じじぃの「歴史・思想_266_ハラリ・21 Lessons・平等」

ノバルティスのミッション

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?time_continue=22&v=Kwj9MKowwNs

Here Is Every Potential Coronavirus Treatment and Vaccine

20 Jul, 2020 Freethink
●Oxford's Viral Vector Vaccine (ChAdOx1-S) (added 5/27/20)
Details: A vaccine in development at the University of Oxford deserves a spot amongst our promising candidates if for nothing else than the remarkable speed at which the researchers are navigating the development process.
https://www.freethink.com/articles/coronavirus-treatment

『21 Lessons』

ユヴァル・ノア・ハラリ/著 柴田裕之/訳 2019年発行

4 平等――データを制する者が未来を制する より

過去数十年間、世界中の人々は、人類は平等への道を歩んでおり、グローバル化と新しいテクノロジーのおかげで私たちは早く平等に行き着くと言われてきた。現実には、21世紀は市場最も不平等な社会を生み出すかもしれない。グローバル化とインターネットは各国間の溝を埋めるものの、階級間の亀裂を拡げそうであり、人類がグローバルな統一を果たしそうに見えるまさにそのときに、人間という種は、異なる生物学的カーストに分かれていきかねない。
不平等は石器時代にまでさかのぼる。3万年前、狩猟採集民の生活集団では、マンモスの牙から作った何千もの珠や指輪、装身具、美術品でいっぱいの豪華な墓に埋葬される人がいる一方、ただの地面の穴に葬られる人がいた。それでも、古代の狩猟採集民の生活集団は、その後の人間社会のどれよりも、依然として平等主義的だった。なぜなら彼らには、ほとんど財産がなかったからだ。財産こそが、長期的な不平等の前提条件なのだ。
農業革命の後、財産が増え、それに伴って不平等も増大した。人間が土地や動植物や道具の所有権を獲得すると、硬直した階層社会が出現し、小人数のエリートが何世代にものわたって、富と権力の大半を独占した。人間はこの体制を自然なもの、さらに神に定められたものとさえ考え、受け容れた。階層性は標準であるばかりではなく理想でもあった。貴族と庶民の間、男性と女性の間、親と子供の間に明確な階層制がなければ、どうして秩序を保ちうるだろう? 人間の体はすべての部品が平等ではなく、足は頭に従わなければならないのとちょうど同じで、人間の社会でも、平等は混乱状態をもたらすだけだと、世界中の聖職者や哲学者や詩人は説いた。
ところが近代後期に、ほぼすべての人間社会で平等は理想となった。それは1つには、共産主義自由主義という新しいイデオロギーの台頭のせいだ。だがそれはまた、産業革命に負うとことがある。産業革命のおかげで、一般大衆がかつてないほど重要になったからだ。工業国の経済は膨大な数の膨大な数の庶民階級の労働者に依存し、工業国の軍隊は厖大な数の庶民階級の兵士を頼みにしていた。民主主義と独裁国家の両方で、政府は一般大衆の健康と教育と福祉に多額の投資を行なった。なぜなら、生産ラインを動かすために何百万もの健康な労働者が必要だったし、塹壕(ざんごう)戦を行なうには何百万もの兵士が欠かせなかったからだ。
その結果、20世紀の歴史はおおむね、階級や人種やジェンダー間の不平等の縮小を中心に展開した。2000年の世界には、まだそれなりの階層制が残っていたとはいえ、そこは1900年の世界よりもはるかに平等な場所になっていた。21世紀初頭、人々はこの平等主義の過程が継続し、加速さえすることを予期していた。具体的には、グローバルかが世界中に経済的繁栄を行き渡らせ、その結果、インドやエジプトの人々がフィンランドやカナダの人々と同じような機会と恩恵を享受するようになるだろうと期待していたのだ。まるごと1世代の人々が、この見込みを持って育った。
今やこの見込みは実現しないかもしれないように見える。たしかにグローバル化は人類の多くの階層のためになってきたが、社会と社会の間でも、社会の内部でも、不平等が増している兆候が見られる。一部の集団がグローバル化の成果をしだいに独占していく一方で、何十億もの人々が後に取り残されている。すでに今日、1パーセントの最富裕層が世界の富の半分を所有している。富裕層の上位100人の資産を合わせると、貧困層の下位40億人の資産合計を上回るのだから、なおさら驚かされる。
事態はこれよりはるかに悪くなりうる。これまでの章で説明したとおり、AIが普及すれば、ほとんどの人の経済価値と政治権力が消滅しかねない。同時にバイオテクノロジーが進歩すれば、経済的な不平等が生物学的な不平等に反映されることになるかもしれない。
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人間と機械は完全に融合し、人間はネットワークの接続を絶たれば、まったく生き延びられないようになるかもしれない。子宮の中にいるうちからネットワークに接続され、その後、接続を絶つことを選べば、保険代理店からは保険加入を拒否され、雇用者からは雇用を拒否され、医療サービスからは医療を拒否されかねない。健康とプライバシーが正面衝突したら、健康の圧勝に終わる可能性が高い。

あなたの体や脳からバイオメトリックセンサーを通してスマートマシンへ流れるデータが増えるにつれて、企業や政府機関は簡単にあなたが知ったり、操作したり、あなたに代わって決定を下したりするようになる。なおさら重要なのだが、企業や政府機関は、すべての体と脳の難解なメカニズムを解読し、それによって生命を創り出す力を獲得しうる。そのような神のような力を一握りのエリートが独占するのを防ぎたければ、そして、人間が生物学的なカーストに分かれるのを防ぎたかれば、肝心の疑問は、誰がデータを制するか、だ。

私のDNAや脳や人生についてのデータは私のものなのか、政府のものなのか、どこかの企業のものなのか、人類という共同体のものなのか?
政府にそのデータを国有化するよう義務づければ、おそらく大企業の力を制限できるが、ぞっとするようなデジタル独裁国家を誕生させかねない。