じじぃの「科学・地球_83_水の世界ハンドブック・アラル海・コロラド川」

Aral Sea: The sea that dried up in 40 years - BBC News

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5N-_69cWyKo

The Aral Sea Is Dying

The Aral Sea Is Dying - A Victim of Environmental Malpractice

November 7, 2019 insurancejournal
The Aral Sea was once the world’s fourth largest inland lake. Today, it’s the epitome of environmental malpractice.
https://www.insurancejournal.com/news/international/2019/11/07/547812.htm

Cholera Worldwide, 1991-1998

GRID-Arendal
https://www.grida.no/resources/7245

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

75 脅かされる資源 より

99 壊滅的な状況にある地域

水をめぐるさまざまな危機が集中して起きている地域がある。気候変動による干魃や洪水が頻発し、巨大ダムの建設で環境が攪乱され、生態系が破壊され、農業や工業、都市による汚染が進んでいる。さらにその影響で、衛生的・社会的に深刻な問題が生じている。地域全体に影響をあたえるこうした破滅的事態のなかでも、アラル海の惨状はその最たるものだが、それ以外にも多くの事例がある。しかしながら、すくなくとも部分的な回復はつねに可能である。かつて「死の川」とみなされていたいくつかの川が、よみがえろうとしている。

アラル海

アラル海の状況は、水をめぐるさまざまな危機が集中的に生じている事例のひとつである。
アムダリヤ川とシルダリヤ川という2本の大きな川の自然の出口であるアラル海は、中央アジアを一大綿産業地帯にしようとしたソ連当時の犠牲になった。
灌漑農業の取水が増加したことから、2本の川による水の供給は急速に減り、アラル海は1960年から2015年までに、容積の92パーセントを失った。アラル海の塩分濃度は1リットルあたり1グラムから100グラムへと増加した(海水には1リットルあたり35グラムの塩分がふくまれている)。川の上流の現状も惨憺たるものである。野放図な灌漑により、塩分が蓄積して農地は不毛となり、残った水にふくまれる農薬の濃度もきわめて高い。生態系が壊滅的打撃を受けるとともに(アラル海固有の魚類すべての種が絶滅した)、健康被害も起きている。アラル海の後退によってあらわになった塩をふくむ風がその地域一帯に吹きつけるため、そこはがんの罹患率が世界でもっとも高い地域のひとつであり、子どもの死亡率も非常に高い。
アラル海を救うためにいろいろと手立てが講じられたが、まだきわめて不十分である。シルダリヤ川が流入する北の「小アラル海(北アラル海)」は堤防でせき止められており、こちらだけは有毒な塩に変わるのをまぬがれるかもしれない。「大アラル海」はすでに塩砂漠になってしまった。

コロラド川アメリカのアラル海か?

全長2330キロメートルのコロラド川は、アメリカ西部最大の川であり、総合的な流域整備のモデルになってきた。アメリカはそこに、フーヴァーダムやグレンキャニオンダムといった巨大ダムを建設し、コロラド川の水をカリフォルニアとニューメキシコに流すようにした。現在、毎秒120立方メートルの水がロサンゼルスとサンディエゴの都市へ流れている。また、水の一部はメキシコ国境の手前で方向を変え、カリフォルニア最南端のインペリアルヴァレーの広大な灌漑農業地帯を潤している。
カリフォルニア湾コロラド川河口に位置するメキシコは、1944年にアメリカと協定を結び、毎秒35立方メートルの水を確保したが、水質についての明確な取り決めはなかった。やがて水質は悪化し、塩分濃度は1500ppmに達した。「自然な状態」では50ppmである。その水は灌漑や人間の使用に適さず、豊かな生物多様性を誇っていたコロラド川のデルタは、塩分をふくんだ広大な沼沢地に変った。だが、灌漑方法を改善し、メキシコ国境近くに脱塩施設を設けたため、塩分濃度は240ppmに下がった。とはいえ、すべての問題が解決したわけではない。1922年の調停によってアメリカの州のあいだで水を分割することが定められたが、人口増加のいちじるしいメキシコ側にはほとんど適用されていない。肥料と農薬による汚染もまだ憂慮すべき状態にある。
コロラド川アラル海と似た変化をたどる可能性があったが、比較的早期に問題を認識し、大規模な投資が行なわれた結果、状況は安定し、さらに改善へ向かうことができたのである。