じじぃの「歴史・思想_504_日本の論点2021・これからのスタートアップ企業」

Deep Tech Atelier 2019

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=5wtlUkborj0

リアルテックホールディングス

リアルテックファンドの管理運営体制を改編、アジアを含めたベンチャー支援・育成体制を強化し、社会実装へ加速~ユーグレナ社とリバネス社による合弁会社を軸とした体制へ移行~

2020.02.03 リアルテックファンド
今回の体制変更を通じてユーグレナ社とリバネス社の連携を拡充することで、リアルテックファンドの更なるソーシング活動、投資・育成活動の強化、海外も含めたリアルテックベンチャー支援体制の構築を目指しながら、地球や人類の課題解決に資する研究開発型の革新的テクノロジーの社会実装を加速させます。
また具体的な取り組みとして、日本国内及びアジア地域を対象とする新たなファンドの組成、ファンドという枠組みを越えた課題解決の取り組み、人類のフロンティア開拓に資する取り組みの実施等を予定しています。
https://www.realtech.fund/archives/3089

『これからの日本の論点2021』

日本経済新聞社/編 日経BP 2020年発行

論点14 これからのスタートアップ、注目は「ディープテック」 より

「投資した88社のうち、15社くらいはコロナの谷で倒産し、15社くらいは羽ばたく」
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、2020年6月25日の株式総会でそう語った。
10兆円ファンドと騒がれたソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じて、有望とみたスタートアップ(小さくて勢いがある)企業に対し、大胆に資金を投じてきた孫氏。新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の経済活動に急ブレーキがかかり、本物の実力を備えた企業と、そうでない企業のふるい分けが一気に進む。そう予感させる言葉だ。

社会問題や環境問題を解決する「ディープテック」

地球や人類の課題解決に役立つ研究開発型の革新的テクノロジーに投資する――。
これは、微細藻類ユーグレナミドリムシ)にかかわる事業を営むユーグレナと、企業支援のリバネスが共同で設立したリアルテックホールディングスが掲げるモットーだ。SMBC日興証券とともに2015年度からベンチャー投資ファンドを運営してきた同社は、コロナ問題が深刻化してもひるまず、2020年3月に新たに2つのファンドを立ち上げた。日本国内や東南アジアのスタートアップ育成に力を注ぐ。「既存の大きなマーケットをひっくり返せる面白さがある」。永田暁彦代表取締役ユーグレナ副社長)はそう語る。
リアルテックホールディングスの投資姿勢は、これまでに出資したスタートアップの顔ぶれににじみ出ている。たとえば、メルティンMMIは、遠隔操作が可能な人型のアバターロボットを開発している。人間に代わって繊細な作業ができる製品をめざす。国際宇宙ステーションでの作業を想定し、宇宙航空研究開発機構JAXA)と実証実験も行った。チャレナジーという投資先は、風力発電機を手がけるスタートアップ。台風のときも発電できるユニークな形状の製品を開発し、こちらも実証実験にこぎ着けている。
ロボットや環境・エネルギーだけではない。新素材や航空宇宙、エレクトロニクス、バイオ、アグリ(農業)、人工知能(AI)など、2020年春までに出資したスタートアップは43社に上る。いずれも簡単には「成果」を出せないジャンルで、膨大な実験や緻密な設計を要求される。インターネット系のスタートアップのように、爆発的にユーザー数を増やして急成長を遂げるとはいかない。短期間で利益をあげたい投資家には敬遠されやすい。

まさに2005年設立のユーグレナがそうだった。主力と位置づけるバイオ燃料は、研究開発に12年、約100億円を要し、量産までに5年かかるという長期戦ビジネスだ。いまは東証1部に上場する有名企業の仲間入りを果たしたが、創業のころはIT産業ばかりがもてはやされ、資金集めに苦労した。

確かに、日本ですぐに思い浮かぶ企業のストーリーといえばITに偏っている。ソフトバンクグループや楽天サイバーエージェントなどだ。ここ数年は、ネットサービスでそこそこの成功を収め、東証マザーズに上場して小さくまとまってしまう起業家が多い印象もある。そうではなく「長い時間をかけて大きなことをやり切る」起業家を支援しようというのが、永田氏が率いるリアルテックホールディングスの考え方だ。運営するファンドの資金は大企業から集め、スタートアップに足りないテクノロジーやノウハウを補えるよう双方の協業も後押しする。
同社が注力する領域は、世界的には「ディープテック」と呼ばれている。ボストンコンサルティングループ(BCG)と非営利組織ハロー・トゥモローの定義によれば、相当な研究開発を必要とし、大きな社会問題や環境問題の解決をめざすのがディープテック。「先端材料」「AI」「バイオ」「ブロックチェーン(分散型台長)」「ドローン・ロボット」「フォトニクス(光工学)・エレクトロニクス」「量子コンピューティング」の7分野に関係し、デジタル革新に続く大きな波だという。
ディープテックに属するサービスは、ネット系サービスと異なり、言葉の壁を気にせずに世界市場を狙うことができ、ものづくり文化の蓄積も生かせる。日本が優位に立てる分野との見方がある。目を凝らせば、ユニークな起業家たちが動きはじめている。

なお少ない日本のベンチャー投資

スタートアップをイノベーション起爆剤にしようという機運が日本で高まっているのは確かだ。米国の民間調査会社スタートアップ・ゲノムが2020年にまとめたスタートアップ都市ランキングでは、東京が15位に入った。資金調達や人材確保のしやすさ、技術の厚みなどを総合的に評価し、スタートアップが成長しやすい場所をランクづけしたものだ。1位シリコンバレー、2位ニューヨーク、3位ロンドンと続く。これらに比べれば東京の存在感は小さいが、日本の都市が上位に食い込むのは初めてで、ひとつの節目といえる。
ベンチャーエンタープライズセンターによれば、日本のベンチャー投資額は2018年度で2778億円。米国の52分の1、中国の13分の1の水準で、もう一段の裾野の拡大が必要だ。
ここ数年、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立し、スタートアップへの投資に目を向ける大企業が増えた。スタートアップと協業するオープンイノベーションのプログラムも少なくない。コロナ禍で経済の先行きが不透明になるなか、大企業の「スタートアップ熱」がどの程度保たれるのか、注意すべきポイントのひとつになる。