Greta Thunberg Gets Angry With World Leaders At UN Climate Summit | NowThis
Greta Thunberg Gets Angry
第3章 気候災害の未来はどう予測されているのか より
グレタさんがあんなに怒っている理由
「なぜグレタさんはあんなに怒っているのだろう」
気候問題の国際会議を訪れては怒りの発言を繰り返す17歳のグレタ・トゥーンベリさんを見て、大半の人はそのような疑問を持つかもしれません。
しかしあまり知られていない事実があります。温室効果ガスによる地球温暖化で、私たちの未来がどのような世界になるのかは、科学的な研究とシミュレーションでかなり詳しくわかっています。同時に、人口問題と同じくらい、気候問題の行く末は正確に予言されている。それを知ったら、グレタさんの怒りは正当な怒りだと思うようになるかもしれません。
そもそも温室効果ガスの現状を数字として把握している読者の方はほとんどいないのではないでしょうか。パリ協定では地球温暖化を抑制するために各国がさまざまな削減努力を行うことを決めていますが、その効果として温室効果ガスの増加ペースを落とすことまでしかできません。
実際、映画『不都合な真実』がヒットして私たちの地球環境に対する関心が高まった今世紀初め頃の二酸化炭素濃度は、世界平均で370ppm程度でした。それから20年かけて温室効果ガスは着々と増加していて、直近の公表数字(2018年平均)では過去最高の408ppmに到達しています。
太陽光発電などのクリーンエネルギーを増やしたり、LED証明など電気の使用量を減らす省エネ機器を導入したり、ありとあらゆる努力をしても、2100年には地球温暖化ガス濃度は700ppm に増え、そのときに地球の平均気温は4.2度上昇するとされています。
2100年などというと遠い先すぎてイメージがわかない方には、2040年頃には地球の平均気温が2度上昇すると言ったらもっと現実味がわくかもしれません。そしてこの「2度上昇」という水準は、科学者によれば地球環境変化がもう後戻りできなくなる閾値(いきち)にあたるというのです。
スーパータイフーンの日本上陸が早くも現実のものに
シミュレータはハリケーン・カトリーナと同じカテゴリー5の規模の巨大台風、スーパータイフーンが日本に上陸することを予測しました。番組放送当時は「これはかなり先の未来に起こりうる予測です」という紹介だったのですが、そこで取り上げた台風の規模は皮肉なことに2019年に東日本を襲った台風19号と瓜2つでした。
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京都大学の研究者が予測したカテゴリー5の台風がもたらす風による被害も甚大で、家屋の屋根が飛び、電柱が倒壊し都市部に大規模な停電が発生するとしています。「日本の都市部ではこれまで経験したことがありません」と流れるシミュレーション映像を目二すると、2019年秋の台風15号が千葉県にもたらした大規模な停電の様子や、台風19号による千葉県市原市の竜巻被害とまったく同じCG映像が2006年当時のシミュレーションで描かれていることに気づきます。
2019年の台風15号での千葉県の停電被害は長期間にわたり、非常に多くの人々の生活に影響をもたらしました。そうなった結果は山間部の倒木にあるようです。首都圏の山間部に張り巡らされた送電網がこれだけの規模の台風に遭遇するのは初めての出来事で、山間部で倒木が相次いだ被害であるがゆえに送電網の回復には非常に長い時間がかかったのです。
これはあくまでも地球シミュレータが計算した架空の台風です。しかし将来はこうした最大級の台風がより頻繁に出現し、日本のどこかを襲ってもおかしくないのです。
そう番組が警告した未来は2019年に現実のものとなったのです。
地球温暖化を止めない人たち
さてこの章でお話しした地球温暖化の未来予測について最後にひとつ、とても重要なことをお話ししておきたいと思います。
地球温暖化を防止するさまざまな施策は、未来を良い方向に変えるためにはあまりうまく機能しないと考えられています。
その理由は、地球温暖化を防止しようとするとエネルギー産業、自動車産業、航空機産業、建築土木業など世界経済の主流派を構成する大企業たちのビジネス既得権に抵触してしまうからです。
実際にそのような企業が大量のロビイストや科学者を雇い、地球温暖化は嘘であるという論陣をはっています。「地球はむしろ氷河期に向かっているのだ」という学説を耳にした人は多いのは、そのような駆け引きが熾烈に行なわれているからです。地球温暖化は高度な政治問題なのです。
しかし、科学者ではない一般人にも簡単にわかることがあります。それがこの章の前半で述べたような異常気象災害が増加しているという事実です。起きていることは地球温暖化に警鐘を鳴らす科学者の主張と一致している。それを考えると、温室効果ガス対策は全世界で全力でとりかかるべき問題のはずです。
にもかかわらず、世界のどの政府も温暖化防止に向けた取り組みには前向きではありません。日本だってそうです。世界からは「日本はいまだに石炭火力発電所を途上国に売り込んでいる」と批判されていますが、GDPが伸びない中では背に腹は代えられない。ガソリン自動車だって1年でも早く売り続けたほうが日本の産業にはプラスになる。
世界中で利害関係者たちが莫大な資金を背景に政治家に働きかけ、いくら一部の科学者が警告しても、世界のリーダーたちは温暖化の推進派の話にも耳を貸さざるをえなくなっている。政治家には票が重要だからです。