じじぃの「歴史・思想_392_地球に住めなくなる前に・ハダカデバネズミ」

Are naked mole rats the strangest mammals? - Thomas Park

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2sKADUBfdMk

Naked mole rat: longevity champion!

Naked mole-rat: longevity champion!

8 March 2018 Work for human longevity
●The naked mole-rat and its exemplary health
With a maximum lifespan of over 30 years in captivity, it is the longest-living rodent (against 3 years of life expectancy for grey mice and brown rats).
Although nothing in this small animal seems to suggest such longevity, it does not seem to fall victim to the effect of time. No cardiac, bone or metabolism issues, these small animals are even very resistant to cancer (only a few rare cases have been described in the scientific literature), a peculiarity which allowed them to be named “Vertebrate of the year 2013” by Science Magazine.
http://www.longlonglife.org/en/transhumanism-longevity/lifespan-news/naked-mole-rat-longevity-champion/

『私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来』

マーティン・リース/著、塩原通緒/訳 作品社 2019年発行

地球での人類の未来 より

バイオテクノロジー

今日、ロバート・ボイルと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、気体の圧力と体積の関係を示した「ボイルの法則」のことだろう。ボイルは、今もイギリスの科学アカデミーとして存在するロンドン王立協会を1660年に創設した「利発で好奇心の強い紳士たち」のひとりだった。彼ら(実際、メンバーに女性は皆無だった)に肩書きを問うたなら、「自然哲学者」と答えただろう(「科学者」という言葉は19世紀まで存在していなかった)。彼らに深く影響を与える文章を残したフランシス・ベーコンの言葉を借りるなら、彼らは「光の商人」だった。何かのためということでなく、ただそれ自体を目的として、理知の光を求めていた。しかし同時に、彼らは実務家でもあって、当時のさまざまな問題に取り組みながら、「人間の暮らし向きの救済」をめざした(これもベーコンからの引用だ)。
ボイルは博識だった。彼が1691年に亡くなったあと、書類の中から1枚の手書きのメモが見つかった。それは、人類のためになりそうな発明が列挙された「願いごとリスト」だった。当時の古風な言いまわしを使ってボイルが思い描いた将来の進歩のなかには、今日すでに達成されているものもあり、3世紀以上を経てもなお現実になっていないものもある。そのうちの一部を挙げよう。
  寿命の延び。
  若さの回復、あるいはせめて、新しく歯が生えたり、若いころと同じ色の髪が伸びたりするなど、なにがしかの若さのしるしの回復。
  飛行術。
  水中にいつまでもいられて、かつ、そこで自由に機能を働かせられる技術。
  発作時のてんかん患者やヒステリー患者に見られるような身体の強さや敏捷さ。
  作物生産の加速化。
  放物レンズや双曲レンズの作成。
  経度を知るための実用的かつ確実な方向。
  想像、覚醒、記憶などの機能を高めたり、痛みを緩和したり、安眠や無害な夢を誘ったりする効能を持った薬。
  永続する光。
  鉱物や動物や植物の種の改変。
  膨大の次元の獲得。
  お茶の作用や狂人の症状に見られるような、通常必要とされる長時間の睡眠からの解放。
ボイルと同時代の17世紀の人間なら、誰しも現代の世界には驚愕するだろう――それはもう、古代ローマ人がボイルの時代の世界に驚愕する度合いの比ではない。しかも現代においては、多くの変化がなおも加速中だ。バイオ技術、サイバー技術、AI技術に代表されるまったく新しいテクノロジーには、たった10年先のことさえ予測できないほどの変革力がある。
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老化についての研究は、現在、相当に優先順位が高くなっている。これから利益がどんどん大きくなるからか? それとも老化は治すことのできる「病気」だからか? いずれにしても、まじめな研究がもっぱら着目しているのはテロメアについてだ。これは染色体の末端部から伸びているDNA構造で、人間が年をとるとともに短くなる。線虫の寿命を10倍に延ばすことならすでに成功しているが、もっと複雑な動物となると、効果はさほど劇的でない。ラットの寿命を延ばす唯一の効果的な方法は、ラットに餓死寸前の食事しか与えないことだ。

しかしラットほど可愛くはないが、人間に特別な生物学的教えを授けてくれるかもしれない種がひとつある。ハダカデバネズミである。一部のハダカデバネズミは30年以上もいきるが、これはほかの小型哺乳類の寿命に比べて数倍も長い。

人間の寿命の延長に何か画期的な進展があれば、それによって人口予測は劇的に変わるだろう。社会的な影響ももちろん大きいが、それは老衰の期間が同じように延びるかどうか、女性の閉経年齢が寿命の延びにしたがって上がるかどうかしだいだ。しかし人間の内分泌系がもっとよく理解されていけば、ホルモン療法を通じて人体のさまざまな要素を強化することも可能になるかもしれない。そしてある程度までは人間の寿命も、そうした強化の一部に属するだろう。大半のテクノロジーと同様に、これについても不公平なまでに優先されるのは富裕層だ。そして人々が長生きを求める気持ちは非常に強いから、効能が検証されてもいない風変わりな療法が受け入れられる市場はすぐにできる。2016年創業のアンブロシア社は、シリコンバレーのエグゼクティブたちに向けて「若者の血液」の注入を売り出した。近年のもうひとつの大流行はメトホルミンだ。これはもともと糖尿病を治療するための薬だが、認知症やがんを予防できるとの触れ込みが広まっている。