Gideon Mendel - Looking AIDS in the Face
エイズ患者の死
Gideon Mendel, 1996
W. Eugene Smith Fund Grant Recipient
Building upon the success of his work on the AIDS epidemic in his native South Africa, London-based photographer Gideon Mendel received the grant to complete a body of work that will be pan- African in its scope. Through this greater coverage he hopes to reach a wider audience, and to combat the indifference with which he feels the servitude, fear and extortion.”
https://www.smithfund.org/recipients/1996-gideon-mendel
『死ぬまでに観ておきたい 世界の写真 1001』
ポール・ロウ/著、小川浩一、竹村奈央、風早仁美/訳 実業之日本社 2019年発行
エイズ患者の死 より
ギデオン・メンデル
撮影年:1993年
撮影地:マティピ、ジンバブエ
フォーマット:不明
第1回世界エイズデーの少し前、ギデオン・メンデル(1959~)はジンバブエの人里離れた小さな社会福祉病院を訪れた。彼はエイズに関する長期プロジェクトに取り込んでいたが、自身の作品の倫理観に疑問をもたざるを得ない状況に直面した。
「期せずして、エイズ患者の死を写真に収めてしまった。私がその男性を撮影し始めると、奥さんが彼をベッドから持ち上げて姿勢を変えてあげようとした。そしたら彼が発作を起こした。私は写真を撮り続けていて、しばらくしてようやく亡くなったことに気づいた」。写真家としての自分の存在があまりにもおこがましく感じられ、メンデルはカメラを下ろした。しかし、スイス人医師(写真右)に、「ほら続けて、自分の仕事をしてください」と諫められた。この医師は、毎日自分が目の前の当たりにしているものを世間に知ってほしかったのであって、そこにモラルの葛藤は少しもなかった。後になってメンデルは、奥さんや家族にエイズ体験について聞かなかったことを後悔し、視覚に固執しすぎていたと感じた。
以降、メンデルは活動家としての色を強めていき、出会った人たちとより多く関わりをもつようになった。そうして、彼らの声を世間に届け、「アフリカ全土で毎日幾度となく繰り返される悲劇」に対する関心を呼び覚ましたのだった。