じじぃの「歴史・思想_407_日中漂流・韜光養晦・中国の夢」

The Chinese Dream is a global aspiration

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BgB1LBQec08

The Chinese Dream of Hegemony?

The Chinese Dream of Hegemony?

June 4th, 2018 Dissident Voice
On 30 May, United States Admiral Harry Harris, slated to become the next US ambassador to South Korea, said: “China remains our biggest long-term challenge.
Without focused involvement and engagement by the United States and our allies and partners China will realize its dream of hegemony in Asia.”
https://dissidentvoice.org/2018/06/the-chinese-dream-of-hegemony/

『日中漂流――グローバル・パワーはどこへ向かうか』

毛里和子/著 岩波新書 2017年発行

中国外交の転換 より

キーワードでたどる

現代中国外交を読む解くとき、キーワードをたどっていくと、中国が国際環境や立ち位置の変化にあわせて敏感かつ柔軟に対応してきたことがよく分かる。
*戦争・革命/平和・発展(冷戦期・改革開放期)
*格極(勢力配置)(1970年代登場)
*独立自主(1982年登場)
*球籍(地球市民の資格)(1988年流行)
*和平演変(1990年代)

*韜光養晦(能ある鷹は爪を隠す、雌伏し時節を待つ)(1990年代、鄧小平)

*戦略パートナーシップ(1996年登場、江沢民
*責任ある大国(1998年登場、江沢民
*平和的崛起(2003年登場、 胡錦涛
*和諧世界(調和の取れた世界)(2007年登場、胡錦涛

*中国の夢(2012年登場、習近平

*核心的利益(とくに2010年代から、習近平
中国は1950~70年代の30年間、戦争と革命の時代という時代規定で国際社会に対してきた。冷戦思考である。平和と発展の時代という規定に変わってのは1978年末に採用した改革開放が契機になっている。革命は終った。建設の時代に入った、近代化政策を採用する、とはっきり国策を確定したのは80年代半ばである。鄧小平の次の言葉がそれを象徴している。「かつてわれわれはずっと戦争は不可避で焦眉の急に迫っていると考え、……多くの政策がこの観点から出発していた。だがここ数年情勢を子細に検討した結果、2つの超大国のどちらも世界戦争を起こせないと考えるにいたった。……今後かなり長い期間、大規模な世界戦争は勃発しないだろうし、世界平和の維持には希望がもてる」(1985年3月中央軍事委員会での演説、『鄧小平文選』第3巻)。
「格局」は難しい言葉だ。国際政治ではパワー間の勢力配置を指すことが多い。パターン、ストラクチャー、レイアウトなどに相当する。1972年の米中接近で中国は自ら国際社会のパワー・ゲームに入っていったが、以来、大国間の勢力配置、力のバランス、つまり格局が外交当局にとっての最大の関心事である。
「球籍」は1988年に出てきた、一時言論界を席巻した用語である。グローバル市民たる資格、とでも言えようか。人権問題を含めて、中国が世界イメージを気にし出したということでもあろう。

韜光養晦

江沢民・朱鎔基・李鵬の90年代、胡錦涛温家宝の2000年代はキーワードがきわどく変転した。中国外交の中国の力の成長、グローバル大国化の進展に合わせて変化してきた。
「韜光養晦」は中でももっとも中国的な外交用語だろう。中国は当面前面に出ないで雌伏し、力を十分つけてから主動的に動くという中国外交の考え方は、80年代末から90年代初頭、天安門事件で中国が国際社会で孤立し、国際的には社会主義が崩壊し「東」の世界が衰落したなかで鄧小平などが言い出した考え方である。1990年12月24日、鄧小平の「(昨今の混迷した国際情勢下で)第三世界の一部では中国が代表してほしいと求めているが、われわれは絶対に先頭には立たない。いいことが1つもないし、多くの主導性が失われてしまうからだ」という言葉が韜光養晦の発端である。銭其琛(当時、外交部長)が95年に、「鄧小平の”冷静観察、沈着応付、穏住陣脚、韜光養晦、有所作為”の20字の戦略方針」としてまとめ、90年代の中国外交を支配した(銭其琛・1996).
問題は、この韜光養晦戦略ふが中国でまだ続いているのかどうかである。穏健でリベラルな王緝思でさえ、2012年に「(韜光養晦戦略は)もはや中国の国益にそぐわないし、中国の姿勢を包括的に説明するのにもふさわしくない。現在、「韜光養晦」が使われるのは、米国に対する姿勢を言う場合に限られる」(朝日新聞2012年10月5日インタビュー)と語っている。
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「中国の夢」は言うまでもなく習近平時代の開始を示すものだ。「中国の夢」と「核心的利益」が21世紀10年代の強国強兵を指向する当代の中国の国策を代表している。中国が「核心的利益」を公式化したのは、2011年9月6日の「平和発展白書」(国務院新聞辨公室)である。白書は「国家の核心的利益」を、①国家主権、②国家安全、③領土保全、④国家統一、⑤国家の政治制度と社会の安定、⑥経済・社会の持続的発展の6つに確定し、断固としてこの6利益を守りきる、と宣明した。
40年近い改革肺胞の時代をこの12のキーワードで全て説明することはできないが、キーワードから判断する限り中国外交はきわめて「中国的」である。米国も日本もロシアも40年間の対外関係を十数個のキーワードで論ずることなど思いもよらないからである。毛沢東時代を含めて中国外交は世界を悩ませてきた。ある事象や変化に対する想定外の反応が多いし、なにより政策決定のプロセスやアクターの透明度が高くなっても中国のそれはほとんどわかっていない。そのためか、冷戦期・後冷戦期を問わず、米国は中国の外交、対外政策についてしばしば誤認や誤りを起こしてきた。