じじぃの「科学・地球_93_水の世界ハンドブック・2030年のシナリオ」

Countries That are Most Likely to Run Out of Water in Near Future

01 Feb, 2020 Save Water
The news of India experiencing one of the worst droughts in its history is creating a buzz from quite a while now.
Such is the situation of water scarcity in India, that the country is almost on the brink of losing all its clean water.
https://www.tourmyindia.com/blog/world-with-water-crisis/

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

133 21世紀への挑戦 より

158 2030年のシナリオ?

今後数十年間に取り組むべきことがおもにふたつある。2050年に90億人に達するであろう世界の人口を養うため、灌漑農業の生産性を上げること。都市の増大する需要に対するいっぽう、生活水準の向上を求める南の諸国の切実な声に応えることである。こうした課題を解決するのは、使用可能な水の量だけでなく、水質、さらには正しい分配の仕方も考慮に入れる必要がある。

水――すべての人の権利?

商品、公共財、共有財産、基本財。水の社会的位置づけを定義する理論はたくさんある。実際には、上水道や下水道の料金を算定できても、湿地がもたらす環境サービスを評価できても、水には文化遺産やシンボルとしてのはかりしれない価値がある。
水は生命の維持に不可欠なものとみなされることから、多くの国の憲法に(南アフリカエチオピアエクアドル)、国民共有の財産として、水に対する権利が記されてきた。だが、権利の表明とその適用のあいだには、まだ大きな開きがある。そして、そのような状況であっても(南アフリカ)、現在のところ、水は人々の生存に最低限必要なものという以上に、もっとも重視すべき経済資源とみなす傾向にある。このように、水の位置づけにかんする論議はつきることがない。

考えられるシナリオ

地球レベルではいくつかの研究所が、大胆にも2025年の予測を立てている。それにはおよそ3つの仮説がある。
第1のシナリオは現在の傾向が続くというもので、その結果、南の諸国では問題がいっそう深刻な状況になる(ナイル川、二ジュール、インダス川)。
別のシナリオでは、灌漑農業にも、北と南にも、革新的な技術が導入される。その場合、全世界の水消費や環境に対する圧力は、ほんのわずかしか増加しない。ほぼすべての人が水にアクセスできるようになり、灌漑農業によって十分な農業生産を上げられるようになる。
最後のシナリオでは当然ながら、「水危機」の到来が予測される。資金不足によって汚染が深刻が深刻になるとともに、管理のいきとどかない灌漑農業の生産高は減少する。その結果は多方面におよび、農産物市場は長期にわたって不安定になり、飢饉が増加し、都市は社会的混乱にみまわれる。
2030年にどのシナリオがあてはめるのか判断するのはさらにむずかしいが、主要な変化はおそらく、国によって非常に異なるものとなるだろう。汚染の除去という野心的な目標を定めた北の諸国では、とりわけ、まきちらされた農業の汚染物質や過去から引き継がれた工業の汚染物質を処理するためのコストが問題になるだろう。新興国は技術的な手段を駆使して水不足に対処し、すべての人に水をもたらし、農業生産を増やそうとするだろうが、それによっておそらく、水質の悪化をまねくことになるだろう。水をコントロールする力が不十分な最貧国では、現在の諸問題がもち越されるだけでなく、さらに悪化するおそれがある。人口が増加するにつれて、水資源への圧力が強まるからである。

温暖化の問題

温暖化が水循環に影響をあたえることはよく知られるようになったが、水蒸気モデルはまだ不完全なものである。IPCC気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書によると、水循環の「加速」が世界規模でみられるようになるという。すでに雨の多い地域では、さらに多くの雨が降るようになる。半乾燥地帯では、もっと極端な状態になる。サヘル地域(サハラ砂漠南縁部に広がる半乾燥地域)の国々ではおそらくより多くの雨が降るようになるだろうが、地中海沿岸では乾燥期がより長くなる。さらに、モデルのメッシュの升目の水管理の現実とのあいだには大きなギャップがある。実際の水管理は、流域の形態、地下水や湖沼の存在、水の用途によって決まるのである。