じじぃの「歴史・思想_259_ユダヤとアメリカ・2つのユダヤ社会」

The Israel Lobby in the US - VPRO documentary - 2007

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=N294FMDok98

多様な業界で活躍した著名なユダヤ

7月 26, 2017
ユダヤ人」という単語を聞いた時、どんな印象を持つだろうか?
恐らく最も多いのは、「ヒトラーによるホロコーストの犠牲者」というが多数派であり、最近では「パレスチナを弾圧するイスラエル」というイメージが強いように思える。また、一部のオカルト界隈では「世界を影で支配する権力者」という誤った情報を信じる人たちもいる。

《著名なユダヤ人 ~作家・芸術家編~》

アイザック・アシモフ(SF作家)
スティーヴン・スピルバーグ(映画監督)
・ビクトール・フランクル(作家・夜と霧)
イエス・キリスト(十字架にかけられて処刑された)
http://monoamineblog.blogspot.com/2017/07/blog-post_26.html

ユダヤアメリカ - 揺れ動くイスラエル・ロビー (中公新書) 2016/6 立山良司 (著) Amazon

イスラエルアメリカは「特別な関係」といわれる。その結節点にあったのが、強い結束と豊富な資金により、政府や世論に絶大な影響力を見せてきたイスラエル・ロビーだ。
彼らはイスラエルのためにアメリカの政財界に働きかけを行う連合体である。しかし近年、若年層を中心に「イスラエル絶対支持」を疑問視する声が増えている。アメリカの外交、経済、さらには大統領選をも左右する彼らの実態を、今明らかにする。

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ユダヤアメリカ - 揺れ動くイスラエル・ロビー』

立山良司/著 中公新書 2016年発行

イスラエル・ロビーに新しい動き より

2つのユダヤ社会に亀裂

現在、世界には約1400万人のユダヤ人がいるといわれている。そのうち最も多数を占めているのはイスラエルと米国で、それぞれ約600万人超のユダヤ人が住んでいる。この2つのユダヤ社会の間にはいくつかの大きな違いがある。
1948年に独立したイスラエルは、ユダヤ人国家建設を目指したシオニズム運動の結果うまれた国であり、ユダヤ人は全人口の80パーセントを占めている。彼らは政治や社会、経済などあらゆる分野で中枢に位置している。
一方、米国のユダヤ人は全人口の2パーセント程度で、マイノリティ・グループの1つに過ぎない。彼らは米国におけるマイノリティの権利を守ることを重視するとともに、「同胞国家」イスラエルの存続のためにあらゆる助力を惜しまなかった。イスラエル独立当初は多額のイスラエル国債を引き受け、米国政府や議会に対しイスラエルを支援するようロビー活動を行ってきた。米国ユダヤ社会の全面的な支持や支援がなければ、イスラエルは存続できなかったかもしれない。
しかし近年、2つのユダヤ社会の間に亀裂が生じている。イスラエルユダヤ社会は過去20年ほどの間に、右傾化を強めている。特に目立っているのが偏狭ともいえるナショナリズムが台頭していることだ。その結果、リクードイスラエルの政党で領土拡張を主張する強硬派)を中心とする右派政党が政権を握り続け、国際社会の批判にもかかわらず占領地における入植活動や人権を軽視した占領政策を続けている。
一方、米国のユダヤ人の多くは、自分たちがマイノリティであるだけに、多元主義や少数者の権利尊重などリベラルな価値観を重視する傾向が強い。政治的にもほとんどが民主党を支持している。それだけに米国ユダヤ社会の多数は、イスラエルユダヤ社会が自分たちの価値観とは相反する方向に進んでいるという意識を強めている。特に若い世代を中心に1990年前後から、右傾化が続くイスラエルへの批判が広まった。
この結果、若い世代の中にイスラエルとの関係で2つの異なる流れが生じている。第1はイスラエルへの関心を失う若者の増加だ。彼らは環境や性的少数者など他の問題に関心を移し、イスラエルとの距離を広げつつある。
第2の流れはイスラエルの存続に関心を持ちながらも、パレスチナ問題の解決にきわめて消極的なイスラエルの現状を強く批判しているグループだ。彼らはイスラエルの将来に危機感を覚えるとともに、イスラエルの政策を無批判で支持し続けているAIPACなど既存のイスラエル・ロビーのあり方にも反発している。こうした世代間ギャップの拡大を背景に登場したのがJストリートである。
AIPAC・・・アメリカ・イスラエル公共問題委員会(The American Israel Public Affairs Committee=AIPAC、エイパック)は1963年設立、現在10万人以上の会員を擁し、全米に17の事務所を構える米国最大のユダヤロビー団体
Jストリート・・・イスラエルの未来はパレスチナとの2国家共存にあり、その実現には米政府の積極的関与が欠かせないと訴える親イスラエルロビー団体

変化する中東と米国の中東政策

むろんイスラエル・ロビーの強さを規定するのは米国ユダヤ社会のあり方だけではない。政治的な影響力」を拡大しているキリスト教徒のエバンジェリカル(福音派)は、イスラエル支持の傾向が強い。また、米国とイスラエルは軍事面や情報面などで幅広い協力関係を築いており、イスラエル・ロビーの力だけが政策の決定要因ではない。
最近ではさらに、従来の延長線上だけで米国の中東政策を考えることができなくなってきている。すでに10年以上、中東は激変を続けている。イラクの混乱、「アラブの春」、シリア内戦、「イスラーム国(IS)」の出現などによって、現在の中東は未曽有の危機に見舞われている。一方、国防予算の大幅減少に象徴されるように、米国のパワーにも陰りが見え、中東からの「撤退」が論じられている。
その結果、イスラエルとの関係は米国の中東政策上の絶対的な優先課題ではなくなりつつある。イランとの核合意の終結は、その意味で示唆的といえる。オバマ政権はイスラエルの強い反対にもかかわらず、米国の歴代政権が敵視し続けてきたイランとの関係構築に向けて大きく舵(かじ)を切った。
(2018年5月、トランプ米大統領が米欧など6ヵ国がイランと結んだ核合意からの離脱を表明した。同年8月に経済制裁を再開すると、19年5月には同国産原油を全面禁輸にした)
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米国とイスラエルの2つのユダヤ社会の間でいったい何が起き、それが両者の関係やイスラエル・ロビーのあり方、さらには米・イスラエル関係にどのような変化をもたらしているのだろうか。この問いに対する答えを見つけ出すことが本書の目的である。