じじぃの「歴史・思想_297_現代ドイツ・ゴミ問題とリサイクル」

EUROPE'S MOST ADVANCED RECYCLING FACILITY IN GERMANY

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1P4oKjjoeNE

DSDの仕組み

家庭ゴミの分別 ~ システム

ドイツのゴミ処理やリサイクルシステムはいろいろな点で日本の手本とされている。
ゴミ問題はドイツでも常にホットな話題だが、市民はどのようにゴミと向き合って生活しているのだろう?
今回は、家庭から出るゴミの分別に焦点を当て、ドイツの家庭ゴミを取り巻く状況をレポートする。
http://www.tiara.cc/~germany/umwelt/abfall_2/Abfall.html

『現代ドイツを知るための67章【第3版】』

浜本隆志、高橋憲/編著 明石書店 2020年発行

ゴミ問題とリサイクル――日常生活の体験から より

ドイツは環境先進国だし、日常生活ではその意識は高いのであるが、先入観にとらわれていると、そうでない面を見過ごすことがある。ドイツ連邦統計局の2017年のデータによると、ドイツ人1人あたりゴミの排出量は462kg、日本の環境省の2016年のデータでは、日本人1人あたりのゴミの排出量は340kgとあり、日本人の方がゴミの量が少ない。しかし、ドイツのプラスチックゴミの最利用率は約70%、一方日本は約25%ほどであるので、日本ではまだゴミを有効利用できていないことが分かる。
1993年1月に「包装容器廃棄物規制政令」が施行されてから、ヨーグルトの容器やビニールの包装などの包装材には、グリューネ・プンクトと呼ばれる緑色のマークがつけられるようになった。商品を製造する企業は、この包装材を回収するデュアルシステム・ドイチュラント社(DSD社)に料金を支払うことにより、処理業務を委託している。
グリューネ・プンクトのついた商品には、あらかじめ企業がDSD社に支払う料金が上乗せされている。消費者はこれらを「ゲルベザック」(GelbeSack)という黄色い専用のゴミ袋は黄色いゴミ箱に入れて捨て、無料で資源ゴミとして回収してもらう。日本のように包装容器ゴミをアルミやプラスチックなど素材によって細分化してゴミに出すのではなく、これらすべてをいっしょにして回収に出し、業者が仕分けをする。DSD社にとっては分別も仕事のうちといえばそれまでであるが、余計な手間と費用がかかるとも解釈できる。
かつて飲み物は、再利用できるビン(デポジット1本あたり8セント)やペットボトル(デポジット1本あたり15セント)で販売されていたが、今やペットボトル(デポジット1本あたり25セント)に入った飲み物が主流になり、ビールでもペットボトル入りがあるくらいである。ドイツでもやはり人は便利なものに手が出るのだろうか。
再利用できるビンとペットボトルは、スーパーに設置されている回収機に返却し、返金額が印刷されたレシートを受け取った後、レジで精算時に差し引いてもらう。空ビンについてはワインのビンやビン詰め保存食(マッシュルームやグリンピースなど)の容器がメインであるが、道路脇などに緑、茶色、透明の3種類に分別して捨てることができるコンテナが設置されている。
ただし1日中投棄できるわけではなく、平日の8時~13時、15時~20時など、投入してもよい時間帯が自治体により制限されている。
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通常ゴミの収集日には、当日の6時までに道路脇にゴミを出すように自治体から指示されている。ビオゴミの場合、夏場はとくに生ゴミの悪臭や衛生面で問題があるのだが、回収して水分とゴミに分離してから、枝や葉っぱ、木などの植物ゴミといっしょに混ぜて発酵させコンポストをつくる。これを町中の花壇に使用したり、郊外のコンポスト加工場で販売したりして再利用する(ほとんどの町でコンポストがつくられているようで、ドイツ国内で289の加工場がある)。
なお乾電池回収のボックスは、スーパーやドラッグストアにあり、歩道に設置されている町もある。ベルリン市では、小型電気製品やおもちゃなどを回収するゴミ箱がピン回収コンテナの横に設置されていることが多く、またリサイクリング場では無料で処分してもらえる。
一方、粗大ゴミや冷蔵庫など大型電気製品は、有料でしか引き取ってもらえない。
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ベルリン市の歩道にはオレンジ色のゴミ箱が2万4000個も設置されていて、さらにゴミ箱1つひとつに「片づける人になっておくれ」「今日できることはゴミを捨てること」などのメッセージが書いてあるのはおもしろい。このゴミ箱には歩行者が出すゴミしか入れられないが、ここで収集されたゴミは火力発電所の燃料として使用されているので、ゴミを路上に捨てさせないようにしている工夫が見られる。
クリスマスの後は、ベルリン市では道路脇にモミの木を回収する日が2日あり、他の町では特定の場所にモミの木を捨てる場所を設けている。各自がもちこんだモミの木までも、再利用される点は歓迎されるが、モミの木の販売数が2018年には3000万本にも上り、環境保護の面から本当に問題がないのか疑問である。
最後に、幼稚園や小中学校での催事(イヴェント)では、コップやお皿を各自持参し、お祭りの屋台でも食器やビールグラスにデポジットを払う光景を見ることが多い。家庭以外の場所でも極力が出ないように徹底的に工夫している点では、まさしくドイツ的といえる。