じじぃの「科学・地球_197_新型コロナ本当の真実・ワクチンはなぜ効くのか」

【高校講座 生物基礎】第34講「獲得免疫」

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xjLfawELQVQ

獲得免疫の記憶

(macrophi.co.jp HPより)

免疫における記憶細胞とは?免疫記憶とそれにかかわる細胞を詳しく解説!

やさしいLPS
●獲得免疫の記憶
キラーT細胞や、病原体と結合して取り除くように働く抗体を作るB細胞は、体内に異物が入ってくると攻撃をします。そして、異物を排除した後は、多くの細胞は死んでしまうのですが、一部のT細胞やB細胞は、リンパ節などに記憶細胞(メモリーB細胞やメモリーT細胞)として生き続けるのです。
これらの細胞は前回の感染の記憶を持っているため、同じ病原体に再び感染した場合には、すぐに免疫細胞に変身して多くの抗体を作り出し、異物を効率よく迅速にやっつけることができます。
https://www.macrophi.co.jp/special/1595/

アジュバントとは

アジュバント(Adjuvant)とは、ラテン語の「助ける」という意味をもつ 'adjuvare' という言葉を語源に持ち、ワクチンと一緒に投与して、その効果(免疫原性)を高めるために使用される物質のことです。
あくまでもワクチンの効き目を高めるためのものなので、アジュバントだけを投与してもワクチン効果は得られません。
抗原の一部の成分を精製して接種するワクチンは一般的に効き目が弱いのでアジュバントの添加が必要です。
●現在ワクチンに使用されているアジュバント
アジュバントとして最もよく知られているものはアルミニウム塩です。1932年にジフテリアワクチンに用いられてから、これまでに百日咳、破傷風ヒトパピローマウイルス(HPV)、肺炎球菌(PCV13)、B型肝炎など多くのワクチンに使用されております。
https://www.nibiohn.go.jp/CVAR/adjuvant.html

新型コロナワクチン 本当の「真実」

宮坂昌之【著】
免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。
これ1冊読めば、ワクチンに対する疑問と不安がすべて解消する新型コロナワクチン本の決定版!
序文
プロローグ 新型コロナウイルスはただの風邪ではない
第1章 ワクチンは本当に効くのか?
第2章 ワクチンは本当に安全か?
第3章 ワクチンはなぜ効くのか?
第4章 ワクチン接種で将来不利益を被ることはないのか?
第5章 ワクチン接種で平穏な日常はいつ戻ってくるのか?
第6章 新型コロナウイルス情報リテラシー
第7章 「嫌ワクチン本」を検証する
第8章 新型コロナウイルス感染症の新たな治療法、そして未来

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『新型コロナワクチン 本当の「真実」』

宮坂昌之/著 講談社現代新書 2021年8月発行

第3章 ワクチンはなぜ効くのか? より

ワクチンは、私たちのからだに備わっている「免疫」のしくみを利用した医薬品です。服用した直後の限られた時間しかない効かない通常の抗ウイルス薬などとは違って、ワクチンは、多くの場合、複数回接種することにより長期にわたって、感染や発症を予防したり、重症化や死亡するリスクを下げてくれます。なぜ、ワクチンはこのような長期的な効果を持ちうるのでしょうか。本章では、ワクチンが働くしくみとそれを支える免疫反応について説明します。

リンパ球と二度なしの原理(免疫記憶)

通常、抗原が初めて入ってきてから十分な抗体量ができるまでには数日かかります。体内にはウイルスに反応できるリンパ球は存在しているのですが、その数が初めは少ないために、それが病原体を追い出すのに十分な数まで増えるのに一定の時間が必要です。だから風邪をひくと、治るまでに数日かかるのです。これは新型コロナウイルス感染症でも同様です。ちなみに初めての免疫反応のことを一次免疫応答といいます。
しかし、二度目の抗原侵入のときは、前に反応したリンパ球が一部残っているので、この状況は大きく変わり、反応できるリンパ球は急激に増えるようになります。しかも増えたリンパ球は前に自分が反応した相手を覚えています。したがって、ウイルスが一度目に感染したときには、多くの場合、うまく防御できずに病気を発症しますが、これが治って、二度目に同じウイルスが入ってきたときには、からだが準備状態となっているので、あっという間に免疫反応(二次免疫応答)が起こり、抗体ができ、キラーT細胞が働きます(図.画像参照)。
したがって、二度目の感染の際には、症状が出る前にウイルスが排除されるか、あるいは症状が出ても軽くすむということになります。これが「免疫記憶」とよばれる現象です。
ワクチン接種は、実際に病原体に感染することなく、自らの免疫系に「免疫記憶」を植え付けます。新型コロナワクチンも、一度から二度の接種だけで一定期間その効果を維持できるのも、この「免疫記憶」が誘導されて、さらにそれが維持されるからです。
ワクチンは、通常、複数回接種しますが、それはその過程でワクチンに対応する抗原に反応する特異的なリンパ球が増殖して、その数が大きく増加するようになるからです。このときに二度・リンパ球(記憶リンパ球)という細胞が増えてきます。メモリー・リンパ球は、特定の抗原に出会ったことを覚えているリンパ球です。普通のリンパ球は、抗原に反応して増殖し始めるのには1日程度の時間的な遅れがあり。しかも一定数になるまで時間がかかりますが、メモリー・リンパ球は、然るべき抗原(自分の抗原レセプターに結合する抗原)、たとえば新型コロナワクチンであれば、新型コロナウイルスの抗原に出会うとあっという間に増殖を始めます。Bリンパ球のメモリー・リンパ球であれば抗体をたくさん作り、Tリンパ球のメモリー・リンパ球であればウイルスに感染した細胞をただちに攻撃します。
つまり、メモリー・リンパ球ができていると、抗原が入ってきてからの反応が非常に早くなり、一度感染症にかかると再び同じ感染症にはかからない(あるいはかかりにくい)という免疫の最大の利点「二度なし」の現象が見られるようになるのです。

新型コロナワクチンにはアジュバントは使用されていない

実は、現在、日本で接種が進められているファイザー社やモデルナ社の新型コロナワクチンには、アジュバントは添加させていません。にもかかわらず、95%近い有効率が出ている背景には、mRNAワクチンの有効成分であるmRNA自体やmRNAを含む脂質膜がアジュバントとして働いて自然免疫系を活性化する可能性を指摘する研究者もいます。
一方でこうした考えに否定的な研究者もいます。mRNAワクチンの高い有効率は、ウイルス抗原であるスパイクタンパク質を効率よく生み出していることによるとの考えです、ウイルス由来のmRNAは、ヒトの自然免疫によって排除さrないように、その構成成分であるウリジンをN1-メチルシュードウリジンという似て非なるものに置換されています。このためにmRNAの翻訳効率が高くなり、効率的にスパイクタンパク質が作られ、その結果、強い抗原刺激が起きていると考えられています。私も、mRNA自体がアジュバントとして機能していることはなく、むしろ脂質膜のようなmRNA以外のものがアジュバント活性を持っている可能性があると考えています。

ウイルスを殺すのは必ずしも抗体とは限らない。

新型コロナウイルスを不活性化するメカニズムにはかなりの個人差があるようです。これまでは一般化に、獲得免疫系のB細胞が作る抗体がウイルスを不活性化する、あるいは殺すと考えられてきました。このような応対はウイルスの作用を中和することから、中和抗体とよばれています。ところが、自然免疫がしっかりしていれば食細胞がウイルスを食べて不活性し、排除します。つまり、さらされるウイルスの量が一定以下であれば、「中和抗体」など使わずとも、自然免疫だけで対処できます。しかし、ウイルスの量が多くなったら自然免疫だけでは防げず、その場合には、獲得免疫の出番となります。
獲得免疫が動き出すと、多くの人は中和抗体をつくるのですが、なかには中和抗体がほとんどできないまま感染から回復してしまう人がいるようです。さらに、先天的にもB細胞が欠損しているために抗体をつくることができない人でも新型コロナウイルス感染から無事に回復できるようです。このようなことから、われわれのからだには抗体に依存せずにウイルスを排除するメカニズムが存在することがわかります。
主なものは、キラーT細胞による感染細胞の排除です。新型コロナウイルスに対する中和抗体は、細胞の外にいるウイルスに結合して不活性化し、排除しますが、細胞の中に入ることができないので(=分子量が大きいので細胞内には入れない)、細胞内で増えているウイルスには働くことができません。それに対処するのがキラーT細胞です。
新型コロナウイルスが自然免疫を乗り越えて、獲得免疫の「本丸」にまで侵入してくると、最初にコロナ反応性のヘルパーT細胞が活性化して、その数が増えます。この際には、通常、ヘルパーT細胞はB細胞を刺激して抗体を作らせるのですが、人によってはキラーT細胞のほうを選択的に活性化して、キラーT細胞がウイルス感染細胞を見つけ出して殺すということが起きているようです。このような場合には、抗体ではなくてキラーT細胞がウイルス排除に働くということになります。実際にこのような人がどのくらいの割合で存在するのか興味がありますが、まだ良い報告がありません。今のところ、T細胞だけでウイルスを排除する人、T細胞と抗体のコンビネーションでウイルスを排除する人、抗体だけでウイルスを排除する人の割合は不明です。いずれにせよ、ウイルスを排除するメカニズムは抗体だけでなく、自然免疫もT細胞も重要です。