じじぃの「脳オルガノイド(人工脳)・iPS細胞を使いアルツハイマー病の治験!夕刊フジ」

iPSで認知症薬、原因物質減少確認…京大など

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9PtmPtwnv-Q

進化著しい人工脳 「脳オルガノイド」

夕刊フジ』 2020年6月16日発行

iPS創薬アルツハイマー病の世界初治験 京大などが月内開始 より

人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った実験でアルツハイマー病の原因物質を減らす効果が確認された薬を、患者に投与する治験を実施すると京都大などの研究チームが6月4日、発表した。治験は5日に開始し、今月後半にも投薬を始める見通し。iPS細胞を使った創薬アルツハイマー病の治験を行うのは世界初としている。
アルツハイマー病は、アミロイドベータというタンパク質が脳に過剰に蓄積されることで認知障害などが起きる。進行を止める治療法がなく、2050年には世界の患者数が1億人を超えるとみられる。
治験は京大や三重大の付属病院など7機関で実施する。対象は軽度から中程度の認知障害がある遺伝性のアルツハイマー病患者10人。公募はしない。パーキンソン病の治療薬として使われている「ブロモクリプチン」を1日3回、36週間にわたって投与し、安全性と有効性を確認。進行を抑えて症状の改善を目指す。
チームは患者の皮膚からiPS細胞を作り、脳の神経細胞に変化させて病気の状態を再現。既存の約1200種類の薬を投与してアミロイドベータの生成を抑える効果を調べた。その結果、ブロモクリプチンが生成量を半分に減らすことが分かり、今回の治験につなげた。

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ニューズウィーク日本版』 2019年10月25日

意識がある? 培養された「ミニ脳」はすでに倫理の境界線を超えた 科学者が警告 より

幹細胞を使ってヒトの器官の小さな三次元モデルを生成する技術は、この10年ほどで大幅に進歩した。

とりわけ、ヒトの多能性幹細胞から作製する豆粒大の人工脳「脳オルガノイド」は、現代の神経科学で最も注目されている分野のひとつだ。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13266.php

『人工培養された脳は「誰」なのか』

フィリップ・ボール/著、桐谷知未/訳 原書房 2020年発行

運命の思わぬ展開――細胞を再プログラムするには より

日本の研究者たちは、iPS細胞を培養してつくったニューロンを使用して、神経変性を治療する方法も試験している。京都大学病院の脳神経外科医の菊池隆幸は、ドナー由来のiPS細胞で培養したニューロン前駆細胞を、50代のパーキンソン病患者の脳に移植した。現在は既知の治療法がないこの病気は、運動に関連する神経伝達物質ドーパミンの放出を担うニューロンの死が原因で起こる。iPS細胞自体を直接脳に移植することで、ドーパミン病に似た病気にかかったマカクザルの症状を改善し、可動性が高まって、見たところ有害な副作用は何もないことが示されている。
臨床試験に使われたiPS細胞はドーパミンを産生できると見なされ、菊地のチームは、患者の脳内のドーパミン活性部位として知られるさまざまな場所に240万個の細胞を移植した。患者の経過は良好なようで、初期の結果は有望だと思われる。この状態が保たれるなら、いずれさらに多くの細胞を移植する計画を立てている。この治療法は、2023年ごろまでには一般に利用できるようになるだろうと菊池らは考えている。
慶応大学の岡野栄之が率いる、日本の科学者から成る別のチームは、脊柱損傷患者の損傷部位に、iPS細胞由来のニューロン前駆細胞を注入する試験を計画している。
こういう試みには、患者から採取して培養する数ヵ月に及ぶ工程を経るかわりに、ドナーから採取してあらかじめ培養したiPS細胞が使われる。山中伸弥は、患者の免疫系に適合する”標準化”iPS細胞――輸血用の血液型の適合と少し似ている――の培養を計画している。そうすれば、免疫抑制剤を適度に投与するだけで、拒絶のリスクを減らせる。
もうひとつの可能性は、体内の損傷した部位で直接、体細胞からiPS細胞に再プログラムする方法だ。インディアナ大学の研究者たちは、脳損傷の治療でその方法を試みた。脳は最外層(大脳皮質)を損傷すると、グリア細胞を生成し始める。これが、さらに悪化を招く反応なのか、あるいは逆に修復するためなのか、損傷を制限するための戦略なのかはわかっていない。どちらにしても、新たなグリア細胞は脳内で瘢痕(はんこん)組織になり、認知機能にはまったく役立たない。しかしインディアナ大学の研究者たちは、このグリア細胞を有効に使い、損傷した細胞と交換するための新しいニューロンにかえられないかと考えた。

彼らは山中のiPS細胞の4因子をコードするウイルスを、皮質障害を負ったマウスの脳に直接注入し、それが新たに増殖中のグリア細胞の一部(比較的少数ではあったが)を、iPS細胞状態に切り替えたことを確認した。これらのiPS細胞は、そのあと機能的なニューロンに発達し続けた。

とはいえ、ここから障害で損なわれた脳の機能などを回復させるまでには、まだ大きな一歩を必要とする。