じじぃの「科学・地球_32_世界史と化学・鉄・レアメタル」

The F-35 Is Now the World’s Most INSANE Stealth Fighter: Here's Why

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=oGAepadiPBY

Rare-Earth Uncertainty

Dec. 21, 2017 Air Force Magazine
The ability of US contractors to quickly make use of technological innovations and translate them into high-quality military systems is a pillar of the nation’s defense.
Given that, the Pentagon is likely to become even more dependent in the coming years on high-tech magnets, motors, lasers, computers, and electric-drive systems that use rare-earth materials.
But as noted above, the US itself no longer produces rare-earth ore or processes the substance at early points along the supply chain. Virtually all comes from China.
https://www.airforcemag.com/article/rare-earth-uncertainty/

ダイヤモンド社 絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている 左巻健男(著)

【目次】
1  すべての物質は何からできているのか?
2  デモクリトスアインシュタインも原子を見つめた
3  万物をつくる元素と周期表
4  火の発見とエネルギー革命
5  世界でもっともおそろしい化学物質
6  カレーライスから見る食物の歴史
7  歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒
8  土器から「セラミックス」へ
9  都市の風景はガラスで一変する

10 金属が生み出した鉄器文明

11 金・銀への欲望が世界をグローバル化した
12 美しく染めよ
13 医学の革命と合成染料
14 麻薬・覚醒剤・タバコ
15 石油に浮かぶ文明
16 夢の物質の暗転
17 人類は火の薬を求める
18 化学兵器核兵器
https://www.diamond.co.jp/book/9784478112724.html

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』

左巻健男/著 ダイヤモンド社 2021年発行

10 金属が生み出した鉄器文明 より

鋳鉄と鋼

溶鉱炉でつくられた鉄は銑鉄である。銑鉄から鋳鉄と鋼がつくられる。炭素含有率が約2パーセント以上のものが鋳鉄である(ほとんどの鋳鉄は3パーセント以上)。鋳鉄は溶融温度が低いため、溶融して液体状態にして必要な形の鋳型に流し込んで凝固されて、鋳物(いもの)として使われる。鋳型によって製品の形状・寸法に近いものを大量につくることができるのだ。
銑鉄から、転炉や平炉を用いて、炭素の含有率を4パーセント前後から2パーセント以下に下げる処理を加えて「炭素鋼(普通鋼)」がつくられる(ほとんどの鋼は1パーセント以下)。
炭素鋼は、含有されている炭素量が多くなると強さや硬さが増すが、その反面、伸びや絞りが減少する。鋼は熱処理(焼きなまし、焼き入れや焼き戻し)によって大きく性質を変えることも利点である。
炭素鋼(普通鋼)に対して、特殊鋼と呼ばれるものがある。マンガン、ニッケル、クロムやモリブデンなどの金属元素を添加したり、成分を調整したもので、強靭性、耐熱性、耐食性などに優れているので、普通鋼では耐えられない厳しい環境下で使われる。

「鉄は国家なり」

人類はかつて鉄鉱石や砂鉄を木炭と加熱してかたまりの鉄を得ていた。製鉄が始まると文明は鉄器文明として展開された。
19世紀には高炉法が発達し、コークスを用いて溶融した鉄を得られるようになった。そして炭素をふくむ量を変えることで種々の鉄鋼の大量生産を可能にしたのである。
「鉄は国家なり」という言葉がある。19世紀にドイツを武力で統一し、鉄血宰相といわれたビスマルクの演説に由来する。大砲や鉄道などに欠かせない材料として鉄鋼は国力の源泉であり、その生産量は現在でも国力を示す重要な物差しになっている。
ブリュッセルの世界鉄鋼協会の調べによると、2019年の世界粗鋼生産量は18億7000万トンに達している。中国が9億9630万トンで世界一の生産量を誇り、世界粗鋼生産量の半分は中国が占めている。
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日本の活路は、優れた鉄鋼材料の開発である。自動車産業においては、2度のオイルショックによる原油高を経て、軽量でしかも衝突安全性を両立できるような軽量化・高強度化を図り、世界の鉄鋼企業と共同で取り込んだスチール製超軽量車プロジェクトでは25パーセントの軽量化を達成した(2000年代初期)。

なお、製鉄の過程で排出される二酸化炭素の総量は年間約30億トン(世界の二酸化炭素総排出量の約9パーセント)にのぼっている。今後、鉄鋼業全体で省エネルギー化、脱炭素化が強く求められている。

レアメタル問題

金属材料をめぐっては「レアメタル問題」が存在する。レアメタルとは文字通り、レア(希少)なメタル(金属)のこと。レアメタルの「レア」は「工業的に必要だが手に入りにくい」という意味で使われている。鉄や銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなどのように、現代社会で大量に使用された生産量が多く、汎用性の高いベースメタル(コモンメタル)に対して使われる言葉だ。
レアメタルには、国際的な統一基準があるわけではない。レアメタルが手に入りにくい原因としては、埋蔵量が少ない、加工や精製が難しい、産出国が極めて少ないことなどがあげられる。日本では、レアメタルは、経済産業省が1980年代に指定した「存在量が少ない」「取り出すのが困難」などの基準による47元素とされている。天然元素約90種類の半分近くがレアメタルになる。埋蔵量が多くても、抽出が困難な金属もふくまれており、手に入れにくさに加えて、今後の工業用需要についても加味されている。
 [日本におけるレアメタル]
 リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウムゲルマニウム、セレン、ルビジウムストロンチウムジルコニウム、ニオブ、モリブデン、バラジウムインジウムアンチモンテルルセシウムバリウムハフニウムタンタルタングステンレニウム、白金、タリウムビスマス、希土類(レアアースネオジム、ジスプロシウム、ランタンなど17元素をふくむ)
レアメタルは、最新の工業技術にとても重要なはたらきをしていて、日本のものづくりにとって欠くことのできない重要な資源の総称だ。素材に少量添加するだけで性能が飛躍的に向上するため、「産業のビタミン」とも呼ばれている。おもな機能には、磁性・触媒・工具の強度増強・発光・半導体などがある。これらを利用した機器は携帯電話・デジタルカメラ・パソコン・テレビ・電池・各種電子機器などさまざまだ。レアメタルは、現在の私たちの暮らしをより豊かにするために必要な機器をつくるのに不可欠である。
たとえば、希土類のサマリウムなどを使った永久磁石の登場で、モーターの小型化を実現を実現。「軽薄短小」の電子機器が開発された。現在、最も強い磁力を持つといわれる永久磁石の「ネオジム磁石」は、主成分が鉄・ホウ素・ネオジムからなる。ネオジムも希土類だ。
レアメタルのおもな産出国は中国・ロシア・北米・南米・豪州・南アフリカなど。残念ながら日本には産出を誇れるようなレアメタルはない。
産出量1位である中国は、レアメタルを国家戦略の柱と位置づけている。
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中国の輸出規制により、日本は原料不足となり、生産に影響が出た。近年、日本はレアメタルの安定した供給のために中国への依存度を下げるべく、他国との協力関係を広げている。また、国家的な備蓄も進めている。
埋蔵量の限られた希少なレアメタルを有効に使うためにはリサイクルに加えて、同じ性能を持つもので代替して使用量を押さえることも必要だ。現在、レアメタルの代替技術の研究開発が進められている。