Gravitas: A new global supply chain to counter China
「千人計画」 五星紅旗が人材を集める
「千人計画」の真相――習近平の軍民融合戦略で変容
2020年10月22日 遠藤誉
2008年に始まった千人計画は人材養成のための外国人専門家募集事業だったが、習近平の「軍民融合戦略」が始まって以来、完全に姿と目的を変えてしまった。1996年に始まった帰国中国人元留学生との違いも明確にする。
https://grici.or.jp/1706
習氏「世界の中国経済依存高めよ」…制裁発動に対抗、共産党会議で指示
2020/11/01 読売新聞オンライン
中国の習近平シージンピン国家主席が、今年4月に開かれた共産党内の会議で、国際社会の経済面での中国依存を高め、外国による部品などの供給停止に対抗できる「強力な抑止力」を持つように指示していたことが明らかになった。1日発行の党理論誌「求是」が、習氏による会議での演説の全内容を伝えた。
習氏は演説で、世界のサプライチェーン(供給網)などを巡り、「我が国への依存関係を強め、(中国に)供給を停止する外国への強力な反撃・抑止力を形成しなければならない」と主張した。「奥の手となる技術を磨かなければならない」とも語り、通信設備や電力施設などの分野を重視する考えを示した。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20201101-OYT1T50157/
問題 「去年のEUの最大の貿易相手国は?」
・日本
・中国
・米国
正解 中国
【池上彰さん解説】
「中国の正月『春節』。去年、中国の春節に中国メディアは『中国が米国に取って代わり、初めてEU最大の貿易相手国になった』と報じました。1位 中国、2位 米国、3位 英国。2020年のEUの対中貿易は約75兆円に達したのに対し、対米国は約71兆円でした。中国はさらに経済を開放し、他の国々によりよい機会を提供するとしています。習近平国家主席は共産党幹部らとの会議で『国際的なサプライチェーン(供給網)の中国への依存を高めさせ、外国への強力な反撃力を形成せよ』と指示。中国経済に世界を依存させ有事の際、中国に経済制裁を発動する国に対して報復できるようにしたものです。この指示は去年11月に突然発表されました。米国大統領選直前のタイミング。米国を念頭にした対中政策にはすぐに報復するという牽制です。中国は新型コロナの発生源について独立調査を求めたオーストラリアに、輸入規制措置をとりました」
第3章 2008年「千人計画」と2012年「万人計画」 より
中国共産党機関紙「人民日報」の2018年4月17日付の電子版「人民網」によれば、改革開放後に中国から出国した中国人留学生の数は、2017年時の統計で516万4900人で、そのうち313万2000人が学業を終えて中国に帰国してきた。
その一方で、習近平政権になってから帰国した留学人員(元中国人留学生)の数は231万3600人で、彼らはみな学業を終えてから帰国している。今年2018年は改革開放40周年記念になるが、習近平政権が誕生したのは2012年11月に中共中央総書記、2013年3月に国家主席になったことを考えると、おおむね6年間。わずか6年間の間に帰国した留学人員の数が40年間かけて帰国した中国人留学生の数の73.87%を占めていることになる。如何に習近平政権に対して、留学生たちが期待をしているかの証拠だと、新華社は強調している。
これらは「中国人」の留学生だが、実は胡錦濤政権の2008年から始まった人材集めである「千人計画」は、「ハイレベルの外国人の頭脳」を同時にヘッド・ハンティングせよという戦略だということに特徴がある。中には民族的には中華民族であるが、国籍としてアメリカやフランスあるいはドイツなど、外国籍を持っている者も含めている。
そのため「千人計画」は、途中から「外専千人計画」と呼ばれるようにもなった。「外専」とは「外国人(&外国籍中華民族)の専門家」という意味だ。その中には日本の大学の研究者がいることも注目される。
同じ胡錦濤政権譜代の最後の年である2012年に始まった「万人計画」とともに、これらの計画のもう1つの特徴は、「外国の大学や研究所におけるハイレベル学者」を「中国の大学や研究所に招聘する」ということである。
それは「人材の持続性」を保つためだ。
その場限りの人材を[2025]のために集めても、その人材たちにだって年齢的な限界があり、次世代が育たない。すなわち、これらは次世代を育てるという目的も持った国家戦略なのである。