じじぃの「科学・地球_202_新型コロナ本当の真実・新たな治療法」

【Q&A | 質疑応答】新型コロナウイルス変異株を無力化する中和抗体を10日間で作成する技術を国内で初めて開発~新たな変異ウイルスの拡大に備えた抗体医薬へ期待~

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Y7PaqugaIhI

新型コロナの人工抗体を10日で作製 変異株にも効果

新型コロナの人工抗体を10日で作製 変異株にも効果、広島大

2021.05.18 Science Portal
新型コロナウイルスに結合して感染を防ぐと期待される中和抗体を10日間で人工的に作り出す技術を開発した、と広島大学の研究グループが発表した。
感染力が強いと懸念される変異株に対する効果もあるという。今後の研究により人工抗体が量産できれば、重症化予防や重症患者向けの薬の開発につながると期待される。
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20210518_n01/index.html

新型コロナワクチン 本当の「真実」

宮坂昌之【著】
免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。
これ1冊読めば、ワクチンに対する疑問と不安がすべて解消する新型コロナワクチン本の決定版!
序文
プロローグ 新型コロナウイルスはただの風邪ではない
第1章 ワクチンは本当に効くのか?
第2章 ワクチンは本当に安全か?
第3章 ワクチンはなぜ効くのか?
第4章 ワクチン接種で将来不利益を被ることはないのか?
第5章 ワクチン接種で平穏な日常はいつ戻ってくるのか?
第6章 新型コロナウイルス情報リテラシー
第7章 「嫌ワクチン本」を検証する
第8章 新型コロナウイルス感染症の新たな治療法、そして未来

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『新型コロナワクチン 本当の「真実」』

宮坂昌之/著 講談社現代新書 2021年8月発行

第8章 新型コロナウイルス感染症の新たな治療法、そして未来 より

2020年に発生した新型コロナウイルスパンデミックから1年半、私たちは長らく不自由な生活を強いられてきました。外食や旅行、出頭、飲食を控えて、慣れないリモートワークとオンラインミーティングによる打ち合わせ、外出する際には必ずマスクを着け、「3密」を避けて、会話も極力控える。こうした努力にもかかわらず、感染はなかなか収まる気配がなく、次から次に誕生する変異ウイルスに、翻弄され続けています。
しかし、人類は、猛威を振るう新型コロナウイルスにやられっぱなしだったわけではありません。医療の世界では、まったくの手探りの状態から標準的な治療法を確立することで、パンデミック発生当初は5%台だった致死率が、2021年3月には2%を切るまでに改善しました。そして、発症予防効果的約95%という画期的なワクチンを1年足らずで開発し、全世界で、猛烈な勢いで接種を進めています。そして、発症予防だけではなく、強い感染予防効果と重症予防効果が確認され、”戦況”は大きく変わりつつあります。新型コロナウイルスとの闘いは、今後どのように進展していくのでしょうか。

ゼロから始まったCOVID-19治療薬の開発

日本国内で最初に承認されたCOVID-19治療薬は、レムデシビル、デキサメタゾン、バリシチニブですが、いずれも別の疾患の治療薬として開発されたものです。
世界第2位のバイオ製薬会社、米国のギリアド・サイエンシズ社のレムデシビルは、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬でした。1本鎖RNAウイルスの遺伝子の増幅とウイルスタンパク質の合成を阻害する効果があることから、同じく1本鎖RNAウイルスである新型コロナウイルスに対しても有効である可能性があったため、COVID-19向けの臨床試験が行われました。
米国立アレルギー・感染症研究所が主導したCOVID-19治療薬の臨床試験では、プラセボ(偽薬)との比較で入院患者の回復を5日間早める効果が認められて、世界約50ヵ国で承認または使用許可を取得しています。日本では2020年5月、重症患者を対象に厚生労働省が特例承認し、2021年1月には中等症の患者にも投与できるようになりました。レムデシビルはCOVID-19の特効薬として注目され、トランプ前米国大統領やジュリアーニニューヨーク市長ら要人の治療にも使われました。鳴り物入りで登場したのですが、治療効果は限定的で、残念ながら特効薬といえるほどの効果はあがっていないようです。2020年11月には世界保健機関(WHO)が、COVID-19患者に対する治療効果はないとして、症状の程度にかかわらず使用を推奨しないとの指針を発表し、これにギリアド社が反論するなどの騒動がありました。
このほかに、厚労省が許可した、デキサメタゾン、バリシチニブなどの2つの薬剤は、サイトカインストームなどの過剰な免疫応答を抑制することで重症化を防ぐ効果があります。新型コロナ感染を止める特効薬ではないのですが、重症化する前に使用することにより、重症化の程度が軽くなるとされています。
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COVID-19の重症化を止める治療薬として、アビガンやイベルメクチンが候補に挙げられています。いずれも日本人研究者が創薬した薬剤で、日本のメディアが期待を煽る記事を書いていますが、残念ながら十分な治療実績があがっていないようです。アビガン、イベルメクチンとも、二重盲検試験の結果がいまひとつのようで、許可基準をクリアできないのです。

治療薬にもようやくゲームチェンジャーが

既存薬は、新型コロナウイルスの治療を目的にして開発された薬剤ではないので、やはりその効果は限定的となるのはやむを得ません。それに対して、私が注目している治療薬は、最初から新型コロナウイルスを標的にしたヒトモノクローナル抗体(人工抗体)とよばれる製剤です。
新型コロナウイルスを中和できる善玉抗体を均一な形で人工的に作り、これを工業的なレベルで大量生産して、抗体製剤として投与し、重症化を予防しようというものです。
図を用いながら具体的な作り方を説明しましょう。まず、COVID-19の回復者の中から、中和抗体を多量を作っている人を探します。そして、この人の血液からB細胞を集め、さらに新型コロナウイルスに反応するB細胞だけを精製します。これらの細胞は、ウイルスを無力化する中和抗体を作っているはずなので、そこから抗体遺伝子をクローニングします。それを永久に増える力をもっている細胞へ導入し、導入遺伝子の産物である中和抗体を持続的に作らせます。
1回の試みで多数のモノクローナル抗体が取れてきますが、その中から、いわゆる善玉抗体、すなわち、ウイルスを中和する能力を持つものだけを選抜します。具体的には、培養細胞を用いた中和試験、感染動物を用いたウイルス中和試験の両方を用います。これらの試験を繰り返して、特にウイルスを中和する能力の高いエリート抗体を選び出し、それを抗体製剤として大量生産して、感染者に投与するのです。
感染や発症するリスクを激減させるワクチンはいわば予防薬ですが、これに対して、モノクローナル抗体は主に重症化を予防する治療薬として使われます。もし確実に重症化が防げるようになれば、新型コロナウイルスの脅威は大幅に低下します。
新型コロナウイルス感染症が恐ろしいのは、高齢者では重症化リスクが高く、一度発症すると、なかなか回復せずに長期間にわたって入院し、医療資源を占有し続けることです。モノクローナル抗体によって、新型コロナウイルス感染症を発症してもすぐに治る病気になれば、そのリスクは激減します。
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もう1つ、モノクローナル抗体のメリットは、たとえウイルスが変異をしたとしても、変異をしていない部分に反応する抗体を作り、それを複数混ぜて使えば、変異株でも不活性化できるというメリットがあることです。つまり、変異株が出たとしても、人工抗体を数種類、カクテルとして混ぜて使うことにより、長期にわたって使用し続けることができます。