じじぃの「科学・地球_165_サイトカインとは何か・慢性炎症といろいろな病気」

進化免疫11回の1サイトカイン edit

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PfO0myeV-6I

炎症が起こる仕組みとは

炎症を巧妙にストップする2つの「ブレーキ」

2015年10月16日 京都大学 ウイルス研究所 竹内理 教授
●炎症が起こる仕組みとは
竹内教授がいま注目し、研究の中心テーマとしているのが、「自然免疫における“炎症”の制御機構」である。
炎症といえば、病気にかかったときに発熱したり、皮膚炎などにかかったときに、傷口が化膿して赤く腫れ上がる様子をイメージする。その他にも炎症は痛みを発生させるなど、不快な症状を起こすがゆえに、治療においては抗生物質や消炎剤で抑えることも多い。しかし炎症の実体は、病気や感染症の原因であるウイルスや細菌を殺すため、免疫機構が起こす極めて重要な防御反応である。
http://shochou-kaigi.org/interview/interview_05/

免疫と「病」の科学 万病のもと

宮坂昌之、定岡恵(著)
第1章 慢性炎症は万病のもと
第2章 炎症を起こす役者たち
第3章 慢性炎症はなぜ起こる?
第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気
第5章 最新免疫研究が教える効果的な治療法
第6章 慢性炎症は予防できるのか?

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『免疫と「病」の科学 万病のもと 「慢性炎症」とは何か』

宮坂昌之、定岡恵/著 ブルーバックス 2018年発行

第1章 慢性炎症は万病のもと より

慢性炎症はなぜ悪い?

炎症が続くと、何が困るのしょう? ひとつは、炎症の悪影響が局所にとどまらずに全身に広がっていくことです。これが「慢性炎症が万病のもと」となることにおおいに関係します。もうひとつは、炎症を起こしている組織の性状や形態が次第に変わり、ついにはその組織の機能が低下してくることです。

まず、炎症が局所で起こるのに、その影響が次第に全身に及ぶというのはどういうことでしょう? それは、炎症という刺激により炎症性サイトカインと総称される何種類ものタンパク質が炎症組織で作られ、全身に広がっていき、離れた細胞にもその影響が伝わるからです。

慢性炎症と関わりの深いもろもろの病気とは?

前にも少し触れましたが、慢性炎症と関わりの深い病気は本当にたくさんあります。「慢性炎症は万病のもと」といわれるゆえんです。皆さんがよくご存じのほとんどの病気の根底には慢性炎症があります。動脈硬化血栓、梗塞、糖尿病、肝硬変、アトピー性皮膚炎、喘息、関節リュウマチクローン病潰瘍性大腸炎アルツハイマー病、多発性硬化症と、挙げてみたらきりがないほどです。さらには種々のがんまで慢性炎症によって起こりやすくなります。これは大変なことです。
こうなると、慢性炎症がどうして万病のもととなるのか、知りたくなりませんか? そして、慢性炎症はどうしたら妨げるのか、治療薬があるのか、知りたいとは思いませんか?
第2章ではもう少し炎症について説明し、そのあと、なぜ炎症が慢性化をするのかについて考えてみたいと思います。

註1

インターロイキン(IL)はサイトカインの一種です。当初、白血球(leukocyte)が作る液性因子で白血球同士(inter-)のコミュニケーションを司るもの、とう意味でこの名前がつけられました。その後、多くのインターロイキンが見つかり、現在ではIL-1~IL-39まで約40種類も知られています。中には白血球以外の細胞によって作られるものもあります。役割は互いに異なりますが、主に免疫系の細胞の増殖・分化・活性化・細胞死の制御に関わります。

註2

インターフェロン(IFN)もサイトカインの一種です。当初、ウイルスの増殖を干渉(interfere)する分子として同定され、そのためにinterferonという名称がつけられました。ヒトではIFN-α、IFN-β、IFN-γの3つのものがよく知られています。そのうちIFN-α、IFN-βはI型インターフェロンとよばれ、ウイルス感染により作られ、ウイルスの増殖を抑制します。IFN-γはⅡ型インターフェロンの分類され、活性化したTリンパ球により作られ、免疫細胞の働きを調節する作用を持ちます。インターフェロンも機能的にはインターロイキンといってもいいのですが、IL-……の番号を持ったインターロイキンより前に見つかったため、インターロイキンとは区別されて分類されています。これはTNF-αも同様です。インターロイキンの命名法ができる前に発見されているので、IL-……の番号がついていません。