じじぃの「科学・地球_99_学者の暴走・日本の科学の弱点・論理思考の脆弱性」

イギリス 新型コロナの死者ゼロに ワクチン接種進み

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jD1NHlbhwL0

ワクチン接種による集団免疫は未知数

新型コロナ「ワクチン接種による集団免疫は未知数」専門家

2020年12月9日 NHKニュース
ワクチンの接種によって、新型コロナウイルスに対して多くの人が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ、いわゆる「集団免疫」を獲得できるかどうかについて、ワクチン開発に詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「未知数だ」と指摘しています。
集団免疫とは、多くの人が、感染したりやワクチンを接種したりして免疫を獲得することで感染が広がりにくくなる状態で、WHO=世界保健機関によりますと、はしかでは95%、ポリオでは80%の人がワクチンを接種すれば集団免疫を獲得できるとしています。
WHOでは新型コロナウイルスに多くの人が感染することで集団免疫となるのを目指すことについては、科学的にも倫理的にも問題があるとしています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201209/k10012753691000.html

学者の暴走 (扶桑社新書

掛谷英紀
学者は本当に信用できるのか?
イデオロギー」「金銭(利権)」「同調圧力」によってウソをつく学者たち。そして新型コロナウイルスでは学者の罪が疑われている。倫理感なく突き進む学者の実態に警鐘を鳴らし、学術界の悪の正体を暴く!
第1章 新型コロナウイルスと悪魔の科学
第2章 科学とは何か

第3章 日本の科学の弱点

第4章 世界の学問の危機
第5章 学問の再建に向けて

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『学者の暴走』

掛谷英紀/著 扶桑社新書 2021年発行

第3章 日本の科学の弱点

1 科学に向かない日本文化の側面

米大統領選に見る日本人の論理思考の脆弱性

日本人の論理的思考の脆弱さを如実に表したのが、2020年の米大統領選に関する言説である。2020年11月3日の投票日以降、選挙結果を巡る論争が2ヵ月半続いた末に、2021年1月20日ジョー・バイデンが米国大統領に就任した。この間に発せられた陰謀論の数は計り知れない。その中には少し考えればウソと見抜けるものも少なくなかったが、トランプを応援していた日本の多くの有名保守言論人が、それにまんまと騙されたのである。騙された人の中には、国際政治学者を名乗る人も含まれていた。
当然ながら、米国にはトランプを応援する人は多数おり、その中には米国で著名な保守系知識人も含まれる。しかし、米国の場合、陰謀論に騙されたのは一般市民だけで、保守系知識人でそれに騙された人はほとんどいなかった。これは、日本の保守系知識人の多くが騙されたのと極めて対照的である。
初期に流されたデマの中には、投票用紙にGPSブロックチェーンが埋め込まれている、ドミ二ノン・サーバーを巡るドイツでの銃撃戦など、荒唐無稽なものが多く含まれた。そもそも、GPSブロックチェーンのような電子機器が投票用紙に埋め込まれているという話を信じること自体、その人の科学リテラシーの低さを示すものでしかないが、こうした情報を信じてしまう日本人は少なくなかった。
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実際、選挙不正を訴えた裁判は、ほぼ全てトランプ側の敗訴である。司法で大規模不正が認められていない以上、法治を尊重するならばそれを受け入れるしかない。これに対して、裁判官はみなディープ・ステート側だから信用できないという陰謀論者の極論も散見された。その主張には、各州の裁判所全員を買収できるというナイーブな世界観が透けて見える。たしかに、世の中では買収のような汚い行為が裏で行なわれていることもあるのは事実だ。しかし、資金には限りがある。だからこそ、中国共産党も政治的に決定権のある有力者に絞ってトラップを仕掛ける。経済合理性を考えれば、裁判官が全員買収されてあるという発想には至らないはずである。
そもそも、トランプ大統領の4年間を経ても、米国の司法が本当にそこまで腐っている(私はそう考えていないが)としたならば、トランプ大統領があと4年間大統領を続けても、米国が法と秩序を取り戻すことはできないだろう。つまり、トランプを応援しても無駄ということになる。
朝の保守系人気ネットニュース番組では、米大統領選のデマを厳しく糾弾した上念司氏が降板させられた。その結果、米国大統領就任式を直前に控えた2021年1月20日の配信でも、就任式で何かが起こるかのような陰謀論が番組内で繰り広げられた。ポンペイ国務長官の英語を明らかに翻訳して伝えてる場面も見られ、とてもニュース番組を名乗れる内容ではがかった。この日は水曜日で、本来ならば上念氏の出演回である。彼が隣にいたならば、英語解釈の間違いはすぐに正せたであろう。異論を排除することの危険を象徴する場面であった。

事実と願望を区別できない人々

前章で述べた通り、われわれ科学者は、願望(意見)と事実を明確に区別するように厳しく教育される。科学の目標は予測する力のある体系的知識の構築である。実際の結果をそのまま受け入れられずに、データを改鼠したり勝手な解釈を与えたりすると、次に同じ条件で観測をしたときに記録した通りの現象が再現されない。それでは予測力のある体系にならない。願望と事実を区別できることは、科学者にとって最も大事な素養であるといっても過言ではない。
最後までトランプが大統領に再任されると言い張った人々は、願望と予測の区別がつかなかったのだろう。自らの願望に影響されない客観的な予測ができる人は、数ある情報の中から信頼性の高いものを探し、それをもとに予測をする。願望が先行する人は、自分に都合のいい情報しか見ない。そうして得られた偽の情報を信じて拡散するが、願望を叶えるための活動の一環なので、デマを発信したという自覚がない。
さらに、願望と予測の区別がつかないので、バイデン大統領就任を予測するトランプ支持者という立場が理解できない。だから、トランプを支持していた人がバイデンの大統領就任を前提に議論すると、バイデン支持に寝返ったと解釈する。

新型コロナウイルスを巡る怪しい言説

ワクチンの問題に限らず、新型コロナウイルスについては、これまでも怪しい説が何度も登場した。新型コロナウイルスはそもそも存在しないというものから、単なる風邪と同じであるというものまで、そのバリエーションは広い。世界で300万人以上が死んでいるというのも、彼らには偽情報に見えるようだ。
日本は感染者が少ないので、特別な対策をしなくても大丈夫という議論も繰り返されてきた。いわゆるファクターXと呼ばれるものへの過信である。日本の被害を少なくしているファクターXが何かはまだ分かっていない。流行初期には、BCG接種が免疫になるという説が盛んに論じられたが、それと同じ理由で感染者が少ないと言われていたロシアやインドは、その後感染者が激増した。
われわれが留意せなければならないのは、前章で述べた通り、相関関係は必ずしも因果関係を意味しないことである。Aが原因でBとCが同時に起こるとき、BとCには相関がある。しかし、Bを取り除いたからといって、Cが起きなくなるわけではない。同様に、BがA以外の理由でも起きるときは、Bが起きたら必ずCが起きるわけではない。よって、BCG接種と新型コロナ患者数に負の相関があるからといって、BCG接種をしていれば何の対策をしなくても新型コロナの患者が増えないと思い込むのは非常に危険なのである。
日本人は流行初期の新型コロナウイルス弱毒株で集団免疫を達成していたという説も流行った。京都大学の上久保靖彦特定教授らが提唱した説である。その根拠の1つとされたのが、2019年度冬季のインフルエンザ感染者の少なさである。上久保説は、これを新型コロナ弱毒株干渉によるものだとした。この説は、新型コロナ感染抑止政策を受け入れたくない人たちに強く支持された。しかしながら、2020年末から新型コロナウイルス感染が激増したことで、集団免疫達成説は完全に間違いであることが証明された。幸い、この説は大多数の医学者から全く信用されていなかった。日本の医学のレベルは、無責任な言論人4たちが想像するより遙かに高い。