無細胞系を利用したタンパク質間相互作用解析
コムギ胚芽無細胞タンパク質合成の手順
(mst.or.jp HPより)
リボソームとは?
マルチメディア資料館
生命現象の中で重要な働きをするタンパク質の設計図はDNAにありますが、直接DNAからタンパク質を合成することはできません。
DNA上の情報は、いったんメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、翻訳という過程を経てアミノ酸がたくさん連なったタンパク質を合成します。この翻訳で重要な働きをするのがリボソームとトランスファーRNA(tRNA)です。
リボソームはmRNAをくわえ込み、 アミノ酸の運び屋であるtRNAは、その中でmRNAのコドンを認識します。 そして、リボソームの酵素作用によって隣り合ったアミノ酸がペプチド結合をし、ペプチド、さらにはタンパク質となります(「リボソームの働き」参照)
https://www.nig.ac.jp/museum/dataroom/translation/01_introduction/index.html
動画で紹介・無細胞系の新技術
「プロテイン・アイランド・松山」は、愛媛大学 遠藤弥重太 特別栄誉教授が開発した「コムギ無細胞タンパク質合成系」を核に活動しています。
その独自技術の中から、製薬会社や大学の研究者にマスターしていただきたい「膜タンパク質合成」と「タンパク質間相互作用解析」を動画で紹介します。今まで諦めていた合成や解析が可能になるかもしれません。これを機に、新しいタンパク質研究の扉を開いていただければ幸いです。
https://pim-sympo.jp/video/
フロンティア:世界を変える研究者/7 愛媛大・遠藤弥重太さん
2010年7月31日 Dr.Carrasco
●遠藤さんによる世界初の「無細胞タンパク質合成装置」は、2003年完成。
同年のヒトゲノム解読完了後間もなくだった。
一晩で384種類ものタンパク質を、細胞なしで合成できるこの装置は、ポストゲノムの中核であるタンパク質研究を大きく進めた。
「研究者になりたい」と、地元の大学の栄養学科に進み、タンパク質合成というテーマに出合った。
「タンパク質合成の仕組みは複雑で、試験管内で再現することは不可能」が当時の常識。
「やるなら難題に挑戦しよう」と考えた。
大腸菌などの生きた細胞に遺伝子を導入し、タンパク質を作らせる方法(組み換え法)が開発、限られた種類のタンパク質しか合成できず、その量も少なかった。
細胞をすりつぶした液に遺伝子を入れる方法(無細胞法)は、合成を担うリボソームが壊れて、反応が1時間ほどで止まってしまう。
「どうすれば反応が続くのか」
研究するうち、すべての生物はリボソームを破壊する「自殺酵素」を持っていることを突き止めた。
反応が続かないのは、酵素が自らのリボソームを破壊してしまうから。
この酵素を除けば、持続するはずだ。
愛媛大に移った92年、小麦を材料に実験を始めた。
小麦の自殺酵素は、全体の99%を占める胚乳だけに存在。
1%の胚芽を分ければうまくいくと考えたが、薬品ではうまくいかない。
試行錯誤の末、胚芽についた小麦粉(胚乳)を水で洗い流す方法にたどり着いた。
98年、取り出した胚芽の抽出液で、反応を2週間持続させることに成功。
「『遠藤は思いつきで偶然うまくいった』という人もいるが、誰もやらない研究を20年以上続けてきた。無細胞法しか成功する方法はない、と確信していた」
http://doctoralcarrasco.blogspot.com/2010/07/blog-post_31.html
サリドマイド 薬害原因物質を確認 愛媛大・澤崎教授ら
2021年2月14日 愛媛新聞
愛媛大は13日までに、同大プロテオサイエンスセンターの澤崎達也教授(52)と山中聡士特定研究員(28)らの研究グループが、低分子薬剤サリドマイドを服用した妊婦の赤ちゃんが四肢形成の発育不全を引き起こす「催奇性」の原因として、「PLZF」というタンパク質が関係していることを明らかにしたと発表した。
大学や澤崎教授によると、サリドマイドは多発性骨髄腫などの血液がんを中心に、世界で年間約1兆円規模で使用されている低分子薬剤。しかし1960年代ごろに妊婦が睡眠導入剤として服用したところ、手足の短い赤ちゃんが生まれる事例が多発し世界規模の薬害問題となり、長年その原因が解明されていなかった。
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202102140028
サイエンスZERO 「薬開発からバイオマシンまで!“タンパク質”人工合成の世界」
2021年6月23日 NHK Eテレ
【司会】小島瑠璃子、浅井理 【ゲスト】澤崎達也(愛媛大学 教授)、大崎寿久(神奈川県立産業技術総合研究所)
生命を駆動する超重要部品「タンパク質」。人体で10万種類、生物全体では900億種類に及ぶといわれ、それぞれ形も機能も違う多様な精密部品だ。
今、ねらいのタンパク質を自在に作り出せる技術が進歩し、薬の開発や副作用をなくす研究に革命を起こしている。さらに、人間以外のある生物の嗅覚受容体タンパク質を合成してマシンに組み込むことで、ガンを早期発見できるセンサーまで登場!タンパク質の科学の最前線に迫る。
タンパク質の人工合成研究が加速したきっかけは、2003年までに完了した人の遺伝子の全ゲノム解読です。
ゲノムには人の体を構成するすべてのタンパク質の設計図が入っています。
しかし、それぞれがどんなタンパク質であるかは実際に作ってみなければ分かりませんでした。
当時、タンパク質を合成するために使われていたのは生きた大腸菌。
人の遺伝子を組み込ませることでタンパク質を作り出してもらおうという手法です。
しかし、大腸菌にとって害となる場合作ってもすぐ分解されてしまうため、人のタンパク質の3割ほどの種類しか作れませんでした。
この壁を乗り越えたのが澤崎さんの師匠にあたる遠藤弥重太さんです。
生きた大腸菌を使った方法とは全く異なる方法を模索していました。
そこで遠藤教授が目をつけたのは何と、「小麦」。
重要なのは小麦の実のこの部分「胚芽」です。
遠藤教授、「胚芽には発芽するのに春が来て芽が出るためのありとあらゆるタンパク質を作るようなタンパク質合成が広がっていて、胚芽のタンパク質の量の半分はタンパク質を作る装置なのです」
胚芽のタンパク質を作る装置。それはリボソームです。
https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/episode/te/RMYRN3V8LY/
どうでもいい、じじぃの日記。
再放送だったが、NHK Eテレ サイエンスZERO 「薬開発からバイオマシンまで!“タンパク質”人工合成の世界」を観た。
タンパク質とは?
タンパク質は生物だけで作られている。ヒトは約10万種類ものタンパク質を作り、利用していると考えられている。細菌や植物、動物も、細胞の中でタンパク質を作って利用している。生物にはタンパク質を作る仕組みが備わっていて、しかもその仕組みは生物でほぼ共通のものになっている。
タンパク質は、20種類のアミノ酸が一列に結合したもの。アミノ酸の数は50個から万単位にまで及ぶ大きな分子だ。さらにタンパク質は固有の立体構造を持っている。
立体構造が変わると性質も変わってしまうため、タンパク質の合成では、アミノ酸を順番に結合させるだけではなく、適切な立体構造を持たせることが重要になってくる。この合成においては、40億年という時間をかけてきた「生物」がエキスパートといえる。
いま、このタンパク質の人工合成に関して、日本人研究者がつぎつぎと成功しているのだとか。
愛媛大学の遠藤弥重太教授は、タンパク質生合成工場ともいえるリボソームについての、多年にわたる地味な基礎研究から得た知見を基に、無細胞タンパク質合成系の樹立に挑戦し、画期的な技術の開発に成功した。
タンパク質の人工合成に関して、日本が世界をリードするきっかけになったのが、遠藤教授のコムギ胚芽からさまざまな種類のタンパク質を取り出すことに成功したことだった。
同じ愛媛大学の澤崎達也教授は、コムギ胚芽抽出液を使用して作製された約1,100種類から成るヒトプロテインアレイを用いて網羅的な探索をした結果、「サリドマイド」の催奇性を引き起こす原因タンパク質を発見した。
「サリドマイド」は、半世紀以上前に妊婦の睡眠導入剤として使用されたが、胎児の重篤な催奇性を示し、薬害問題を引き起した歴史的背景があった。
澤崎教授は「サリドマイドは病気によってはとてもよく効く薬。安全に若い人が服用できる日が来ることを期待したい」と話した。
2018年のノーベル化学賞を、米国人2人と英国人1人に授与した。
生物が進化する過程を参考にタンパク質を人工的に合成し、環境に優しい洗剤やバイオ燃料、がん治療薬などに利用できるように開発した。
開発されたタンパク質の合成法は、世界で最も売れている処方薬である米製薬大手アッヴィABBV.Nの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」に活用されている。
タンパク質の合成法で欧米の3氏がノーベル化学賞に輝いたが、実は日本人研究者も頑張っているというお話でした。