じじぃの「科学・地球_45_SDGsの世界ハンドブック・水資源利用の不平等(格差)」

再生可能な内部淡水資源別上位国

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NnJjWR5s_1I

Proportion of population using improved drinking water sources (%), 2000

31 Dec 2015 ReliefWeb
https://reliefweb.int/map/world/proportion-population-using-improved-drinking-water-sources-2000

『地図とデータで見るSDGsの世界ハンドブック』

イヴェット・ヴェレ、ポール・アルヌー/著、蔵持不三也/訳 原書房 2020年発行

19 持続可能な開発からほど遠い不平等な世界 より

地球上に住む人々のあいだにはつねに大きな不平等(格差)が存在してきたが、その一部はなおも増幅しつづけている。25年前には最貧困層(10%)の約7倍であったOECD諸国における最富裕層(10%)の可処分所得の平均は、今日では約9.5倍となっている。衛生環境や食生活の分野において改善こそみられるものの、社会的不平等は顕著である。極度の貧困状態で暮らす人々の数はここ30年で10億あまりに減少した(世界銀行調べ)。2005年から2015年にかけての10年間で、栄養失調状態にある人々の数は10億から8000万になった。とはいっても、環境問題(生物多様性の劣化、気候変動ないし温暖化、海洋汚染)は山積しており、これらは不適切で容認しがたい管理の仕方に起因する。人類全体としては持続可能な開発のスタンダードから今もほど遠い状況にあり、最貧困層は社会的・経済的な機能障害のあおりを真っ向から受けている。それゆえ、貧困の削減と根絶は持続可能な開発目標の核心をなすものといえる。

40 水資源利用の不平等 より

世界における再生可能な資源としての淡水(400億km3/年)の分布は不均衡である。しかし、水へのアクセスにかんする不平等(格差)は、資源の不足より、むしろ政治的・経済的状況に負うところが大きい。水資源の管理は、地球温暖化の影響でさらに悪化する可能性のある国際関係の緊張のもととなりうる。一方、トイレがないためにまちまちに処理されている汚水や廃水は、地球の環境とそこに住む人々に思わしくない影響をあたえている。

不平等に分配された資源

淡水が地球上に存在する水全体の量に占める割合は2.8%である。再生可能な天然資源としての淡水の60%近くは、ブラジルやロシア、インドネシア、カナダ、アメリカ合衆国、コロンビア、ペルー、インドの9つの水大国が有している。
その一方で、クウェートバーレーンアラブ首長国連邦、マルタ、リビアシンガポール、ヨルダン、イスラエルキプロスといった国々にはわずかな水資源しかない。80ヵ国にちらばった11億の人々は安全な水を利用できる環境になく、一部の国では人口の40%以下がこのような状況下にある(カンボジア、チャド、エチオピアモーリタニアアフガニスタンオマーンなど)。利用可能な水資源の量は年間で住民1人あたり8万m3以上(ノルウエー、ガボン、カナダなど)から500m3以下(マルタ、イスラエルなど)までと幅がある。年間平均降水量に対する国の水の所有比もまた、ベネズエラの1%からサウジアラビアリビアにおける100%以上(利用指数)までと幅広い。
WHO(世界保健機構)は1人あたりの年間使用可能水量が1700m3を下まわる状態を「水ストレス」、1000m3をきる状態を「水不足」と定義している。人口と需要の増加にくわえて、気候変動の影響により、近い将来使用可能な水の量がすでにかぎられている国々の状況のさらなる悪化が起こりうる。こうした水不足を地域、地方、国際的レベルで測定する総合的指標のWPI(水貧困指数)には、身体的、社会経済的、生態学的視点からなる5つの下位指標がふくまれている。

資源不足によらない水の供給不足

水資源が存在しているからといって、住民すべてにそれが適切にいきわたっているわけではない。飲料水の不足は政治的・社会的状況によってひき起こされているからである。2010年、国連総会において飲料水と衛生に対する権利が基本的人権のひとつであることが承認された。だれもが個人および家庭で使用するために、十分かつ継続的、安全に、許容可能で手ごろな価格の水にアクセスできる権利をもっているのである。

水の質における不平等

2015年には、世界の人口の71%が安全に管理された、そしていつでも利用できる汚染されていない飲料水の供給サービスを利用し、89%が往復30分以内の距離に改善された水源[外部からの汚染、とくに人や動物の排泄物から十分に保護される構造をそなえている水源]を確保できていた。それに対し、8億4400万人は水の基本的供給サービスを受けられていない。

トイレの欠如は諸国際機関により考慮され、11月19日が世界トイレの日に定められたが[2011年]、世界の23億の人々はなおもこの衛生設備を欠いた状態で生活している。こうした状態は汚染のみならず、病気の蔓延にも重大な影響をおよぼす。これによって深刻な影響を受けるのは男性より女性であり、このことが男女間の不平等をさらに拡大させるのである。

20億人の人々は下痢やポリオ、コレラ、腸チフス、肝炎などを媒介しうる排泄物で汚染された水源を使用している。熱帯地方では多数の虫が水中に生息し、水中で繁殖する。これらの害虫は病気(デング熱)の媒体となりうる。2億4000万人が汚染された水に体をひたし、寄生虫に起因する住血吸虫症に苦しんでいるのもその一例である。消費される水が殺虫剤などの殺菌剤、さらには工業関連の化学物質に汚染されている可能性もある。