【BS】『日米声明に中国が反発台湾周辺で増す緊張度“有事”日本の備えは』 2021年4月20日
台湾周辺で増す米中の緊張 “有事”日本の備えは?
プライムニュース 「日米声明に中国が反発 台湾周辺で増す緊張度 “有事”日本の備えは」
2021年4月20日 BSフジ
【キャスター】新美有加、反町理 【ゲスト】河野克俊(前統合幕僚長)、村井友秀(東京国際大学特命教授 防衛大学校名誉教授)、興梠一郎(神田外語大学教授)
台湾周辺の緊張が高まっている。台湾の「防空識別圏」に連日、多数の戦闘機を侵入させている中国。今月に入り、米中両軍の空母部隊が同じ海域に展開するという“異例”の状況も生まれている。
双方の意図・狙いは何なのか。偶発的な衝突に至る危険性はないのか。もし台湾で有事が起きた場合、日本にとって決して“他人事”ではない。
こうした情勢の中、16日に開かれた日米首脳会談では、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と明記された。日米首脳会談の文書に台湾情勢が盛り込まれるのは、1972年の日中国交正常化以降では初めて。即座に中国側は「内政干渉」だと強い反発を示している。
中国は、さらに軍事的行動を活発化させることになるのだろうか。出方次第では、日本も相応の“覚悟”が問われる事態も懸念される。
台湾周辺で増す米中の緊張 “有事”日本の備えは?
●日米首脳声明と中国の反発
中国・習近平国家主席は「一国またはいくつかの国が決めた規則を人に押し付けてはいけない。一国主義で世界を扇動してはならない」と述べ、中国の人権問題への懸念や台湾に言及する共同声明を発表した日米両国を名指しは避けつつけん制した。
一方で、習主席は「アジアの重要な一員として中国は絶えず改革開放を深め、地域の協力を積極的に進める」などとも述べていて、日本との関係を意識した発言とみられる。
日米首脳会談の共同声明で対中国について「ルールに基づく国際秩序に合致しない行動に懸念を共有」、日米同盟について「日本は同盟および地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意」という文言が盛り込まれた。
菅首相は日米首脳共同会見で「(共同声明は)今後の日米同盟の羅針盤となるもの」と述べた。
河野克俊、「日米同盟について、『日本は同盟および地域の安全保障』を前面に出した。今までは日本防衛のための日米安保だったが、今後は地域の安定と平和を共に創造していく日米安保に発展していくということを意味しているし、そうあるべきだと思っている。中国が軍事的解決をすることを抑止しないといけない。その体制を日米で協力して作り上げるということ。戦争を起こさないための抑止力について日本も公言していく。日本の防衛だけを考えるのではないということを示していると思う」
村井友秀、「声明の中に『国際関係の正しいルールに則って行動する』とある。台湾問題に関して正しいルールとは、台湾が中国の一部なのか独立するのか、その他の道があるのか、決めるのは米国、日本、中国共産党でもない。台湾の人が決めるというのが今の国際関係の正義。それを実現するために一歩進んだ」
●日本の安全保障と台湾の存在
台湾は中国の軍事戦略上の防衛ラインと言われる第1列島線の内側にある。
日本の最西端の与那国島から約110km、尖閣諸島からは170kmの距離にある。
村井友秀、「台湾と日本は運命共同体とか、非常に重要なポイントだと言われる。今から約400年前に豊臣家と徳川家康が戦って豊臣家が滅びた大坂の陣の時に、大坂城が最初の冬の陣で頑張れたのは大阪市くらいの大きな外堀があったから。その後、徳川家康の計略に乗って外堀を埋めてしまった。翌年、関東勢が攻めて来た時に全く守れずに城が落とされて豊臣家が滅ぼされた。大坂城を守るのは大坂城の本丸だけを守るのではなく外堀を守ることが本城が生き残る一番大事なポイント。日本という本丸を守るためには台湾という外堀がないと、日本の安全は非常に危機になると思う」
●“有事”日本の備えは?
村井友秀、「中国のことわざに『流れに逆らって自分の位置を保とうとしたら前に進まないと流されてしまう』というのがある。その場所にとどまるというのは何もしないのではなく前に進まないといけない。そういう状況に日本が置かれているのは客観的事実」
河野克俊、「日米安保の対象は冷戦中はソ連だった。ソ連が崩壊した後、日米同盟は特定の国は対象にしていない。周辺事態法やミサイル防衛は北朝鮮を対象にして議論していた。日本は北朝鮮について言いやすかった。中国が脅威とは言いにくかった。今回の声明を見ると、日米安保の対象が中国になった初めてのケース」
興梠一郎、「クアッドはアジア版NATO。ヨーロッパのNATOは対ロシア。米国はクアッドに韓国を入れたがっているが、韓国は中国を怖がって入らない」
今月、台湾周辺での中国軍の動きが活発化。
きのうまでの19日間で16日が対話の防空識別圏(ADIZ)に侵入(最大25機/日)。
空母「遼寧」などの艦隊が4日~10日に台湾東方海域で訓練。
興梠一郎、「中国の報道を見ていると、彼らの主張は逆。中間線を越えた時に米国高官の台湾訪問があった時に軍用機が入ってきた。中間線は長らく越えていなかったのに越えて見せた。それを常態化していくという尖閣と同じ」
河野克俊、「米国が台湾に対しアクセスしてきている。それを看過できないと示している」
村井友秀、「中国は台湾を威嚇している。台湾に対して自分たちが一番優位に立っている点は軍事力。外交も軍事力で優位な分だけ外交も有利になると考えている。問題は台湾はそう考えていない」
●米中“緊張の海域”画像
米国海軍ミサイル駆逐艦「マスティン」から撮影した中国空母「遼寧」の写真を紹介(米国海軍公式HPより)。
河野克俊、「同時期にたまたま航行していたのか、いずれにしても我々は情報収集しているということを示すために、常に監視しているということを示すためにあえて公開したんだろう。『遼寧』は練習用の空母で第一線に投入する空母ではない。海上自衛隊は周りに中国の船がいたとしても、適切なところにポジショニングして情報収集をしているということだと思う」
●台湾侵攻「6年以内」現実性
台湾有事の可能性と日本の対応について。
米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月9日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、急速に軍事力を増強する中国が今後6年で台湾に侵攻する恐れがあるとの認識を示した。
中国が「国際秩序における米国の指導的役割を取って代わろうとしている」と危機感をあらわにし、日本など同盟国との連携を深めて対抗する姿勢を示した。
河野克俊、「今の軍事バランスが米国側の不利になる。このままいくと習政権は2023年からの3期目に突入することができなくなる可能性もある。今までの2期10年を超えるにはそれなりの理屈がいると思う。台湾との再統一を果たすことで毛沢東国家主席並みの地位を獲得しようとしている。4期目も狙うということと、米国の軍事バランスが劣勢になっていることを勘案してこういうことを言ったのでは」
村井友秀、「可能性はある。もう1つ考えないといけないのは軍事バランスの問題。数年前に駆逐艦の艦長と話した時に中国の遼寧なんかは七面鳥を撃つようなもので簡単だと言っていた。米国軍の一定程度の人はそんな風に見ている。米国軍が不利になっていることはない。中国海軍の船は退役するものが多い」
デービッドソン司令官は2020年12月16日、声明を発表し今週に予定されていたオンラインでの高官協議に中国側が姿を見せなかったとして、「中国は約束を順守しないという新たな事例だ」と批判した。
河野克俊、「ミサイルを中国は優れたものを持っている。米国軍の行動がけん制されるという懸念はある。遼寧というのはスキージャンプ方式。飛行機がジャンプ台のように上がるやり方。米国は蒸気や電気ではじき出す。空母は戦力化するのは相当の体力と実力がいる」
興梠一郎、「去年の中国共産党委員会で、突然戦争の準備をしろということを言いだした。米国の論調を見ると2つに分かれている。パパブッシュのスペシャルアシスタントをしていた人が論文を書いている。なぜ米国が危機感を持ち始めたか。習近平はアグレッシブだ。オバマに対して既に南シナ海の2ヵ所で埋め立てを進めている島を軍事化しないとの約束を破った。香港の1国2制度も約束を破った。チベット、ウイグル族への弾圧、インドへの侵攻など習近平になってから中国は拡大主義に変わった。武力統一の可能性を真剣に考えないといけないと書いている。デービッドソン司令官を批判している論文もある。軍事専門家ではないが、台湾がWHOに入れるようにするなどの戦略を言っていて、共通しているのは今のまま放っておいたら危ないと言っている」
●台湾有事と日本の安全保障
台湾有事に備えて日本はどういう備えをするのか。
河野克俊、「日本は議論が混乱する場合がある。平和的に解決するのは大前提。しかし実らずに戦争になることがある。日本は米中の仲介をするべきとか、平和的にするべきにという話になる。必ず議論を切り分けて、外交を失敗した場合のことを考えないといけない。自衛隊は法律に書いていることしかできない。後方支援をやるということは中国から見たら日本は参戦していることになる。尖閣は台湾の一部だと言っている」
村井友秀、「中国軍が台湾を戦略しようとして攻め込んだ場合、日本や米国が介入してこないという保証があった時に攻め込む。日本領を侵攻しようとしたら、日本も米国も参戦する。考えないといけないのは、中国が何らかの取引をすること。介入しないように外交的駆け引きをする。その時に日本の世論は混乱する」
興梠一郎、「蔡英文総統は非常に勇ましい。台湾をハリネズミにしろと言っている。今、長距離巡航ミサイルを米国が台湾に売ろうとしている。中国は武器を持っていないところとまともに対話しない」
【提言】 「台湾周辺情勢と日本の防衛」
河野克俊 「当事者意識」
台湾と日本は民主国家。台湾の存在は日本の国益になる。台湾の存在は日本そのものだ。
村井友秀 「大坂城外堀」
大坂の陣の時と同じように台湾は外堀だ。中国は台湾を取ったら尖閣に来る。外堀を守ることが大事だ。
興梠一郎 「米中関係の陰と陽」
日米首脳会議をやっている時に、ケリー(大統領特使)は中国に行った。日本は尖閣は日本の領土だと言っているのにバイデンは曖昧戦略をとっている。台湾に対しても同じやりかたをしている。
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