じじぃの「歴史・思想_177_地球に住めなくなる日・太平洋ゴミベルト」

太平洋ゴミベルトの5つの都市伝説

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=fx7gModjxsw

Yellow Sand Dust

『地球に住めなくなる日』

デイビッド・ウォレス・ウェルズ/著、藤井留美/訳 NHK出版 2020年発行

第2部 気候変動によるさまざまな影響

大気汚染による生命の危機 より

有鉛ガソリンや鉛含有と量の使用が、知的障害や犯罪の発生率を大きく押しあげ、学業の達成度や生涯賃金を低下させてきたという過去半世紀の秘密が、最近になって明らかになった。大気汚染の悪影響はもっとはっきりしている。微小粒子物質に長年さらされた場合、認知能力がが「すさまじく」低下すると研究者は警鐘を鳴らす。もし中国がアメリ環境保護庁の基準を満たすように大気汚染を改善したら、語彙(ごい)力試験と数学試験の精液はそれぞれ13パーセントと8パーセント向上しているはず(温暖化による教室の気温上昇も成績を査収しそうだが)。子どもの精神疾患や高齢者の認知症に、大気汚染が関係しているという指摘もある。大気汚染がひどい場所で乳児期を過ごした人は、30歳時点での収入や、労働力参加率(有給で働いているかどうか)が低くなる傾向があるという。早産や低体重児との関係となるとさらに明確だ。アメリカの都市で、有料道路に自動料金徴収システムを導入したただけで、近隣の早産が10.8パーセント、低体重児が11.8パーセント減少した。料金所前で車が減速する必要がなくなり、排気ガスが削減されたおかげだろう。
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発展途上国の都市の98パーセントは、WHOが定めた大気の安全基準を下回っている。都市部を離れても状況は変わらない。世界人口の95パーセントは、危険なレベルにまで汚染された空気のなかで毎日呼吸してるのだ。2013年以降、中国は大気浄化作戦に本格的に乗りだしているが、2015年時点ではやはり大気汚染で毎年100万人以上の死者が出ている。世界全体では、死者6人のうちひとりは大気汚染が原因で死亡している計算になる。

プラスチック汚染生物は6倍に急増

この種の汚染がニュースとして報道だれ、社会を動かしたりすることはまずない。チャールズ・ディケンズ環境保護論者ではなかったが、その作品を読むとスモッグや黒く染まった空気の危険性がよく伝わってくる。その後も産業活動が地球を汚していることは、さまざまな形で明らかになってきた。
これまでになかった、いや、理解されてこなかった汚染のひとつがマイクロプラスチックだ。地球温暖化が直接の原因ではないものの、マイクロプラスチックは自然界に急速に蔓延しており、「人新世」の消費文化の罪ぶかさを私たちに突きつけている。

太平洋ゴミベルトは、環境意識の高い人のあいだではすでに知られている。太平洋に、テキサス州の2倍の面積のプラスチックごみが浮かんでいるのだ。

肉眼で確認できるような大きなものがほとんどだが、本当に恐ろしいのは、顕微鏡でないと見えない微細なプラスチック粒、マイクロプラスチックだ。洗濯機を1回動かすと、70万個のマイクロプラスチックが環境に放出されるという。インドネシアとカリフォルニアで売られている魚の4分の1には、体内にマイクロプラスチックが入っているという調査結果がある。ヨーロッパで甲殻類を食すると、マイクロプラスチックを1年間に少なくとも1万1000粒とりこむことになる。
海洋生物への直接的な影響も見のがせない。プラスチック汚染の影響の影響が確認された生物は、最初の調査が行なわれた1995年には260種だったが、2015年には690種、2018年には1450種まで増えた。5大湖で検査した魚の大半、また大西洋の北西海域で調査した魚の73パーセントの内臓から、マイクロプラスチックが検出されている。イギリスのスーパーマーケットで売られているムール貝を調べたら、100グラム当たり70粒のマイクロプラスチックが見つかった。プラスチックを食物と勘違いして食べてしまう魚もいる。一部のオキアミはプラスチックを消化し、さらに微細な「ナノプラスチック」にするが、オキアミだけで全部を処理しきれるわけでもない。トロント近海で底引き網をしかけたところ、2.6平方キロメートル当たり340万個のマイクロプラスチックが回収された。
もちろん海鳥も被害にあう。生後3ヵ月の海鳥のひなの胃を調べたら、体重の10パーセントに相当する225個のプラスチック片が見つかったという。