じじぃの「科学・地球_199_新型コロナ本当の真実・ワクチン接種で感染は収束するのか」

イスラエルで3回目のワクチン接種 デルタ株に対応 (2021年8月2日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=WuyA_tmnKbI

ワクチン・パスポートに関する海外での議論

2021年4月4日 Yahoo!ニュース
イスラエルやイギリスなど、ワクチン接種が進む地域では新型コロナの新規感染者数が大きく減少しています。
こうした中、世界各国でワクチン・パスポートが議論されています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210404-00230889

新型コロナワクチン 本当の「真実」

宮坂昌之【著】
免疫学の第一人者として絶大な信頼を得ている著者が、最新の科学的エビデンスをもとに新型コロナワクチンの有効性と安全性を徹底分析。
これ1冊読めば、ワクチンに対する疑問と不安がすべて解消する新型コロナワクチン本の決定版!
序文
プロローグ 新型コロナウイルスはただの風邪ではない
第1章 ワクチンは本当に効くのか?
第2章 ワクチンは本当に安全か?
第3章 ワクチンはなぜ効くのか?
第4章 ワクチン接種で将来不利益を被ることはないのか?
第5章 ワクチン接種で平穏な日常はいつ戻ってくるのか?
第6章 新型コロナウイルス情報リテラシー
第7章 「嫌ワクチン本」を検証する
第8章 新型コロナウイルス感染症の新たな治療法、そして未来

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『新型コロナワクチン 本当の「真実」』

宮坂昌之/著 講談社現代新書 2021年8月発行

第5章 ワクチン接種で平穏な日常はいつ戻ってくるのか? より

2020年1月15日、神奈川県に住む30代の中国籍の男性が、日本国内で初めて新型コロナウイルスに感染していたことが確認されました。以来、感染者は増加の一途をたどり、2021年7月26日時点で87万人以上が感染して、すでに1万5129人が亡くなりました。
国民の生活も大きな影響を受けています。2020年4月7日、7都道府県に緊急事態宣言が発令されたのを皮切りに、2021年7月までに東京では合計4回の非常事態宣言が発令されました。飲食店の営業時間の短縮、酒類の提供制限、企業のリモートワークの推奨、不特定多数での飲食・会合の制限など、国民は長らく自粛生活を強いられています。はたして、このような生活をいつまで続けなければいけないのでしょうか。

ワクチンはデルタ変異株に対しても有効

第1章で説明したとおり、新型コロナワクチンは、こうした変異株(英国由来の「アルファ株」、インド由来の「デルタ株」など)にも有効であることはわかっています。先にイスラエルのデータを紹介しましたが、その他にも前述の医学誌『Lancet』の論文によると、ファイザー製のmRNAワクチンを2回接種した場合の、デルタ変異株に対する感染抑制効果は79%もあるそうです。これはアルファ変異型に対する92%の効果と比べると少し低いものの、きわめて高い有効率です。

集団免疫はいつ成立するのか?

ワクチン接種が進むことで、感染が収束方向に進むとして、それにはいったいどの程度の時間がかかるのでしょうか。参考になるのが集団免疫という考えです。集団免疫とは、特定の集団が感染症にかかるか、あるいはワクチン接種をすることにより、多くの人が免疫を獲得し、それもより集団全体が感染症から守られるようになる現象のことです。集団の中で免疫を持っている人が一定割合以上いると、感染するのは一部の人に限られ、集団の大部分には感染が広がりません。あたかも集団全体に免疫状態ができあがっていて、特定の感染症から守られているように見えることから、集団免疫とよばれるのです。
社会が集団免疫を獲得するためには、その社会の中に一定以上の割合で免疫保有者が存在することが必要です。この最低限の割合のことを「集団免疫閾値」といいます(閾値とは、一定の反応を起こさせるために必要な最小値のことです)。この値は感染症ごとに異なります。それは感染症によって感染力が異なるからです。
「集団免疫閾値」のことを理解する際に大事なのが、個々の感染症の感染の強さを表す「基本再生産数」R0です。R0とは、1人の感染者がまわりの免疫のない人のうち何人に感染させうるのかを示す数字です。R0 > 1であれば、感染が拡大します。たとえば、感染力が非常に強い麻しん(はしか)ではR0は12~18です。感染者が1人出ると、その人だけで、周囲の12人から18人に感染を広げてしまうのです。一方、もしR0 < 1であれば、流行は広がりません。R0 = 1であればでは、流行は拡大も縮小もしません。
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イスラエルでは2020年12月中旬からアルファ変異株が猛威を振るい、感染者が急増しました。12月末頃からファイザーのmRNAワクチンの1回目の接種が始まりました。当初は感染者が減らず、ロックダウンを導入したものの、それでも事態は改善しませんでした。ところがワクチンの2回目の接種が始まって約2週間後から感染者の増加が頭打ちとなり、やがて急激に減少し始めました。
ワクチンの接種率が約6割の時点(4月11日)で、1日当たりの新規感染者数は122名。これはピークだった2021年1月20日の1万213名のほぼ80分の1です。これは、ワクチン接種が感染拡大を食い止めて、新規感染者数の急速な減少をもたらしているのに他なりません。
また、この図には示してありませんが、イスラエルではワクチン接種者に広くPCR検査を行っています。その結果、2回接種後には陽性者が摂取者の1%以下に減っていることがわかっています。すなわち、ワクチンの2回接種により感染者が激減し、一部感染者が出ても入院するほどの症状を示す人が大きく減り、結果として死者も大きく減っているのです。これこそが、社会の中に集団免疫ができつつある状態です。
ただし、基本再生産数や集団免疫閾値は参考にはなるものの、これを絶対視すべきものではありません。この集団免疫の考えを導き出した古典的な公衆衛生学では、「社会派均一な人たちから構成されている」「人々の免疫力は同一である」「感染症は社会の中で誰にでも公平にかかる」などなど、さまざまな仮定をしていますが、現実はそうではありません。社会を構成する人は不均一です。人々の「免疫力」が同一であることなどありません。感染症は、社会のいわゆる弱者が先にかかっていき、強い人が残っていきます。これに加えて、最近は次々に感染力の高い変異株が登場しており、基本再生産数がそのたびに大きく変わり、それに連動して集団免疫閾値も簡単に変わることになります。したがって集団免疫閾値にあまりこだわることなく、ともかくは粛々ワクチン接種を進めていくことが大事です。