じじぃの「科学・地球_29_世界史と化学・ビール・ワイン・蒸留酒」

Beer, the most popular drink in ancient Egypt

Beer, the most popular drink in ancient Egypt

23/02/2020 historicaleve.com
With regard to this last matter, it should be noted that for a long time beer was the authentic national drink of the country.
Unlike wine, which was considered a luxury product in the country (just as it is done today, in Ancient Egypt it was also bottled indicating its origin, the year of harvest and even the name of the winegrower), the beer was abundant and cheap.
https://historicaleve.com/beer-in-ancient-egypt/

ダイヤモンド社 絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている 左巻健男(著)

【目次】
1  すべての物質は何からできているのか?
2  デモクリトスアインシュタインも原子を見つめた
3  万物をつくる元素と周期表
4  火の発見とエネルギー革命
5  世界でもっともおそろしい化学物質
6  カレーライスから見る食物の歴史

7  歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒

8  土器から「セラミックス」へ
9  都市の風景はガラスで一変する
10 金属が生み出した鉄器文明
11 金・銀への欲望が世界をグローバル化した
12 美しく染めよ
13 医学の革命と合成染料
14 麻薬・覚醒剤・タバコ
15 石油に浮かぶ文明
16 夢の物質の暗転
17 人類は火の薬を求める
18 化学兵器核兵器
https://www.diamond.co.jp/book/9784478112724.html

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』

左巻健男/著 ダイヤモンド社 2021年発行

7 歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒 より

ビールは給料にもなった

ビールは穀物が原料である。かつての人類は、ビールを皮袋や動物の胃袋、くり抜いた木や石、大型の貝殻などでつくっていた。

紀元前4000年までには近東一帯に普及しており、発祥の地はティグリス・ユーフラテス川流域のメソポタミア平原とされている。

ビールへの欲求から農業が本格化したという見方がある。原料を野生の穀物の採集に頼ったままでは安定してビールをつくることはできない。そこで、耕作で穀物を確保すべく、「栽培」をするようになったというのだ。
紀元前4000年頃の現代のイラクにあたるメソポタミアの土器に、2人の人物が大きな陶製のかめからストローでビールを飲んでいる姿が描かれている。当時のビールには、穀物の粒や殻、その他のごみが浮かんでいたので、飲むためにはストローが必要だったのだ。読者の誤解がないように補足しておくと、「ごみ」といっても沸騰した水を使ってつくるので煮沸殺菌はされており、安全性の高い飲み物だったのである。
紀元前3000年頃、メソポタミア文明を開いたシュメール人はムギ類の栽培を行った。
麦芽をつくって乾燥させ、これをコムギの粉に混ぜて、パンに焼き上げたあとに砕いて湯で溶き、自然発酵によってビールをつくったという。農業を中心とした定住生活をするようになると、余剰穀物のおかげで農業に従事せずに、別の仕事をする人々も出てくる。かれらの給料はパンとビールで支払われた。たとえば、紀元前2500年頃、エジプトのピラミッド建設の労働者への標準的な配給はパン3~4斤とビール約4リットルだった。国家が穀物を貢ぎ物として集め、労働の対価として再分配したのである。

酵母と発酵

お酒のアルコール(エタノール)をつくるのは、酵母という微生物の一種である。
生物に菌類(真菌類)というグループがある。見た目はカビ・酵母・キノコに分けられる。つまり酵母はカビやキノコと近い。カビ(糸状菌)は、胞子が発芽すると数日でみるみる糸状の菌糸が放射状に枝分かれしながら伸びていく。そして菌糸の先端に胞子をつくり、飛散させるのだ。
酵母は100分の1ミリメートルほどの大きさの単細胞生物で、球形や楕円形、ソーセージ形などさまざまな形をとり、出芽や細胞分裂で増える。カビとは違って酵母の細胞はふつう糸のようにつながっていない。酵母が増えると、ばらばらの細胞が集まって、球形の粘性のあるかたまりとなる。
しかし、酵母のなかには、人の常在菌のカンジタのように生育条件が変わるとカビのように糸状に生えるものもあるので、カビと酵母の区別は曖昧だ。それでも酵母は発酵などで重要なものが多いので、実用上、カビとは区別されることが多い。
ビール、ワイン、日本酒、パンは、サッカロミセス(サッカロマイナス)・セレビシエという酵母のはたらきによってつくられている。同じ酵母でも菌株はそれぞれに適したものを使い、たとえばビールに使う酵母ビール酵母という。
酵母サッカロミセス・セレビシエは、ブドウ糖を好んで食べ、アルコールと二酸化炭素にする。なお、サッカロミセスはギリシャ語で「砂糖と菌」、セレビシエはラテン語で「ビール」という意味になる。
酵母麦芽糖ブドウ糖をもとに発酵するが、デンプンをもとにも発酵できない。ワインはブドウの果汁にブドウ糖を多くふくみので、そのままワイン酵母で発酵させることができるのだ。

錬金術師と蒸留酒

蒸留という操作は、物質の沸点の違いを利用して、いったん気体にしてから、それを冷やして物質を分ける方法である。
蒸留には、レトルトというガラス器具がよく使われた。球状の容器の上に長くくびれた管が下に向かって伸びている形をしている。液体を入れて球状の部分を加熱すると、蒸気が管の部分に結露し、管をつわって取り出したい物質を容器に集めることができる。レトルトは錬金術で広く用いられた。
中世の錬金術師によって蒸留酒をつくる技術は確立された。強い蒸留酒は、何度も蒸留をくり返してつくられた。最初の蒸留では「燃える水」といわれる約60パーセントのアルコールが得られる。蒸留をくり返すと、「アクアヴィテ(生命の水)」と呼ばれる96パーセントくらいのアルコールになる。僧侶や薬剤師は、アクアヴィテに薬草などを溶かし込んだりして貴重な薬として扱った。そのため、ヨーロッパを襲ったペストはアクアヴィテ、つまり蒸留酒が普及するきっかけになり、ペストの流行が去った後も蒸留酒を飲む習慣が残った。