じじぃの「歴史・思想_478_腸と脳・猛威を振るうアメリカ的日常食」

Mediterranean Diet - What I Eat in a Day

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=exDYCPr9lqk

Mediterranean diet

Mediterranean diet with extra virgin olive oil linked to weight loss

February 27, 2018 About Olive Oil
Good fats in olive oil, nuts, and fish are beneficial for our health, and science is continually proving this to be the case. Recent studies have shown that consuming a Mediterranean diet with extra virgin olive oil leads to lower rates of cardiovascular diseases and cancer. And now there is evidence that the healthy fats in olive oil is linked to weight loss.
https://www.aboutoliveoil.org/olive-oil-leads-to-weight-loss

腸と脳―体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 紀伊國屋書店

エムラン・メイヤー/著 高橋洋/訳
腸と脳のつながりを研究し続けてきた第一人者が、腸と腸内の微生物と脳が交わす緊密な情報のやりとりが心身に及ぼす影響や、腸内環境の異変と疾病の関係などについての最新知見をわかりやすく解説する。
健康のための食事や生活についての実用的アドバイスも必読。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784314011570

『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』

エムラン・メイヤー/著、高橋洋/訳 紀伊國屋書店 2018年発行

第9章 猛威を振るうアメリカ的日常食 より

すばらしい新食品

私はここまで、人類が進化のプロセスを経て、動物性タンパク質の多い食事と植物性食物主体の食事を、入手の容易さに応じて切り替えられるようになった経緯を述べてきた。また、この能力が、腸内微生物と、それが持つ膨大な数の遺伝子、さらには、食物に含まれる成分を検出して有益な代謝物質に変えることで、私たちの代謝作用を食事の転換に適合できるようにする微生物の能力に依存していることについて述べた。しかし、ヤノマミ族やハッツァ族の食習慣に見たように、私たちの祖先は、食物の入手が困難環境で生きていただけではなく、脂肪分の多い食物がほとんど手に入らず、精製糖など存在しない環境のもとで暮らしていた。要するに、今日のアメリカ的日常食の登場は、進化にとっては晴天の霹靂(へきれき)なのだ、そのために私たちの「脳+腸+マイクロバイオ―ム」相関も、アメリカ的日常食の影響に対処する準備が十分に整っていない。
消化器系が、可燃物なら何でも燃やせるタービンエンジンのようなものなら、あなたが何を食べようがきちんと消化されて、代謝されるはずだ。事実、食品産業では消化器系を「エンジン」にたとえるものが流行っている。形状、味覚、香りが魅力的で「食品」の範疇に入りさえすれば、消費者はどんなものでも喜んで買う。そう考えられているのだ。だが、身体内外の環境の恒常的な変化に、私たちの行動や身体をつねに適合させようと、試みるスーパーコンピューターとして「脳+腸+マイクロバイオ―ム」相関をとらえれば、現在何が起こっているのかを正確に見抜けるようになるだろう。

地中海式食事法の再発見

私は2年前、イタリアはマルケ州の州都アンコーナのすぐ南に位置する、アドリア海に面した小さな町フェルモで有機ワイナリーを営む友人マルコ・カバリエリと愛らしい妻アントネラを訪ねた。かの地では、ブドウやオリーブの木、そして黄色く輝くヒマワリが植わる小さな畑で覆われたゆるやかにうねる丘と、青い海へとなだらかに落ち込む小麦畑に目を奪われた。
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栄養学の専門家のあいだでは、はやりの食事法(ダイエット)とは異なり、地中海式食事法や、それに類する食習慣には、健康にもたらす恵みがあるという見解が広く共有されている。伝統的な地中海式食事法は、ギリシャやローマが支配していた地域ではじまり、のちには地中海沿岸のアラブ・アフリカ諸国から新たな知見を取り込みながら、2000年の時を経て発展してきた。このように、外部からのさまざまな影響を受けることによって、地中海沿岸の各地域で栽培、加工、消費される作物の多様性が格段に高まったのである。典型的な地中海式食事法には、少なくとも5ポーション[ポーションは栄養学で用いられている単位]の野菜、1~2ポーションのマメ類、3ポーションの果物、3~5ポーション穀物、5ポーションの植物油(オリーブオイル、アボカド、木の実、種子)が含まれる。また週に3~4回海産物が食卓に並び、赤肉[赤や暖色系の肉で、主に哺乳動物の肉を指す]は週に2回以上は食べない。地中海式食事法が健康へもたらす恵みは、メイヨークリニック研究員アンセル・キーズが率いる研究チームが1950~60年代に行なった7ヵ国研究で、初めて系統的に調査された。この研究の被験者には、マルコが有機ブドウやオリーブを育てているマルケ州の、モンテジョルジョの住民が含まれる。地中海式食事法の実際の内容は国や地域によって異なり、また、7ヵ国研究が実施されたころとは、食習慣に関する細やかな内実がかなり変わってきてはいるが、(おもにオリーブオイルから得られる)モノ不飽和脂肪酸の摂取量が多く、果物、野菜、全粒穀物低脂肪乳製品、適量の赤ワインを毎日とり、週に一度は魚類、家禽類、木の実、マメ類を食べ、赤肉はたまにしか口にしないという基本パターンは変わっていない。
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地中海式食事法は、ヤノマミ族やハッツァ族の先史時代の食習慣、あるいは魚菜食主義や菜食主義などの今日実践されているいくつかの健康食と同様、動物性食物に比べて植物性食物の割合が高い。植物性のものを主体とする食事の場合、複合炭水化物のレベルの高さに加え、高レベルのポリフェノールが、マイクロバイオ―タ(ある環境中の微生物)に良い影響を及ぼすことが現在ではわかっている。ポリフェノールは、新鮮なオリーブオイルの日々の摂取からのみ得られるのではない。健康を増進するこの化合物は、地中海式食事法の必須の素材である。木の実、果実、赤ワインにも含まれる。最近行なわれた小規模な研究では、赤ワインの摂取が、マイクロバイオ―タの構成に良好な影響を与えることが示されている。
多くの研究が地中海式食事法の瞠目すべき恩恵を実証しているとはいえ、食事には、科学では測定しきれない側面があることを忘れてはならない。食卓を囲むことによって得られる社会的な絆の感覚、そしてそれを楽しむ姿勢は、実証的に評価できる類のものではない。しかし私たちのフェルモ滞在が1つの指針になるとするなら、実証的には評価できない要因のそれぞれも、地中海式食事法の持つ、健康に対する効果に寄与しているといえるだろう。