、上手くいかないことを経験しなくてはならない。
科学とは失敗を基礎にしたもので、本当に進歩するためには上手くいかない実験をしなくてはなりません。イノベーションも失敗から生まれるのです。成功とは何かを知るためには何か上手くいかないものに挑戦しなければなりません。大木の人は成功すればするほど失敗するのがより難しくなり、それに抵抗してしまいます。同じことは私にもありました。私も成功するほど、失敗する見込みが高いチャレンジするのが難しくなり、我慢がきかなくなりました。

AI時代には「問いを考える」ことが人の仕事になる

今後は、「常に問い続ける」という一種の練習や習慣が、人間にとって最も基本的であり最も価値のある活動になっていくだろうと思います。すでに答えがわかっていることは機械に聞けばいい。人の価値があるとすれば、答えのわからない問いに対して、「こうだったらどうなのか」とか、「これはどうなんだろうか」と考え続けていくことです。
正しいことを問うていく、ということに価値が生まれます。それがイノベーションと呼ばれるものだし、探索やサイエンス、創造性だったりするわけです。人の仕事は問いを投げかける、そして不確実性を扱うというものになっていくと思います。
「問い」を考えるための私の思考法について簡単に説明しましょう。問いを投げかけるといっても、ディストピアを想像するようなやり方では、問題は解決できません。余談ですが、SFの映画などを見ると、もうすべてがディストピア世界を描いていますね。「地球上でああいう生活を将来送りたい」と夢を抱けるようなハリウッドSFの映画というのは一度も見たことはありません。
1つのやり方としてヒントになるものは、常識とされている、皆が当たり前だと思っていることに疑問を抱く、そしてそれを覆して考えてみるということです。ほとんどの場合、常識と呼ばれているものは正しいのですが、中にはやはり間違っているものも混ざっています。それを発見できれば、新たな洞察になります。ですから、常識に対して疑問を抱くという習慣を持つことが大事です。それが新たなストーリーや仮設を作っていくということにつながります。
1つの例としては、例えば「ムーアの法則」(1960年代に米インテル創業者が唱えた、「半導体の集積率は18ヵ月で2倍になる」という経験則)が突然止まってしまったらどうなるか、と考えてみる。ずっと続いていくものだと皆考えているが、もしムーアの法則が止まった場合には大きな変化が訪れることになるし、私が言ってきたようなことはほとんど実現しないということになります。その一方で、じゃあ、ムーアの法則がさらに加速したらどうだろうかと考えてみる。いまの20倍の速さになったらどうなるんだろうか。その場合は、毎年の変化が莫大にばるということですから、これはまったく異なるストーリーにつながっていくわけです。だから、こういう風に常識を覆して考えてみるということが、今後の未来を考えるときの非常に強力なヒントになると思います。
もう1つは、エビデンスを探すことです。未来のストーリーを考える際に、あるアイデアが浮かんだとしましょう。その後にすべきことは、具体的な裏付けを探すということです。関連する研究論文や証拠があるかどうかということを探していくわけです。もしあるのなら、さらにほかにも裏付けとなるエビデンスがあるかということを、どんどん探索していく。こうしてそのストーリーの裏付けを取りながら、本当の予測に作り上げていきます。また逆に、先ほど述べたように、ある事象が加速していった場合、例えばムーアの法則が20倍に加速した場合にはどうなのかという仮説であれば、それに関連するような裏付けがあるか、研究論文などをサーチするわけです。
未来を構想するプロセスの半分はその着想(アイデア)であり、その残りの半分というのはそれを実演していくためのエビデンス、やり方を探すということなのです。