じじぃの「科学・地球_143_中国と戦う・中国包囲網(QUAD+)」

南シナ海に来た英国空母クィーンエリザベスとF-35Bの発着艦訓練/international strike group HMS Queen Elizabeth and UK/US F-35B

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=-P4K9uuap2w

中国への脅威となれる日米豪印「クワッド」

2021年8月25日 Yahoo!ニュース
元豪州首相のケヴィン・ラッドが、8月6日付のForeign Affairsで、クワッド(日米豪印の4か国協力)の成功は中国の野望達成にとり主要な脅威になるなどの理由で中国を警戒させていると述べている。
中国が強く警戒する理由として、ラッドは、(1)クワッドが世界的な反中連合の土台になり中国の野望達成の障害になる、(2)台湾海峡南シナ海などでの軍事シナリオを複雑化するということを挙げる。そして、中国の対応としては、(1)ASEAN諸国との関係強化、(2)ロシアとの関係強化、(3)米国が動けない自由貿易の枠組の推進、(4)軍事支出のさらなる拡大を挙げる。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4cba21382598bbf4fbffbab448453bab6da4dbb2

中国と戦うときがきた日本

著者 渡邉哲也
日米「経済安全保障」により、経済的集団的自衛権が発動! 中国企業の出資を受ける楽天は日米政府の共同監視対象に、対中情報管理が甘かったLINEは体制改善を迫られ、ユニクロ無印良品などはウイグル人強制労働との関連を内外から追及されるなど、中国ビジネスはもはや最大のリスクとなった。
次に危ない企業はどこか。米国「2021年 戦略的競争法」施行で日本の対中政策は180度大転換が必至、そこで何が起こるのか。気鋭エコノミストが解説!
第1章 中国にかかわることが最大のリスクとなった日本
第2章 超弩級中国経済大破滅がやってくる
第3章 経済安全保障で中国と対決する世界
第4章 日本は中国にどう勝つか

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『中国と戦うときがきた日本 経済安全保障で加速する日本の中国排除』

渡邉哲也/著 徳間書店 2021年発行

第3章 経済安全保障で中国と対決する世界 より

英仏を巻き込み発展する中国包囲網「QUAD+」

中国の脅威に対し、多国間で対応しようという国際的枠組みがQUADだ。2021年3月12日にはバイデン大統領の呼びかけで、オンラインによるQUAD初の首脳会議が開催された。
この4ヵ国は太平洋とインド洋を囲むように位置しており、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を共有している。
もともと、このQUADは、2008年8月、第一次安倍政権時に安倍首相がインドの国会演説で提唱した、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの戦略的協力関係に端を発している。その後、安倍首相は、「自由に開かれたインド太平洋戦略」を打ち出し、トランプ政権とも共有してきた。
2017年から局長級会合が始まり、2019年9月には外相級会合になり、2020年10月の第2回外相会合を経て、バイデン政権になって首脳レベルに格上げされたわけだ。
2021年3月12日に行なわれたQUAD首脳会合で出された共同声明では、「自由で開かれたインド太平洋」という共通ビジョンのもと、国際法に基づいた秩序推進を謳い、東シナ海南シナ海における力による現状変更を批判、そのほか、新型コロナへのワクチン配布や気候変動への戦いなどが明記された。
もっとも、共同声明では中国を名指しはしなかったが、これは非同盟主義のインドに対する配慮だとされている。
実際、3月16日に行われた日米2+2では、中国を名指ししたうえで、その軍事的拡張、海警法、尖閣問題など、QUADより踏み込んだ内容となった。前述した4月の日米首脳会談でも、しっかりと中国批判を明示している。
そして、イギリスもこのQUADへの参加を検討しているとされている。イギリスは2021年2月1日に環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を正式に申請したが、TPPは経済における中国包囲網の側面もある。
イギリスは2020年1月31日にEYから離脱(ブレグジット)し、ヨーロッパからアジア環太平洋へと軸足を移しつつある。
2017年8月、当時のメイ首相が訪日し、日英安全保障共同宣言を発表したが、これは事実上の「新・日英同盟」である。また、イギリスは2018年9月には揚陸鑑アルビオン南シナ海に派遣し、「航行の自由作戦」に参加している。このとき、中国はイギリスに対して、「強い不満」を表明した。
加えて中国は、2020年6月末に香港国家安全維持法を施行。イギリスとの間で香港返還前に約束した一国二制度の50年間維持を反故(ほご)にしており、イギリスは完全なメンツを潰されたかたちになった。そのため、イギリスがQUADに加わる必然性は小さくない。
2021年5月1日には、イギリスはクイーン・エリザベス空母打撃群を極東に向けて派遣し、日本にも初寄港することを発表している。
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また、「航行の自由作戦」には、フランスやドイツも参加している。こうして考えると、QUADにイギリス、フランス、ドイツが加わり、「QUAD+」という枠組みへと発展する可能性もある。
バイデン大統領は2021年2月24日、重要部品のサプライチェーン強化に向けた大統領令に署名し、中国への過剰な依存を改めるなど、サプライチェーンの見直しと再編を行うこととしたが、当然QUADの枠組みを活用するかたちでのサプライチェーン再構築も視野に入っている。

アメリカとロシアの対立で新冷戦の構造が確立

トランプ政権とバイデン政権の外交戦略の大きな違いは、対中路線よりもロシアの扱いだろう。
トランプ氏はロシアに対して積極的な批判を避け、不干渉の態度をとってきた。それに対して、中国には積極的な批判をしてきた。一方、バイデン政権はロシアに対して厳しい批判を展開しており、バイデン大統領は「プーチンは人殺し」とまで述べて、ロシアを敵対視する行動をしている。
旧冷戦時代のアメリカ最大の敵はソビエトだったが、トランプ氏の戦略は対中国が優先であり、「敵の敵は味方」の論理でロシアを中立または自陣営に引き込もうとしていたともいえる。
地政学的にみると、ロシアが中立もしくは自陣営についているか、あるいは敵対しているかで、対中戦略は大きく異なる。
インドはQUADに参加しているが、ロシア製兵器も多く、ロシアとの関係も悪くはない。ロシアを味方につければ、日本海をはじめとした北の安全保障が容易になる、その意味では、南シナ海に注力できるともいえる。
逆に、ロシアが中国につけば、日本をはじめとして北方の防衛に力を割く必要が生まれるわけだ。これはアメリカの軍事力の分散を意味する。
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バイデン政権になれば米中冷戦は終わるという希望的観測も出ていたが、人権問題などで逆に対立は深化しさらにアメリカがロシアも敵対視することになれば、旧冷戦時代に巻き戻されることになる。
しかし、中国の軍事的拡大は旧冷戦時代と大きく異なり、アメリカの軍事力縮小とともに旧ソ連よりも大きく、厄介な敵であるのは間違いない。このため、トランプ氏は、中国とロシアの分断政策をとってきたともいえる。
そして、そのことは、ロシアの直接的な軍事的脅威を受けやすい日本の国益でもあり、それを支えてきたのはよくも悪しくも安倍外交だった。
「安倍なき後」の日本の外交が見えないことが日本の不幸であり、これを明示しなければ世界と対峙できない。「仲良くしましょう」と言うだけでは何も進まず、それはかえって世界を敵にまわす可能性もあるのだ。