じじぃの「科学・地球_81_水の世界ハンドブック・都市汚染・下水設備」

Figure 2, pH distribution in China, 2012 (Tang and Wu, 2012)

Acid Rain in China; outlining the causes, distribution and impacts

Tang and Wu, 2012 Understanding Modern China
The distribution of acid rain is primarily confined to the southern regions of China (Fig 2).
The areas prone to the most acidic rainwater are the Chongqing, Sichuan and Guizhou provinces. These areas and the majority of acid rain areas exist south of the Yangtze River (Tang and Wu, 2012), (Dianqu and Jiling 1988).
https://uosm2018.wordpress.com/2014/03/18/acid-rain-in-china-outlining-the-causes-distribution-and-impacts/

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

75 脅かされる資源 より

92 工業と都市由来の汚染

工業汚染といえるものは古くからあった、なめし革工場から排出される水の水質は最悪だったし、金銀細工業では水銀中毒になる者が続出した。産業革命とともに汚染の規模は大きくなり、ときに大事故をひき起こした。しかしながら北の諸国では、まず局所的な産業廃棄物(技術的にはこれがもっとも簡単に処理できる)、つぎに都市の下水を処理するための対策がとられるようになった。それでもなお、土壌や堆積物にしみこんだ汚染物質の重いつけを払わされている。それらはいまだに水循環を汚染しているのである。

残留物質と進歩の限界

欧州連合は、工業と都市の排水処理に大きな努力をはらってきた。そのため、処理された汚水の割合は西欧諸国で75パーセントを上まわっている。フランスでは、1980年の50パーセント近くからこんにちの90パーセント以上へ上昇した。
処理技術の進歩とともに、ヨーロッパの状況は改善しつつある。けれども、数十年にわたって不用意にすててきたもののつけは重くのしかかっている。そのうちもっとも知られたもののひとつがPCB(ポリ塩化ビフェニール)である。
フランスではピラレンの名で商品化されて工業で大量に使われ(変圧器、コンデンサー、潤滑剤)、1970年代までに環境中に大量にばらまかれた。フランスでは1987年に使用禁止となったが、発がん性があるとされ、内分泌攪乱物質に分類されている。それらの物質は河川の堆積物のなかにまだたくさん残留している(とくにセーヌ川の河口、ノール県とローヌ流域の河川)。PCBは食物連鎖のなかで濃縮されるので、魚は食用に適さなくなる。
堆積物を処理するにはコストがかかるため(1立方メートルあたり約100ユーロ)、公権力は規制と監視を強化するだけで手一杯の状況である。したがって、PCBの処理は数十年にわたり、のちの世代に託されることになる。

もっとも貧しい人々、都市汚染の最大の犠牲者

世界的には下水設備へのアクセスが、大都市の汚水の状況を知るうえでおおよその目安になる。下水設備が使えなければ、汚水は直接、なんの処理もされずに、環境にすてられることになる。
汚水のなかには有機物のくずだけでなく、工業廃水や有毒物質、重金属も混じっている。南のいくつかの国では、下水設備にアクセスできる人の割合は都市住民で30パーセント以下、農村ではさらに低い。したがって南の大都市の貧困地区では、下水設備を使えない人々が何百万人もいる。しかしながら、それらの人々は生活用水を得るために、しばしば、低地にたまった汚水から水をくまざるをえない。つまり、もっとも貧しい人々は、そうした環境汚染の最大の犠牲者なのであり、これはあきらかに生活環境の不公正である。
近年は進歩したとはいえ、下水設備にアクセスのないことは南の諸国において、もっとも深刻な環境上、衛生上、社会上の問題のひとつである。25億人、すなわち世界人口の3分の1以上が基本的な下水システムを使えずにいる。

深刻な汚染

酸性雨をひき起こすのは、工業のさかんな大盆地で発生する硫黄酸化物や窒素酸化物の大気汚染である。それらの酸化物が雨滴と結びついて酸性雨になる(PHは最高4まで下がることがある)。風に流された雲が酸性雨を降らせ、樹木や湖沼に悪い影響をあたえる。PHが5以下になると、多くの魚は生きられない。
発生源の「風下」にあたる広い地域には、病んだ森のなかに「死の湖」が点在するだけとなる。1980年代の深刻な危機ののち、西欧では有効な措置がとられ、確実な成果を上げているが、中国とインドではこの現象が大規模に起きていると考えられる。