じじぃの「科学・芸術_916_遺伝子DNAのすべて・遺伝子の構造」

生物Ⅱ タンパク質の合成 by WEB玉塾

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BZ0XHr-EI28

図1.リボソームが新しいタンパク質をつくる

たんぱく質が作られる過程を1分子レベルで可視化に成功

JST 課題解決型基礎研究の一環として、JST さきがけ研究者で、米国スタンフォード大学で研究を行っている上村 想太郎 研究者らは、リボソームによってたんぱく質が作られる過程を、蛍光シグナルによって1分子レベルで直接可視化することに初めて成功しました。
リボソームは全ての細胞中に存在する分子で、DNAの遺伝情報がmRNAへと転写された後、その遺伝情報に沿って、tRNAが運ぶアミノ酸をつなげる反応を担っています(図1)。こうした、mRNAの遺伝情報からアミノ酸鎖が作られる過程(翻訳と言います)の研究は、生命の基本原理を知ることにつながります。しかし、翻訳過程の詳細については、未解明の部分が多く残されていました。
https://www.jst.go.jp/pr/info/info728/index.html

『ビジュアルで見る 遺伝子・DNAのすべて』

キャット・アーニー/著、長谷川知子、桐谷知未/訳 原書房 2018年発行

遺伝子はどんな働きをしている?

遺伝子が細胞のなかにあるレシピならば、次は料理に取りかからなければならない。

料理好きな人ならば誰でも知っているように、成功の秘訣は、優れたレシピがあることと、それにきちんと従うことだ。ケーキやパイをつくる代わりに、細胞はDNAのなかにある遺伝子のレシピを使って、タンパク質をこしらえる。タンパク質というと、ステーキの赤身肉や卵の白身を想像するかもしれないが、タンパク質はさまざまな見た目をしていて、体をつくり上げ、その機能を適切に保つ基礎となる分子だ。
何十年にも及ぶ研究のおかげで、今では遺伝子がどのように解読され(転写と呼ばれる過程)、細胞がどのようにその遺伝子の指令を受けてタンパク質をつくっているか(翻訳)について、それを見る前に少し後戻りをして、遺伝子がDNAレベルで実際にどんな様子をしているのかを探ってみよう。

暗号(コード)解析 より

アメリカの生化学者マーシャル・ニーレンバーグは、遺伝暗号の解読に貢献し、ある種のDNAとRDAの文字の組み合わせがどのように特定のアミノ酸に変換されるのかを明らかにした主要人物のひとりだった。ニーレンバーグと、その博士課程を修了したドイツの生化学者ハインリッヒ・マッセイは、RNA(リボ核酸)をタンパク質に翻訳するために必要なすべてを含む”試験管中の細胞”のようなものをつくった。Uの文字の長いひもだけでできたRNAを加えると、その装置はアミノ酸フェニルアラニンの鎖を合成した。ふたりは生命の遺伝的なレシピの”言葉”を初めて解明したのだった。ただし、各アミノ酸を特定するのにいくつの文字が必要なのかはわからなかった。
ニーレンバーグや他の科学者たちのさらなる研究で、暗号は3文字の組み合わせでできていることが明らかになり、ついに20種類のアミノ酸すべての暗号が解読された。

タンパク質かRNAか? より

遺伝子のすべてがタンパク質をコードするわけではない。いくつかはRNAに転写されたあと、RNA自体が細胞に使われる。非コードRNAのなかで最もよく知られている一例は、XIST(イグジスト)と呼ばれる。これはX染色体でつくられ、女性の2本のX染色体のうち1本を不活性化する役割を果たしている。また、いくつかの遺伝子はリボソームRNA成分、転移RNA(tRNA)の生成を指定する。tRNAは、アミノ酸や他の重要な分子を運んでいる。他にも、多様な種類のRNAを転写するための3種類のRNAポリメラーゼⅡは、タンパク質をコードする全遺伝子の情報を転写し、RNARNAポリメラーゼⅠとⅢは、リボソームをつくるRNA、tRNA、その他いくつかの小さなRNAを転写する。

RNAも編集される より

RNAに加えられる可能性がある修正は、スプライシング、キャップとテールの追加だけではない。現在では、個々の文字が変わる場合もあることがわかっている。この現象はRNAエデッティング(編集)として知られている。たちていは、mRNA(伝令RNA)のAがI(イノシン)に置換される。多くの事例で、これがタンパク質をコードする配列の重要な部分を変えることがわかってきた。
また、多くのヒトmRNAのあちこちで、さらに幅広いエデッティングが起こっているらしい。研究結果によると、誤ったエデッティングは運動ニューロン疾患(ALS、ルー・ゲーリック病としても知られる)などの病気にも関わっている。さらに、エデッティングを引き起こす酵素ADARの活動の変化は、がんやウイルス感染、神経障害、自己免疫疾患、その他多くの深刻な病気に連関している。