じじぃの「科学・地球_42_SDGsの世界ハンドブック・人間開発指数(HDI)・不平等」

World Human Development Index[HDI] Ranking (1990~2019)
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PmKaq3WaRw4

日本の「豊かさ」19位、国連 首位ノルウェー、目立つ欧州

2020/12/15 共同通信
国連開発計画(UNDP)は15日、2020年版の「人間開発報告書」を発表した。
国民生活の豊かさを示す「人間開発指数HDI)」の世界ランキングでは日本が19位で、前年の20位と比較してほぼ横ばいとなった。首位は前年に続きノルウェーだった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/26d6d7e7c95fb1e36273d0e000e44dcda7bef577

『地図とデータで見るSDGsの世界ハンドブック』

イヴェット・ヴェレ、ポール・アルヌー/著、蔵持不三也/訳 原書房 2020年発行

19 持続可能な開発からほど遠い不平等な世界 より

地球上に住む人々のあいだにはつねに大きな不平等(格差)が存在してきたが、その一部はなおも増幅しつづけている。25年前には最貧困層(10%)の約7倍であったOECD諸国における最富裕層(10%)の可処分所得の平均は、今日では約9.5倍となっている。衛生環境や食生活の分野において改善こそみられるものの、社会的不平等は顕著である。極度の貧困状態で暮らす人々の数はここ30年で10億あまりに減少した(世界銀行調べ)。2005年から2015年にかけての10年間で、栄養失調状態にある人々の数は10億から8000万になった。とはいっても、環境問題(生物多様性の劣化、気候変動ないし温暖化、海洋汚染)は山積しており、これらは不適切で容認しがたい管理の仕方に起因する。人類全体としては持続可能な開発のスタンダードから今もほど遠い状況にあり、最貧困層は社会的・経済的な機能障害のあおりを真っ向から受けている。それゆえ、貧困の削減と根絶は持続可能な開発目標の核心をなすものといえる。

24 人間開発指数HDI)――世界におけるさまざまな不平等

人間開発指数[社会の豊かさや発展の度合いを、経済的側面からのみならず、人間それぞれが、みずからの選択にもとづいて創造的人生を営める環境が整っているかどうかの観点から測ろうとする試みで、健康・教育・生活水準の分野における達成度から導かれる指標。国連開発計画(UNDP)により毎年算出・報告される]が示すように、世界を見渡してみると、国家間においてまぎれもない不平等が存在する。それはまた国家間のみならず、一国の内部にもあきらかに存在する。開発途上国の貧困の度合を測定するためにも使用される人間貧困指数(HPI)[基本的な人間開発の剥奪の程度は、寿命、教育、人間らしい生活水準、社会的排除などの観点から測定した指数。開発途上国を対象とする指数(HPI-1)と先進国の貧困の測定にもちいられる指数(HPI-2)がある]に代わって採用された、多次元貧困指数[MPI。所得・消費水準だけでなく、教育・保健サービスへのアクセスなどをふくめた複数の視点から貧困の実態を把握するための指標]によっても、途上国における貧困がなおも顕著であることが示されている。

人間開発指数は世界に存在している不平等を認識する手助けとなる。たとえば、世界の人口の80%を占める貧困国が世界の富の20%を占めるにすぎないのに対し、産業化の進んだ富裕国(世界人口の20%)はその80%を所有しているのである。この指数は国連開発計画[貧困の根絶や不平等の是正、持続可能な開発などを担う国連の主要な開発支援機関。1965年設立]が1990年に考え出したもので、これにより平均寿命や教育水準、所得の3つの側面から世界の国々(189ヵ国)の人間開発の度合をランクづけしたり、クラス分けしたりすることが可能となった。

評価は0から1のあいだの数値(0がもっとも厳しい状況、1が最高の状態を表わす)でなされ、測定対象の国々はこの数値にもとづいて4つの段階(人間開発の水準が「非常に高い」、「高い」、「仲程度」、「低い」)にカテゴライズされる。

世界における貧困

世界における貧困は、国連開発計画が1996年に導入した、人間貧困指数(HPI)によって読み解くことが可能である。この指数は健康・衛生、教育、生活水準から導き出されるが、生活水準のなかに所得はふくまれず、開発途上国と先進国は異なる方法で計算がなされる。途上国にかんしては、40歳前に死亡する確率、成人の非識字率、安全な飲料水を利用できる人々の割合、栄養不足状態にある子どもたちの割合、先進国については、60歳以前に死亡する確率、成人における読解力障害、貧困ライン以下で生活を営む人口の比率、長期にわたる失業などが基準とされる。多次元貧困指数は、オックスフォード貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)[2007年に多次元貧困の削減をめざして設立された、オックスフォード大学国際開発学部内の経済研究・政策拠点]と国連環境プロジェクトにより、途上国の貧困状況把握のため、人間貧困指数に代わるものとして2010年に提唱された。
就学年数、就学率、栄養不良、乳幼児死亡率、住居・衛生設備の環境、飲料水・電力へのアクセス、炊事用燃料、交通・コミュニケーション手段の保有といった、教育・保健衛生・生活水準の分野における欠乏が積算される。この指数の算出には経済的側面にかぎらず、人々を苦しめているさまざまな深刻な欠如状態も含まれる。104ヵ国、52億の人々(世界の全人口の78%にあたる)を調査対象とした多次元貧困指数によると、17億人が複数次元の貧困のなかで暮らしており、その51%が南アジア、28%がアフリカにいるという。「伝統的な」指数によって得られた結果は、新しい指数により、エチオピアにおいては39%から90%に、パキスタンでは23%から51%に、ニジェールではその人口の3分の2から93%に修正された。