じじぃの「科学・地球_88_水の世界ハンドブック・水道事業・官民パートナーシップ(PPP)」

Public-Private Partnership in Safe Water Provision in Somalia (ソマリアでの官民連携水事業)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wCxhfj913ak

世界「3大水メジャー」がついに「一強」になった歩みと今後の展開や懸念

2021年5月17日 Yahoo!ニュース
水ビジネス世界大手仏ヴェオリアが、同業仏スエズを買収することで最終合意したと発表した。買収総額は約260億ユーロ(約3兆4000億円)。売上高約370億ユーロの巨大企業が誕生する。
ヴェオリアは、仏リヨン市で1853年に創業したジェネラルデゾー社が母体となっている。フランス共和国第二帝政時代、ナポレオン三世は都市部の水道システムを運営する民間企業が必要と考え、勅令によって誕生した。
事業は上下水道に止まらない。1960代以降、廃棄物処理やエネルギーも取り扱い、いわゆるライフライン事業を主体にしている。
1980年代以降、通信・メディア事業、都市交通などにも進出したが、現在は本業に集中する方向だ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotojunji/20210517-00238333/

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

103 すべての人に水を? より

124 水の「世界市場」

国連のミレニアム目標を達成するには、年間100億ドルから300億ドルの投資が必要である。自治体の財政力にかぎりがあるため、国際的な出資者たちは民間部門の力を借りるよううながしている。それは、水道を引くことに法的な責任をもつ公権力と、水サービスの管理を専門とする大企業との連携となって現われた。そうした企業が技術的ノウハウをもつことはだれもが認めるとしても、公的サービスを民間企業に委託することの是非が問われることもある。

官民連携

水の「世界市場」とよばれるものは特殊な形態をしている。国や地域のあいだで水をやりとりするのではなく、民間企業が自治体の国際入札に応じ、水管理で官と民が連携する(PPP、Public Private Partnership)のである。
PPPでは、水に関連するさまざまなサービス(水道の建設、維持管理、請求書の作成と送付など)を行なうために、公権力と民間企業が契約を結ぶ。実際には、サービスの依託には非常に多くの形態があり、契約期間もさまざまである。チリのように完全に民営化されているところもあれば、料金の請求や漏水検査のために技術的な支援を行なうだけのところもある。PPPの数は世界的に増えているものの、ごく少数派にとどまっていて、水管理の90パーセントは依然として公的なものである。水道事業で世界をリードする企業に、ヴェオリア・ウォータースエズ・エンバイロメントRWEテムズ・ウォーター、SAURがある。
公的サービスの依託が出資者たちに支持されているのは、公権力が定めた野心的目標を達成するのは必要な資本とノウハウをもつのは民間企業だけだと考えられているからである。そうした目標が実際にモロッコのタンジールのような大都市で達成されているとしても、PPPはときに、地元民の強い反発を受けることがある(水の値段が高すぎる、一部の契約が不透明であるなどと批判されている)。そのため、ボリビアコチャバンバやアルゼンチンのブエノスアイレスのように、南の都市から民間企業が撤退したところもある。
こうしてPPPは2000年代初頭以降、件数においても投資額においても、開発途上国、とくにアフリカとラテンアメリカで退潮を余儀なくされた。そのため上下水道財政問題は、いまだ未解決のままである。