ビートたけしのTVタックル 「日常生活を取り戻すための方法とは? 徹底討論SP」
2020年9月13日 テレビ朝日
そのライブを監修した京都大学の宮沢孝幸准教授をスタジオに迎え、検証実験の意義や是非を徹底討論!!
https://www.tv-asahi.co.jp/tvtackle/backnumber/0330/
新型コロナワクチン 本当の「真実」
宮坂昌之【著】
免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。
これ1冊読めば、ワクチンに対する疑問と不安がすべて解消する新型コロナワクチン本の決定版!
序文
プロローグ 新型コロナウイルスはただの風邪ではない
第1章 ワクチンは本当に効くのか?
第2章 ワクチンは本当に安全か?
第3章 ワクチンはなぜ効くのか?
第4章 ワクチン接種で将来不利益を被ることはないのか?
第5章 ワクチン接種で平穏な日常はいつ戻ってくるのか?
第6章 新型コロナウイルスの情報リテラシー
第7章 「嫌ワクチン本」を検証する
第8章 新型コロナウイルス感染症の新たな治療法、そして未来
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『新型コロナワクチン 本当の「真実」』
宮坂昌之/著 講談社現代新書 2021年8月発行
第6章 新型コロナウイルスの情報リテラシー より
新型コロナウイルスによるパンデミックが発生してから、かれこれ1年半が経ちました。この間、新聞やテレビ、週刊誌、インターネットでは、さまざまな観点からの報道が行われました。その内容は、まさに諸説紛々、玉石混淆とよべるものでした。
「有効な対策をとらないと、日本人の約6割が感染して約42万人が死亡する」のような極端な悲観論から「日本人の大半は新型コロナウイルスに感染済み。集団免疫は確立している」「コロナは単なる風邪で、マスクなんて不要」のような荒唐無稽な楽観論まで振れ幅がとても大きく、国民は、感染者数の浮き沈みに合わせて、報道に一喜一憂してきました。新型コロナウイルスワクチンの接種が進み始めた2021年になると、ワクチンの副反応の恐怖を煽り立てる「嫌ワクチン本」がベストセラーになるなど、相変わらず極端な言説が流布しています。
科学的エビデンスに乏しい情報に惑わされると、新型コロナウイルスに感染するリスクを高める行動をとったり、平穏な日常生活が遅れないほどの不安感や焦燥感に苛まれたりする恐れがあります。新型コロナウイルスが恐ろしいのは、感染力や病原性のみならず、人の心理ににも深刻なダメージを与える点です。そこで、本章では、誤った情報に惑わされないための「新型コロナウイルスの情報リテラシー」について考えてみます。
「コロナ・コメンテーター」の真贋
でも、問題は、制作者側の情報リテラシーだけではないようです。テレビのニュース番組やワイドショーに登場する「専門家」の中にも、かなり偏った意見の持ち主であったり、医学的な基本知識に欠ける方も登場します。こうした「専門家」の方々は、有名国立大学の現役教員だったり、研究機関の在職経験のある方だったりするので、肩書きだけで判断するのは難しく、コメンテーターの真贋を見抜くのは容易なことではありません。
具体的な例を挙げましょう。2021年1月17日放送の読売テレビ『そこまで言って委員会NP』に登場した京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸氏が以下のような発言をされました。
《「まず最初に、断んなきゃいけないんですけど、そもそもワクチン効くんですかね?」》と呼びかけたうえで次のように語りました。
《「(発症予防効果が)95%とか言っているけれども、ちょっとありえない数字なんですね。呼吸器感染症ってワクチンなかなか作れないんですよ。インフルエンザもあるにはあるんですけど、そんなに効いているわけじゃないと」「理論的に考えてもですね。現行のワクチン、筋肉に注射するタイプのワクチンが呼吸器感染症に効くというのは、ちょっと合理的じゃないんですよ。たとえば、腎臓とか肝臓に感染するウイルスがあったとして、それがどこから入るが、腎臓や肝臓へ直接いくわけではなくて、粘膜から入ってくる。粘膜から入って、血中を流れて、腎臓とか肝臓に到達するんですよ」
「その場合は血中に存在する抗体がブロックしますよね。ところが、呼吸器感染症というのはあくまで肺に直接きちゃうんですよ。その場合、直接かかってしまうので、肺に。血液中の抗体が効くのはおかしいんですよね」》
宮沢氏は呼吸器感染症では肺がウイルスに感染するが、筋肉内注射で注射する抗体は血中で作用するため、効果がないとした(この問題を報じた、BuzzFeed Japan 2021年2月11日記事を引用)。
一般の方が、この番組を見ると、筋肉注射する新型コロナ感染症のmRNAワクチンが効かないように思ってしまうかもしれません。しかし、これは、ひどい間違いです。筋肉注射だからといって、呼吸器感染症に効かないことはありません。確かに、インフルエンザワクチンで以前にこのようなことが言われたのですが、現在、新型コロナワクチンの集団接種で使われているファイザー製とモデルナ製のmRNAワクチンに関しては、話はまったく別といっていいでしょう。2つとも筋肉注射するタイプのワクチンですが、第1章で説明したとおり、両ワクチンとも発症予防効果が約95%というきわめて高い有効率を示しています。インフルエンザワクチンの有効率は低くて30%台、高くても60%ぐらいですから、それとは比較にならない高い数字です。
そもそも、宮沢氏の言っている説明は免疫学的な見地からみても間違っています。mRNAワクチンの場合、筋肉注射であってもウイルスの働きを抑える抗体が体内で十分にできています。そして、血中のみならず、その一部は肺にも入り、肺の内腔でも働きます。もう少し詳しく説明しましょう。
一般に、ウイルスが体内に侵入してウイルスに対する特異的なIgG抗体ができると、血液を介して全身をめぐり、侵入してきたウイルスの排除に働きます。一方、IgA抗体は、主に粘膜表面に分布して、粘膜の局所でのウイルス防御に働きます。IgA抗体は最初、血中や粘膜下面で作られるのですが、時間とともに粘膜表面に移行します。
この点、今回のファイザー製、モデルナ製のワクチンはともに非常な「優れもの」で筋肉注射により、接種を受けた人の血中には、時間経過とともに新型コロナウイルスに対するIgG抗体とIgA抗体の両方が増加します。そして、IgG抗体とIgA抗体の一部は、粘膜にも移行するので、粘膜面での免疫反応も強化されます。このために、mRNAワクチンは強い感染予防効果を持つだけでなく重症化予防効果も非常に優れているのです。重症化というのは、体内でのウイルスが急速に増えたことをきっかけとして始まるので、ウイルス感染を未然に防げば、重症化は起こりません。万が一、ウイルスが体内に侵入しても、ワクチンが作った免疫が十分に働けば、ウイルスはそれ以上は増えることができず、結果として重症化が起こらなくなります。つまり、mRNAワクチンは筋肉注射でありながら、感染予防も重症化予防もします。
宮沢准教授は、他にも「口呼吸でウイルスを吸い込むと肺にまで届き、そこでは防御できないので、ウイルスにかかりやすくなる」みたいなことを言っておられますが、それも完全に間違いです。口呼吸であろうが、鼻呼吸であろうが、ウイルスは気道内に入ってきます。入ってきたウイルスが一定数以下であれば気道中の粘液がウイルスを補足し、ウイルスを物理的に押し流し、排除してしまいます。その際に、粘液中に含まれるIgA抗体がウイルスに結合して捕捉・排除に大事な役割を果たします。ウイルスを直接殺すのではなくて、ウイルスに結合して流し去ってしまうのです。さらに、ワクチン接種をすると、血中で増えた、IgGやIgAの一部が気道内腔の粘膜表面に移行して局所濃度が高くなり、病原体を補足する働きが強くなります。
また、万が一、ウイルスが粘着層を通り抜けてしまっても、気道の粘膜下層には食細胞であるマクロファージがたくさん存在するので、ウイルスを食べてくれます。さらに、mRNAワクチンはこれらの細胞の働きも強化してくれます。
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また、最近、宮沢氏は、あるイベントで、女性がワクチンを接種すると卵巣炎になったり、妊娠女性の場合には流産する可能性があると発言して、物儀を醸しています。
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宮沢氏自身が認めているように、これまでの疫学データでは、妊娠女性のワクチン接種者と非接種者の間では、流産率の変化はありません。また、ワクチン接種の妊娠、分娩、胎児形成に対する影響を調べるラットの実験が行われていますが、体重当たりヒトの場合の約300倍のワクチンを接種していますが、それでも妊娠ラットの卵巣にも子宮にも組織像の異常は見られず、流産も胎児の異常も見られていません。
ワクチン接種はノーリスクではありませんから、妊娠した女性に対するワクチン接種の影響については今後も慎重に監視していかねばなりません。しかし、ワクチン接種の妊娠への悪影響を示唆する科学的エビデンスを何ら提示することなく、免疫学的な裏付けのない仮説を頼りにして、ワクチンを接種すると8000件の流産が起きて、人口が8000人も減少すると一般の方を脅かすのはおよそ科学者として正しい姿勢とは思えません。