じじぃの「科学・地球_89_水の世界ハンドブック・飲料水の値段」

Valuing Water: a preview of the UN World Water Development Report 2021

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Cb-pTBoKZ28

Figure 1: Divergent water pricing strategies

Johannesburg (2001) v. ideal tariff for large household

LGD 2008 (1) - Bond & Dugard

●Abstract
This article reviews some of the debates regarding the right to water, applying these to the experiences of water delivery in post-apartheid South Africa. Of central importance, we find, are international trends towards cost-recovery and the commercialisation of water, whether through privatisation or corporatisation.
In order to break-even or to still make a profit despite the obligation to provide FBW, many water service providers utilise non-progressive tariff structures. These tariffs, typically, provide the six kilolitre FBW, followed by a very steep, convex curve, such that the next consumption block is unaffordable to many households, leading to even higher rates of water disconnections in many settings. Optimally, a different strategy based on commodification only above a sufficient threshold would provide a larger FBW allocation, ideally based on a per-person rather than a per-household calculation, and then rise in a concave manner to penalise luxury consumption (Figure 1).
Johannesburg’s tariff was set by the council with help from Suez, and has an extremely high price increase for the second block of consumption (the block immediately after the zero-rated FBW allocation). Two years later, the price of that second block was raised 32 percent, with a ten percent overall increase, putting an enormous burden on poor households that used more than six kilolitres each month. Conversely, the rich got off with relatively small increases and a flat tariff after 40 kilolitres/household/month, which did nothing to encourage water conservation and very little to promote genuine redistribution in a tariff cross-subsidy sense.
https://warwick.ac.uk/fac/soc/law/elj/lgd/2008_1/bond_dugard/

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

103 すべての人に水を? より

128 飲料水の値段

水事業には莫大な投資が必要である。投資にかんする問題は単純だが(だれが負担すべきか?)、その答えはかなり複雑である。ヨーロッパ、とくにフランスでは、上下水道の整備は広く税金でまかなわれている。だが現在、コストはおもに最終消費者が負担すべきという考えが強まっている。まさに「水の費用は水で払う」[水道事業の独立採算の原則]というわけだ。支払う能力のない人々に対しては、このシステムにくわえて直接の支援や、特別な料金設定が必要である。

フランスにおける水の値段

水道料金の請求書は3つの大きな要素からなる。給水(45パーセント)、汚水の回収と処理(39パーセント)、税金と賦課金(16パーセント)である。上下水道の料金には、一定の部分(基本料金)と使った量にしたがって変わる部分とがあり、それに水管理庁が定める負担金(環境対策や汚染除去の費用として)、フランスの水路使用料、そして上下水道にかかる地方税付加価値税がくわわる。
フランス環境研究所(Ifen)によると、2014年に支払われた県ごとの平均料金には、倍近い開きがあった。1立方メートルあたり3.02ユーロ(オート=ザルプ県)から5.55ユーロ(ロート=エ=ガロンヌ県)の幅があり、全国平均は3.92ユーロで、これはヨーロッパの平均を10パーセント下まわる。この差はおもに、水源(地下水で平均1.20ユーロ、地表水で1.60ユーロ)、水質(たとえばブルターニュの水質はよくない)、水道網の形態(人口密度)の違いによるものである。それに都市と農村との差、管理方法の違いもある。
Ifenによると、自治体グループの事業体では値段がより高くなり、その多くで管理が民間に委託されている――だが、ボストン・コンサルティング・グループの調査によると、公共事業体に戻っても水の値段が下がることはめったにない。1994年から2014年のあいだに、水道料金は平均50パーセント上昇した。1990年代に下水処理の基準が厳しくなったことから、料金は大きく跳ね上がった。1999年以降は、全体的なインフレ傾向にしたがって上昇した。水道料金は平均して、家計の0.8パーセントを占めている(通信費は2.4パーセント)。

すべての人に水を――どれくらいの値段で?

どんな貧しい人にも水をとどけることは、公的サービスであれ民間サービスであれ、水の分配にたずさわる人々の公式な目標である。むずかしいのは、サービスの財政的持続性を維持しながら、それを実行していくことである。水管理の「依託された」業務と「公的な」業務を両立させるという全体的な枠組みのなかで、最終消費者にできるだけコストを負担してもらおう、というのが現在の傾向である。実際のところ、税金に対して「使用制限(リングフェンス)」がかけられていることから(水道サービスと自治体の予算の残りを切り離す)、水の損失を税金で穴埋めすることはできないのである。
それでは。水の値段がもっとも貧しい人々に過剰な負担を強いることのないようにするには、どうしたらよいのだろうか? いくつかのシステムが試験的に実施されているが、全体としてそれは、累進的な料金設定を中心としたものである。つまり、最低限の使用量までは安くして、つぎに消費した分だけ、1立方メートルあたりの料金を段階的に引き上げるのである。こうした方法は水の節約にもなると考えられている。一定のラインは一般的に、1世帯あたり月に30から40立方メートルといったところで、これを超えると料金はかなり割高になるため、水の使い過ぎに気をつけるようになるのである。南アフリカではさらに一歩進んで、最初の6立方メートルまでを無料にした。これは4人家族で1人あたり1日50リットルに相当する。もっとも豊かな消費者がもっとも貧しい人々のために支払うという考え方である。その代償としてさまざまな措置が講じられているが(前払いメーターを導入し、不払いの場合は使用制限と高額の罰金を科す)、こうした方法によって水の社会的管理が可能になり、コストを全面的に負担することによる影響を緩和できる。これはまた、「適切な料金体系にすることで、すべての人が手ごろな価格で水を確保できるようにすべきである」という、水インフラストラクチャーの財政にかんする世界のパネルの勧告(カムデサス・レポート)とも一致しており、それを上まわるものともいえる。