じじぃの「科学・地球_63_レアメタルの地政学・電子ゴミを発送する国々」

iPhone Factory tour 2020 | How iphones are made

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=m2Fe_UejKKE

How Much Gold Can an iPhone Refine?

Stanford Advanced Materials
In 1973, the mobile phone's inventor, Martin Cooper, took the first wireless phone and made a phone call in the streets of New York. Cell phones were born then, and this is one of the great inventions of man.
After more than 40 years of development, the device has evolved from the size of two bricks to the one-handed grip it is today. Although the phone's appearance is small and simple, it still has a complex inner core inside. Everything in the world is made up of chemical elements, and the cell phone is no exception, so what metal elements are there in the phone?
https://www.samaterials.com/content/how-much-gold-can-an-iphone-refine.html

Where Is the iPhone Made?

January 27, 2021 LIFEWIRE
Anyone who has bought an iPhone or another Apple product has seen the note on the company’s packaging that its products are designed in California, but that doesn't mean they're manufactured there. Answering the question of where the iPhone is made isn't simple.
https://www.lifewire.com/where-is-the-iphone-made-1999503

レアメタル地政学 資源ナショナリズムのゆくえ』

ギヨーム・ピトロン/著、児玉しおり/訳 原書房 2020年発行

第2章 グリーンテクノロジーとデジタルテクノロジーの隠された面 より

グリーンテック――環境負荷のひどさ

たいていのリチウムイオンバッテリーはニッケル80パーセント、コバルト15パーセント、アルミニウム5パーセントでできているが、リチウム、銅、マンガン、鋼鉄、グラファイトも使われる。それらの金属が中国、カザフスタンコンゴでどのような条件下で採掘されるか、製錬以外にも輸送や組み立てにロジスティクスが必要なことを私たちは知っている。UCLAの研究者の結論は、電気自動車1台の製造はガソリン車の3~4倍のエネルギーを消費するというものだった、
しかし、ライフサイクル全体では、電気自動車のほうに軍配が上がる。ガソリンを使わないので、大気中に排出する二酸化炭素がごく少ない。製造から廃車になるまでに、二酸化炭素排出は32トン。ガソリン車のおよそ2分の1である。だが、ここで留意しなくてはならないのは、UCLAの研究では1回の充電走行距離が120キロメートルの中型車を対象にしていることだ。日々進化している電気自動車市場にあって、今日、市場に出回っている電気自動車は走行距離が300メートル以下のものはない。1回の充電で300キロ走れるバッテリーは、ジョン・ピーターセン氏によると、製造過程での二酸化炭素を排出は倍になるという。500キロメートルになると、その値は3倍になる。

つまり、電気自動車はライフサイクル全体で、ガソリン車が排出する二酸化炭素のおよそ4分の3までということだ。電気自動車の性能が上がるほど、製造に必要なエネルギーや製造過程で排出される温室効果ガスの排出が高くなる。

たとえばテスラのモデルSは今は600キロメートルの走行を可能にするバッテリーが搭載されている。イーロン・マスク会長は近く800キロメートルが走行可能なバッテリーを約束している。

見えないものに隠された物質性

それだけではない。グリーンテクノロジーが効率を高めるために、次第にデジタルテクノロジーと収斂しつつあることは前に述べた。あえて乱暴な疑問を呈してみよう。デジタルテクノロジーはグリーンテクノロジーによって発生する汚染をひどくするのではないだろうか?
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ところが、デジタルテクノロジーはかなりの量の金属の採掘を必要とする。エレクトロニクス業界は毎年、320トンの金、7500トンの銀を消費し、水銀の世界消費の22パーセント(514トン)、鉛の2.5パーセントを使う。コンピュータと携帯電話の製造だけで、パラジウムなどのレアメタルの世界生産量の19パーセント、、コバルトの23パーセントを占める。携帯電話には平均40種類の金属も含まれる(iPhoneに含まれるレアメタルは画像参照)。しかも、「消費者が所有する製品は、その製品のライフサイクル全体で生じる廃棄物の2パーセントにすぎない」と、デジタル化の隠された面に関する本を書いた著者は言う。「2グラムのICチップをひとつつくるのに、約2キログラムの廃棄物が生じる」という一例だけでも十分だろう。つまり、製品と廃棄物の割合が1対1000なのだ。

電子ゴミを発送する国々

産業界はある点では一致している。レアメタルのリサイクルを採算が取れるようにする方法のひとつは、スケールメリットを生むために十分な量の電子ゴミを堆積することである。電子ゴミはリサイクルできなくても、旅を終えてはいない……。マンハッタンの高層ビルはニュージャージー州ニューアーク湾の反対側にそびえているが、その湾に電子ゴミのリサイクル――というより輸出――を行うアメリカ企業の多くが集まっている。それらの企業が港に近いことに、アメリカの市民団体「バーゼル・アクション・ネットワーク」の活動家ローレン・ローマン氏は気づいた。この団体は数年来、電子ゴミが詰まったコンテナに記載されたトラッキングナンバーを撮影するためにニュージャージー州を歩き回っている。そのナンバーでコンテナが世界のどこに送られるかがわかるのだ。
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これ(電子ゴミの80パーセントはアジアに輸出されている)はアメリカだけではない。日本はバーゼル条約を批准しているにもかかわらず、多くの廃棄物処理業者は中国に電子ゴミを輸出している。あやしげな廃棄物回収業者は、電子ゴミのコンテナを「人道支援」のコンテナと偽って国際規則を回避しているという。
ヨーロッパも例外ではない。レアメタルがふんだんに使われた無数の自動車が「中古品」という名目でアムステルダムの港を出港する。使用済みのカタライザーの50パーセント、風力発電機の無数のバッテリー、使用済みのプリント基板の50パーセント、年間100万トンの銅の廃棄物も同様だ。欧州刑事警察機構は2013年以降、違法な廃棄物貿易を主な環境脅威のひとつと認定したが、何の効果も上がらず、EU当局によると年間150万トンの電子廃棄物がヨーロッパから主にアフリカやアジアなどに輸出されている。
中国はこうした電子廃棄物の重要な輸出先となっている。人件費が安いために、リサイクル費用は欧米先進国の10分の1にすぎない。私たちの中国側情報源によると、磁石は満足できるコストでリサイクルできないので、採算のとれる経済モデルができるまで、ストックされているという(この情報は確認できないのだが)。
政府が2017年7月に金属を含む廃棄物の輸入を禁止したにもかかわらず、香港経由で入ってくるために中国は依然として電子ゴミの主な輸出先だという。