じじぃの「歴史・思想_233_中国の行動原理・伝統家族観・潮流を読む」

China celebrates 70 years of communist party rule - BBC News

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=12c_Mwpt4Ic

Chinese President Xi Jinping at the Great Hall of the People

読書メーター:中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係 (中公新書)

益尾知佐子(著)
複数の新聞、雑誌の書評に取り上げられていたので閲読。エマニュエル・トッドの家族論から引用して、中国は外婚制共同体社会と定義しています。
それに基づく、強力な「父親」が中心となり政治やビジネスの世界まで及び、行動原理を形作っているという説です。現在の強力な父親である習近平が存命の間、中国は安定と見る。緻密な倫理構成を避け、直感的に描いたとあるが、最初に国際関係論の理論を使った説明から入り肚落ちしましたし、どの章も、なるほどと思われるものがあります。時間をおいて、再読したいと思います。
https://bookmeter.com/books/14621881

『中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係』

益尾知佐子/著 中公新書 2019年発行

中国人を規定する伝統的家族観 より

暗黙の社会秩序とは――4つの特徴

同じアジアのなかで隣り合う日本と中国であるが、いままで見たように、社会組織の構造はかなり異なる。そこから派生し、人々が暗黙のうちに想定する社会秩序はまったく違うものになる。この節では、前節の組織構造を踏まえ、また筆者の体験など身近なエピソードを交えながら、中国の社会秩序の特徴をイメージしやすいようにまとめてみよう。
第1に、権威が最高指導者に一点集中する点である。
あるとき筆者は授業で、各国から来た学生に「リーダーと聞いてどんな人を創造するか」と尋ねた。日本やヨーロッパの学生たちは、「多くの人の利害に配慮して、それを調整しながら新しいものが作れる人」などと答えた。ところがある中国人学生は中国語の「領導(リンタオ)」(指導者)を想像したようで、「他人に言うことを聞かせる力を持つ人。でも怒らせると怖くて、みんなに嫌われる人」と答える。
中国人の家族のなかでは、家父長は愛される存在ではなく、極度に敬われ恐れられる存在である。しかし他方で、そうした家父長がいなければ、組織はしっかりと回らない。他人に畏敬の念を持たせることができるかどうかは、トップに立つ者の根源的な資質である。中国の組織は、部下たちが「この人を怒らせると怖い」と感じるようでなければ機能しない。中国の指導者に笑顔や親しみやすさは不要である。
第2に、中国では組織内分業について、ボスが独断で決める。
日本の組織内分業は、組織の階層構造のなかで、年齢や性別などの個人の属性によって自然に決まる。これと対照的に、中国では有能なボスが、個人の特性を踏まえながら適切に人材を配置し、組織全体を管理していく。
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第3に、日本の組織では横のつながりが多く、その間の連携は容易だが、中国では同レベルの部署同士は上の指示がない限り連絡をとらず、助け合わない。同列の部署同士は、ひいてはボスの歓心を買うための対立や競争の関係にある。
あるとき、中国人留学生が筆者に、「私、もう中国人が怖くなりました」と暗い顔で話しかけてきたことがある。聞いてみると、就職活動の悩みである。日本人の友人たちは、就職説明会などの情報を目にすると、「こんなのあったよ。知っている?」と積極的に教えてくれる。ところが中国人の留学生仲間たちは、むしろそうした情報をできるだけ友達に隠し、競争相手をひとりでも減らそうとする。
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第4の点は、おそらく最も重要である。組織全体として、日本ではその凝集力や運営方法が時期を問わずほぼ安定している。しかし中国では、トップの寿命や時々の考え方によって波が生じる。その下にいる人々は、トップの下で「いまがどういう潮目の時期か」を常に熱心に読みとろうとし、どんなことをしてでも潮流に乗ろうとする。
日本の組織では、組織内の権限がもともと多数の人間に分散しているため、仮に家長が死んでも、組織は基本的にこれまでt同じやり方を粛々と続ける。家長がいなくなっても、残っている姑や伯父の目が気になるからだ。
ところが中国の組織では、家父長の生命力は組織の持続時間を決定付ける最大の要素である。若く活力ある家父長が新たな組織作りに燃えていれば、その下の個人は従順な姿勢を示さねばならない。そうでなければ、怒りに触れて窮地に追いやられる。逆に家父長がもうすぐ命尽きそうな状態にあれば、組織解体に備えて早めに次の時代への準備を始めていく。
中国型組織の凝集力は、家父長の寿命によって一代ごと、およそ数十年スパンで長期的な波がやってきる。加えて、組織の方向性が家父長一人に依存するため、人々は自分の利益を最大化しようと、家父長の時々のムードや考えの変化をも読もうとする。そしてそれに沿うように、さらにはできれば家父長の考えの半歩先を歩んでお褒(ほ)めの言葉をいただけるように、自分の短期的行動を計算し選択する。そのため組織全体の行動には、長期的な波とは別に、より細かい波も生じる。

中国で、この「潮流」を読み間違えることは、ほぼ自殺行為を意味する。中国の組織の運営方法は、明示化されたルールではなく、家父長を頂点とする組織のそのときの状況によって、きわめて流動的に決まる。

そのため所属メンバーは、いつも緊張感をもってその行方を見守っている。日本人が「風見鶏」とみなすような行動が、中国では「常識」となる。