じじぃの「歴史・思想_260_ユダヤとアメリカ・イスラエルとイランの対立」

Israel vs Iran: How would their conflict unfold? (2018)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nruFGq0mEno

Challenges of an Israeli Airstrike on Iran

多様な業界で活躍した著名なユダヤ

7月 26, 2017
ユダヤ人」という単語を聞いた時、どんな印象を持つだろうか?
恐らく最も多いのは、「ヒトラーによるホロコーストの犠牲者」というが多数派であり、最近では「パレスチナを弾圧するイスラエル」というイメージが強いように思える。また、一部のオカルト界隈では「世界を影で支配する権力者」という誤った情報を信じる人たちもいる。

ユダヤアメリカ - 揺れ動くイスラエル・ロビー』

立山良司/著 中公新書 2016年発行

イラン核問題とイスラエル・ロビー より

イスラエルとイラン――なぜ敵対するのか

イスラエルはイランを「実存的脅威」と見なし、その危険性を繰り返し強調している。「実存的脅威」とはイスラエルの生存そのものを危うくするような脅威を意味する。2014年9月の国連総会演説でもイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、イランが核兵器保有すれば、「アヤトッラー(シーア派の高位イスラーム学者)たちは世界全体に向けて、彼らの攻撃的な狂信主義を爆発させるだろう」と最大級のレトリックを使って、「イランは全世界にとって脅威である」と印象づけようとした。
イランの側にもイスラエルの敵視する発言があふれている。2005年に当時のイラン大統領マフムード・アフマディネジャードは「イスラエルを地図上から抹殺すべきだ」と発言し、世界的な反響を呼んだ。報道は真意を伝えていないとの指摘もあったが、イスラエル国民の多くがアフマディネジャード発言に強い脅威を感じたことは事実だ。初代最高指導者ホメイニー師がイラン革命よりずっと前の1960年代に、イスラエルイスラーム教徒を抑圧し搾取するために帝国主義者によって作られたと述べているように、イラン革命イデオロギーにおいてイスラエルは抑圧者、特にパレスチナ人にたいする抑圧者と位置づけられてきた。
もちろん双方のこうした主張や発言には、政治的なレトリックやプロパガンダの側面が多い。しかしプロパガンダに留まらず、イスラエルは次の4点でイランを実際的な脅威と捉えている。
第1はいうまでもなくイランの核開発計画である。イスラエルは平和利用というイランの主張をまったく信用しておらず、1990年代初頭から強い疑惑の目でみていた。さらに2002年にIAEAに申告していない核開発施設の存在が明らかになって以降、イランを「実存的脅威」と捉えるイスラエルの見方はほとんど確信になった。
第2はイランが核兵器の運搬手段となるミサイルの開発・製造を行っていることだ。イランはすでにイスラエルを射程内に収める中距離弾道ミサイルシャハブ3」を実戦配備し、さらにより長距離の弾道ミサイル巡航ミサイルの開発を行っている。イスラエルはまた、イランが宇宙開発を手掛けていることに神経を尖らせている。
第3は2012年にニューデリーイスラエル外交官が狙われた事件などに関し、イランがイスラエルや関連施設を標的に「国家テロ」を行っているという指摘だ。もっともイランも、2010年から2012年にかけて核開発に関わっていたとみられるイラン人科学者が5人以上暗殺された事件を、イスラエルによる「国家テロ」と糾弾しており、互いに同じような非難を繰り返している。
第4は「国家テロ」の問題と重なるが、イスラエルが「国家テロ」とみなしている勢力をイランが支援していることだ。レバノンシーア派組織ヒズブッラーや、パレスチナイスラーム組織ハマースとイスラーム聖戦へイランが資金やロケットなどを給与していることを、イスラエルは自国への重大な脅威と捉えている。

声を上げた合意支持派

世論調査結果も、イラン核問題をめぐりユダヤ社会が分裂していることを示している。イランとの核合意が調印された翌月の2015年8月に米国ユダヤ協会(AJC)が行った世論調査では、合意支持51パーセント、反対47パーセントと賛否は拮抗していた。
(2018年5月、トランプ米大統領が米欧など6ヵ国がイランと結んだ核合意からの離脱を表明した。同年8月に経済制裁を再開すると、19年5月には同国産原油を全面禁輸にした)
ある問題に対する立場の相違や意見の対立は当然、米国ユダヤ社会の中にも以前からあった。第3章で見るように、米国ユダヤ社会は多様性に富んでおり、考えかたや生き方も多岐にわたっている。ただ米国ユダヤ社会内では従来、イスラエルの政策に対する批判や異なった変改を公言することをはばかる糞危機があった。その意味で、イラン核問題は特徴的だったといえる。従来は表に出なかったイスラエル政府批判やイスラエル・ロビー主流派とは異なる見解が、米国のユダヤ社会内で公然と噴出したからである。
例えばイスラエル政府やイスラエル・ロビー主流派が躍起になってロビー活動を展開していた2015年8月下旬、主要なユダヤ団体の元指導者たち26人が連盟で、核合意を支持する声明文を『ニューヨーク・タイムズ』に一面広告を使って掲載した。26人の中には先にコメントを引用した元AIPAC理事長にトーマス・ダインのほか、主要米国ユダヤ組織海調会議の元議長、米国ユダヤ協会の3人の元議長、米国ユダヤ協会(AJC)のやはり3人の元会長などが名を連ねていた。AIPACはもとより、「会長会議」もAJCも核合意反対キャンペーの中核的存在だった。