じじぃの「科学・地球_164_サイトカインとは何か・慢性炎症は万病のもと」

慢性炎症とは?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=k5ClomD8sJk

慢性炎症は万病のもと


クラリベイトがノーベル賞有力候補16名を発表、日本からは3名が受賞

2021/09/22 TECH+
選出された3名の日本人のうち、2名が医学・生理学部門での受賞となり、「インターロイキン-6(IL-6)の発見とその生理的・病理的作用機序の解明により、医薬品の開発に貢献した功績」として大阪大学 免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三 教授と量子科学技術研究開発機構の平野俊夫 理事長(大阪大学 名誉教授)が表彰された。
また、化学部門から「金属触媒を用いたリビングラジカル重合の発見と開発」の功績で、中部大学 先端研究センターの澤本光男 教授(京都大学 名誉教授)が受賞者として選出された。
https://news.mynavi.jp/article/20210922-1979486/

慢性炎症は万病のもと?

高橋医院
慢性炎症が、脳、肺、肝臓、膵臓動脈硬化にいたるまでさまざまな臓器で起こる病気の発症・進展に関与しているということは慢性炎症が生じるなんらかの共通のメカニズムが存在しているということです。
それは、どんなメカニズムなのでしょう?
https://hatchobori.jp/blog/12679

免疫と「病」の科学 万病のもと

宮坂昌之、定岡恵(著)
第1章 慢性炎症は万病のもと
第2章 炎症を起こす役者たち
第3章 慢性炎症はなぜ起こる?
第4章 慢性炎症が引き起こすさまざまな病気
第5章 最新免疫研究が教える効果的な治療法
第6章 慢性炎症は予防できるのか?

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『免疫と「病」の科学 万病のもと 「慢性炎症」とは何か』

宮坂昌之、定岡恵/著 ブルーバックス 2018年発行

第1章 慢性炎症は万病のもと より

炎症とは? ――異物排除のための正常な防御反応のはずでは?
私たちの皮膚に切り傷やできものができると、組織が赤くなり、腫れて熱を持ち、痛むようになりますよね。これが炎症という現象です。
炎症もことを英語でインフラメーション(inframation)といいますが、おこれはラテン語のインフラマーレ(inframmare:火をつける)に語源があり、炎症という現象がからだの中の火事あるいは疼痛(とうつう)で、ここからも炎症が炎のような感じであることがわかります。

慢性炎症はなぜ悪い?

炎症が続くと、何が困るのしょう? ひとつは、炎症の悪影響が局所にとどまらずに全身に広がっていくことです。これが「慢性炎症が万病のもと」となることにおおいに関係します。もうひとつは、炎症を起こしている組織の性状や形態が次第に変わり、ついにはその組織の機能が低下してくることです。

まず、炎症が局所で起こるのに、その影響が次第に全身に及ぶというのはどういうことでしょう? それは、炎症という刺激により炎症性サイトカインと総称される何種類ものタンパク質が炎症組織で作られ、全身に広がっていき、離れた細胞にもその影響が伝わるからです。

サイトカインは、細胞同士が互いにシグナルをやりとりするときに使う一群のタンパク質で、細胞から放出されて相手の細胞膜の上にあるレセプター(=受容体タンパク質)に結合し、たとえば、さあ動きなさいとか、分裂しなさいとか、何かを分泌しなさいとか、相手の細胞にシグナルを伝えます。サイトカインが鍵、サイトカインレセプターが鍵穴の関係で、サイトカインレセプターの下流にはシグナル伝達経路(シグナルを伝える道筋)というものがあります。鍵と鍵穴の形がきっちりと合うと、シグナル伝達経路が活性化されて道が開かれ、細胞内部にシグナルが伝達されます。これが細胞から放出されたサイトカインによるシグナルが相手の細胞の内部へと伝わる仕組みです。
サイトカインは何十種類もありますが、特に炎症時に作られるものは炎症性サイトカインと呼ばれます。よく知られているものにTNF-αインターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1(IL-1)などがあります。また、抗ウイルス作用を持つサイトカインであるI型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)も炎症時に作られます。
一般にこれらのサイトカインは、からだに異物が侵入してきた際の警報役として機能します。正常時にはほとんど作られていないが、微量しか作られていません。ところが、異物の侵入とともにサイトカイン産生が始まり、細胞外に放出され、それが適量のときにはまわりの細胞に警報を発して細胞の感受性を高め、異物侵入に対するための準備をさせます。
一方、炎症性刺激が強すぎたときや持続的に存在するときには炎症性サイトカインが作られすぎてしまい、そのために警報以上の役割をして、かえって炎症の火の手を強めるようなことになるのです。炎症性サイトカインは、血管に働いて血管の透明性を高める(白血病が通り抜けやすくする)とともに、白血球に働いて炎症巣(炎症を起こしている場所のこと)に白血球をよび込む役目を持ちます。さらに周囲の細胞にさらなる炎症性サイトカイン産生を促します。このように、炎症性サイトカインが必要以上に作られると、他の場所にもボヤや火事を起こしやすくしてしまいます。つまり、局所に起こる炎症の影響が他の場所に及ぶようになるのです。ということは、慧眼の方には既におわかりと思いますが、炎症性サイトカインの働きを鎮められるはずだということになりますね。まさにそのとおりなのです。