じじぃの「科学・地球_58_エネルギーの世界ハンドブック・EU・風力エネルギー」

Denmark - offshore wind power hub

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Gs_Q4RJPMmE

Wind power in the European Union

European Meteorological derived high resolution renewable energy source generation time series

17/11/2016 EU Science Hub
The EMHIRES (wind) database is a set of data that models how much energy the current installed wind farms in Europe have produced in every hour during the last 30 years.
https://ec.europa.eu/jrc/en/scientific-tool/emhires

『地図とデータで見るエネルギーの世界ハンドブック』

ベルトラン・バレ、ベルナデット・メレンヌ=シュマケル/著、蔵持不三也/訳 原書房 2020年発行

風力エネルギー より

殻粒を挽いたり、オリーブの実を圧縮するためにもちいられる風車の歴史は、中世までさかのぼる。近年、航空機の素材やパワー・エレクトロニクス[電力の変換技術]の発達によって、風力発電が飛躍的に発展している。今日、それによる電力コストはしだいに競争力を増しているが、風が不安定なため、蓄電のための現実的なソリューションがないという大きな問題をかかえている。

風力エネルギーの台頭

小規模な風力発電はおそらく19世紀末にはじまる。しかし、それは1970年代まで初歩的かつ周縁的なままだった。

第1次オイルショック[1973年]のあと、デンマーク風力発電のリーダーとなった。2015年、中国の金風科技[Goldwind]がこの分野の世界シェアの12.5%を占める最大の企業となる。次位はそれまで首位の座にあったデンマークのヴェスタス社で、シェアは11.8%である。さらにアメリカのGE Wind[GEニューアブルエネジー社の1部門]とドイツのSiemens社[シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジー]が続く。

主要な風力発電業者は出力2-6MWの装置をつくるが、今日市場に出ている最大のものは8MWである。最近の設定発電量の伸びはめざましく、2015年には2000年の25倍にもなっている。たしかに中国アメリカの伸びは最大だが、ヨーロッパでも伸びており、2016年の設備容量は石炭火力発電所のそれを超えるまでになった。2015年にはこの分野での雇用も世界全体で100万人以上となり、発電量は841TWh[1テラワット時=10億kW時]、つまり世界全体の電力量の3.5%にのぼっている。

断続的な風に対処するスーパーグリッド

風力発電はあらゆる国で支援を受けているが、その適地では、大規模な基地ないし施設の発電コストはほかのエネルギーと競合できるようになっている。当該地での風を需要に見あうように吹かせることはもとより不可能だが、そのため発電量は日によって30倍(!)も異なることがある。一定期間における平均電力の最大電力に対する比率を負荷率とよぶが[たとえば定格出力量100kWhに対して20kWhの出力だった場合、負荷率20%となる]、この数値の大きさは、エネルギー施設の収益性を産出するうえできわめて重要である。それによって、風力タービンが最大限稼働する時間が示されるからである。フランス各地では、この負荷率は20-25%程度だが、洋上では40%に達することもある。つまり、フランスないしベルギーの30GWのオンショア(陸上)風力発電所は、火力発電所の6GWに相当する発電量しかなく、しかもそれはオンデマンドではないのである。
こうした発電の不安定さに対処するため、ヨーロッパでは北海のスーパーグリッド(長距離送電網)を開発して、地上のスーパーグリッドと結びついた風力発電所につなぎ、これによって北の風力ポテンシャルを南の太陽光発電、さらに山岳地帯の水力発電と結びつけ、発展させることが課題となりつつある。
交流電流をもちいる古典的な送電網とは異なり、高圧直流送電線(HVDC)は導体利用率がよく、電力あたりの電流が小さいため、電圧降下・電力ロスを抑えられる(25%まで)。この送電網はおそらく再生可能エネルギーのシェアを高めると同時にCO2の排出量を減らしペルシャ湾岸諸国やロシアへのエネルギー依存を小さくすることができるだろう。ただ、この計画には多大なコストがかかる。とすれば、それを実現するための資金をどう調達し、現実にヨーロッパ全体にかかわるエネルギー政策がない状況にあって、そのコストをどう分担し、のちに計画が実現したとしても、国によってかなり異なる電気料金をいかに設定するかという問題が出てくるだろう。