じじぃの「歴史・思想_231_中国の行動原理・列強による中華帝国の解体」

習近平の「中国夢」の二つの危険性

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=a-2obhuInJE

中華大同思想

China and Japan: Seven decades of bitterness

13 February 2014 BBC News
"Do you feel guilty about what Japan did to China during the war?" It was a question that I had to translate more than once during a trip to Japan with Haining Liu, a former reporter for China's state broadcaster, CCTV.
https://www.bbc.com/news/magazine-25411700

『中国の行動原理-国内潮流が決める国際関係』

益尾知佐子/著 中公新書 2019年発行

現代中国の世界観――強調され続ける脅威 より

朝貢冊封体制の構造

世界の中心には、徳の高い天子、つまり中国の皇帝がいる。皇帝を取り囲むのは、皇帝が強力な官僚制度によって直接治めている中華王朝の領域だ。その外側には、皇帝に忠誠を誓う近隣国がある。そのさらに外側には、藩属国ほど王朝との結びつきは強くないが、朝貢使節を送って皇帝に例を示す朝貢国や五市(ごし)を通して交易が許された国がある。そのさらに外側には、野蛮な化外(けがい)の国々があった。
この同心円は、外側に行くに従ってグラデーション状に文明の力が薄くなっていく。

列強による帝国システムの解体

ところが、19世紀以降、近代主権国家体制が世界大に波及してくると、欧米日列強の植民地化の圧力から自国を守るため、中国も主権国家としての体裁を整えて自己防衛する必要に迫られた。20世紀初頭に清王朝が崩壊し、中華帝国を中心とする帝国システムが瓦解すると、東アジアではどの地域が新たに主権国家となり、どう国境を引くかが初めて問題化した。
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つまり東アジアでは、中華帝国を中心に2000年も続いてきた階層的、重層的な国際秩序が、列強の圧力であっという間に解体され、新たな秩序に組み変った。この秩序転換は相当乱暴だったため、中国にとってきわめて不可解な、大きな不満の残る結果となった。今日、中国をめぐる民族問題、領土問題の多くは、当時の荒療治の後遺症という側面が大きい。
こうした過程を考えると、中国が自国の辺境地域についてなんらかの権利を主張したとき、それをなんでも中華思想と決めつけるのは、フェアな議論といえない。

むしろ歴史的な影響という点では、今日の中国では、もとの国際秩序を劇的に失った喪失感の方が大きい。

中国人はいまも、19世紀以降、中華帝国の解体を強要し、中国を「蚕食(さんしょく)」した「帝国主義」に強い反感を持つ。世界的に見れば、列強に完全に植民地化された国々は少なくなく、たとえばインドを比べれば中国の経験はまだ軽い。しかし、中国人の被害者意識はきわめて大きい。
ただし、この部分の歴史の歴史を語るとき、中華帝国が復活すべきと唱える中国人はまずいない。彼らの不満は、自分たちの間では主権平等を掲げた欧米列強(さらには日本)が、アジア人であった中国を不平等に扱って侵略し、中国人に「百年の国恥(こくち)」を舐(な)めさせた、という点に集中する。だから中国にとって内政不干渉は絶対的原則であり、多くの中国人はかつての列強のような行動を諸外国に二度と許してはならない、と固く信じている。いわゆる中華思想による対外膨張は、この原則と完全に逆行する。
しかし日本では、中国は中華思想だから領土問題で強欲だという見方が強い。これはどの程度、本当なのか。

リスペクトされたい――自国の歴史的「あるべき姿」

もう一点、中華帝国の歴史からの影響が指摘できるのは、中国人の間で道徳的な優位性や文化の力によって世界からリスペクトされたいという願望が強い点であろう。

経済力や軍事力によって大国の地位を得ることは中国人にとって十分ではない。中国的リアリズムについては後述するが、中国の歴代王朝で、戦いなくして統一を達成した政権など存在しない。一般に中国人は権威には力による裏付けが不可欠と認識しており、だからこそ政府による国防費の急拡大を大多数が支持している。
しかし。中国人にとって、自国が他国に内政干渉したり、武力で言うことを聞かせたと考えることは不快なのだ。彼らは必ず、他国は自国の徳の高さに感銘して自主的に自分に賛同したと考えたがる。中華帝国は軍事的な領土制圧では完成しない。近隣国が中国の経済力や軍事力に服従するのではなく、中国の提案や理想をリスペクトし、中国への「心の服従」を示したと認識してやっと、中国人は天下の安寧が実現されたとみなす。
言葉を換えれば、中国は自国の周辺地域に、共同体家族のような、少なくとも表面的には穏やかな仲睦ましい世界が構築されることを期待し、そのなかで自国を権威ある家父長と位置付けたがる。それが多くの中国人にとって、自国の歴史的「あるべき姿」なのである。自分をアジアの最高位の国家と考えるからこそ、中国は対外的なメンツを重視し、自国が尊重されていないとみなせばすぐに制裁行動を繰り返す、とも考えられる。